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株主のための役員報酬の見方 ー クローバック・マルス条項が徐々に増えています


クローバック・マルス条項を役員報酬に入れる企業が徐々に増加

先日、スノーピークがMBOを公表しましたね。市場での資金調達の必要性がない中で上場していても、東証からやれ株価を上げろとか、アクティビストからは株主還元を増やせ等の対応が上場企業には多いので、中小型銘柄は今後もMBOが増えるでしょうね。MBOの可能性のある銘柄を一定程度購入して、コーポレートガバナンスの理論武装をした個人株主がチームを組んでアクティビスト活動をして、MBOを促すというのも面白いかも知れません。個人的にはそんなことをやってみたいところです。

さて、前置きが少し長くなりましたが、株主のための役員報酬というタイトルで本日は説明をいたします。先日の日経新聞で次の記事がありました。

大和総研が昨年6月に公表したリポートによると、TOPIX500採用企業のうちクローバック条項を導入している企業は72社で、マルス条項を導入しいる企業は44社のようですね。大和総研のレポートは次のURLのとおりで、該当記述を以下にピックアップします。
https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/20230613_023845.pdf

株式報酬を含む役員に中長期的なインセンティブを与える報酬体系としている企業では、「マ ルス・クローバック条項」と呼ばれる仕組みが導入されつつある。 マルス条項とは、役員にインセンティブを与える報酬のうち、権利が確定した報酬について、 業績の修正や役員の不正が明らかになった場合に、報酬の支給前に減額、或いは、支給を取りやめる条項のことを指す。他方、クローバック条項とは、同様の報酬について、報酬の支給後に返 還させる条項のことを指す。これらを併せて「マルス・クローバック条項」と呼ばれている。「マ ルス・クローバック条項」は、上記のような報酬に対するペナルティを設けることで、経営での 過度なリスクテイクや役員の不正を防ぐ狙いがある。 TOPIX500 採用会社においては、マルス条項を導入している企業は 44 社、クローバック条項を 導入している企業は 72 社であった。現状では、2 割に満たない水準ではあるが、今後、株式報 酬等のインセンティブ報酬を取り入れる企業が拡大するとともに、役員の過度のリスクテイク と不正を抑制する役割として「マルス・クローバック条項」を導入する企業が増加することも考 えられる。

大和総研レポートより

決算訂正や不祥事のあった場合に役員報酬を返還するのは基本的には当然の考えかと

導入企業はまだ多くはないですが、考え方としては至極当然の条項かなと思います。最近、役員報酬は業績に連動させる比率を増やしている企業が増えています。これと基本的には同じ発想であり、会計不正が発生した場合や過年度決算が発生した場合には、業績に一定程度の影響を与えるのでマイナスの影響を与えた分の報酬を返還させのは当然と言えば、当然の考えかと思います。 米国では、製造業の90%が導入しているという記事を以前に読んだ記憶があります。

不祥事があった場合、多くの企業は役員報酬を自主返納するのが日本企業のお作法です。けど、自社返納というのは、その時の不祥事の具合や他社での返納の状況を横目で見て、総合的に決めるものです。この程度の自社返納をすれば世間様は許してくれるであろうということで判断しているケースも多く、株主を見ているというよりも世間の評判を見ています。そのため扱いも若干不透明なところがあります。それよりも予め報酬の減額を決めておく方が恣意性が排除され、透明性も高まると言えます。

もっとも不祥事があった場合、いかほどの金額を返還させるかの算式の設定などはなかなか難しいところもあるのか知れませんが。いずれにしても、個人株主としては、自分の投資先企業の役員報酬を見て、「このクローバック・マルス条項の導入をしないのか」「しない理由は何故か」「導入に課題があるならそれは何であるのか」を株主総会で質問するのも良いかも知れません。

過去には投資ファンドが電気興業にクローバック条項の株主提案を実施

少し前になりますが、投資ファンドであるリムアドバイザーが電気興業(6070)にクローバック条項の採用を定款に規定することの株主提案をしています。

https://denkikogyo.co.jp/wp-content/uploads/2022/08/20220414_release.pdf

結果を受けて、当時、電気興業22年5月に公表した次のURLの中期経営計画で役員報酬制度の改定として、15ページに次の記載があります

https://denkikogyo.co.jp/wp-content/uploads/2022/08/DKK_plan2025.pdf

種類別の役員報酬割合を「固定報酬70:変動報酬30とすることを短期計画とし て行い、その後も変動報酬部分の比率を段階的に高める方向で制度を見直してい く。※【現状】業績連動報酬(役員賞与)が100%支給された場合の報酬割合は「固定報酬85:変動報酬15」 その他にも変動報酬部分における評価内容見直しや、当社株式報酬に係る社内規程にマルス・クローバック条項の導入を検討することで、企業価値向上に資する 役員報酬制度を構築する。

「中期経営計画 DKK-Plan2025」より

社内規程に盛り込むことを検討するとありますが、結果、現状どうなっているのかまでは確認していませんが、後で有報等で確認したいと思います。

(ご参考)株主総会で質問するための役員報酬の情報

本年の株主総会で個人株主がどういう内容で社長等の議長と対話をすべきかということで役員報酬関係について、前回次の記事を書いております。念のため再掲いたします。株主総会に向けて、個人株主が質問し、対話すべきコーポレートガバナンスのネタや話題を今後も引き続き、紹介していきます。