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東証市場区分の見直しに関するフォローアップ会議(10/31)- 投資者の目線とのギャップ解消でPBR経営の「ダメ開示」を改善

市場区分の見直しに関するフォローアップ

10/31に東証のフォローアップ会議が開催されました。以下になります。
https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/index.html

公表された資料は主に次のような内容です。
開示企業一覧表の見直しについて
◆「資本コストや株価を意識した経営」 のポイントと事例の
 アップデートの概要
◆投資者の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」 の
 ポイントと事例(案)
◆投資者の目線とギャップのあるポイントと事例(案)

この中で興味深いところは、「投資者の目線とギャップのあるポイントと事例(案)」ですね。先日の新聞報道で「ダメ開示」と関係するのもこれだと思います。
https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/mklp77000000k4u0.pdf

投資者の目線とギャップのあるポイントと事例

まだドラフト段階ではありますが、次の記載があります。

要するに、資本コストと株価を意識した経営の開示をしている企業について、果たして投資家の目線とあった開示になっているか、ギャップが生じやすいポイント等について理解を深めるとあります。

東証の資本コストや株価を意識した経営の実現で企業に求められる対応は、現状分析、計画策定・開示、取組みの実行の3つですが、この3つについて投資家とのギャップなどについて書かれています。

現状分析・評価の点の投資家とのズレ

ここは3つあります。
◆ 現状分析が投資者の目線とズレている
◆ 表面的な現状分析・評価にとどまる
◆ 目指すバランスシートやキャピタルアロケーションの検討不十分

詳細は資料をご覧頂ければと思いますが、投資家のコメントの中で主なものを説明しますと次のような内容です(少しだけ言葉のつながりを私は修正していますので、この点はご了承下さい)。

「投資者が認識する⽔準から乖離した株主資本コストを用いており実効的な目標設定や取組みに繋がらない。投資者に意⾒を聴くなど、投資者との目線にズレが無い かを確認することが考えられる」

「PERが低い要因について、投資者の理解不⾜(IR不 ⾜)と結論付けているが、必ずしもそうとは限らない。そもそもの事業戦略・成⻑戦略が評価されておらず、収益の 持続性や成⻑性に投資者が確信を持てていないという可能性もある。本質的な課題の分析を期待する」

「過去に発表した中期経営計画等のリンクを提示するだけの開示で、リンク先の資料を⾒ても、十分 な検討を⾏っているとは言い難く、経営層の危機感が弱いと感じる。また、中⻑期目線の投資者は、中期経営計画よりも⻑い期間の収益性・ 成⻑性等を考慮して投資判断を⾏っており、期間のスコープにもズレがある。必ずしも中期経営計画の枠組みにとらわれることなく、現在の取組状況や進捗が投資者の期待に応えられているのか検証し、改善の必要があれば、 積極的に⾒直しを⾏っていくことが期待」

株主資本コストはCAPMで算出してやってます感を出している企業って多いですが、やはり機関投資家に確認すべきと思います。また、PERが低い理由なんかまさしくそうですよね。IR部門あたりがいくら小手先で頑張ったところで、結局は企業の先行きの見通しについて投資家を納得させられないと、PERは上がらないかと思います。

取組みの検討・開示について投資家とのズレ

◆ 目標設定が投資者の目線とズレている
◆ 不採算事業の縮小・撤退の検討が十分に行われていない
◆ 業績連動の役員報酬が中長期的な企業価値向上に向けたインセンティブ
  となっていない
◆ 取組みを並べるだけの開示になっている

これに関して次の指摘があります。

「他社でも当てはまるような具体性のない取組みが、定量的な説明もないため、将来の企業価値向上にどのように寄与するのか判断ができない。定量的に示すことが難しい場合であっても、各取組みがどう課題を解決し、どのような経路で企業価値向上に寄与していくのか、企業・経営者としての考えをできるだけ具体的に、わかりやすく示すことが期待される」

これってとても大事です。決算説明会資料などを見ていると取組だけを羅列している企業って時々目にします。けど投資家の視点からは、これに取組むことにより将来のキャッシュフローにどういう影響があるか分かりません。

例えば、「XX大学と共同開発しています」とか「XXの開発に取り組みます」「新製品を出します」とかいっても、そこから期待される効果をざっくりレベルでも良いのである程度定量的に示すことが必要なのだと思います。

数値を開示することに躊躇する企業が大多数ですが、ナンセンスです。別に社内の予算会議のように必達を約束するわけでもないですので、ある程度のざっくりベースで良いので経営者が思い描いてることを語れば良いのです。

所詮、先のことなど誰も分からないのです。そういう環境下において、経営者は、任期のあるサラリーマン経営者であっても、自分の考える先々の夢を語れば良いのであって、その夢の実現可能性を投資家は自己責任で判断するのです。
特に、現在の事業の延長線での成長に疑問を持たれている企業などはこの夢を語るのが大事かなと思います。

本日は以上になります。記事を読まれてお気づきのことやご質問、ご感想など何かありましたら、コメント又はnoteのトップページの一番下の「クリエイターにお問い合わせ」からお気軽にご連絡を頂ければと思います。

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