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東武鉄道が買収防衛策を廃止 ー 廃止のプレスリリースの読み方


東武鉄道が買収防衛策を廃止

Twitterでも記事を引用しましたが、東武鉄道が買収防衛策を廃止することを決定したようですね。東武の株式時価総額は約5800億円です(本日時点)。大型銘柄で買収防衛策を持っている企業は今の世の中珍しいですが、とうとう廃止を決めたということですね。プレスリリースは次のとおりです。

https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/disclosure_documents/20240516150343GfuVYfgIlOxfZNfDAzFWdQ.pdf

買収防衛策を廃止する理由は?

本日はこの東武のプレスリリースを参考に、プレスリリースの読み方について簡単にポイント解説をしたいと思います。まずは次の文章です。

当社では、新たな長期経営ビジョンに基づく経営戦略の実現に向けて「東 武グループ中期経営計画 2024~2027」を策定しており、これを着実に実行することで株主共同の 利益の確保・向上等の実現を図る体制が整備されていること、ならびに買収防衛策(買収への対応方針)をめぐる近時の動向および国内外の機関投資家をはじめとする株主の皆様との対話状況等を総合的に勘案し、当社は、本日開催の当社取締役会において、当社取締役全員の賛成により、本対応策を継続せず、その有効期間が満了する本総会終結の時をもって廃止することを決議いたしました。

このプレスの中のポイントは「国内外の機関投資家をはじめとする株主の皆様との対話状況等を総合的に勘案し」というところです。

国内外の機関投資家の平時導入型の買収防衛策に対する批判は強いです。
つまり、株主総会で買収防衛策の導入議案を上程しても機関投資家の賛同が得られないということです。東部鉄道の株主構成は見ていないので機関投資家の議決権比率は分かりませんが、事前に機関投資家と会話をしたところ、賛同する投資家が少なかったのだと想像します。
または仮に賛同してくれる機関投資家がいても、買収防衛策を有することがESGの評価のマイナス要因にもなる可能性があり、こういったことも加味して廃止したのかも知れません。

プレスリリースの最後に良くある文章の意味は?

東武のプレスリリースを見ると最後に次の文章があります。

なお、当社は、本対応策の廃止後も、株主共同の利益の確保・向上等に向けた取組みを一層推進してまいります。また、株主共同の利益の確保・向上等を損なうおそれのある当社株式の大量買付行為が行われる場合には、大量買付行為を行う者に対し、株主の皆様がその是非を判断する ために必要かつ十分な時間と情報の提供を求め、独立性を有する社外取締役の意見を尊重した上で、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、その時々において適宜 適切な施策を講じてまいります。

これは何でしょうか?廃止する企業のほとんどでこの表現があります。1つのお作法です。

これは、買収防衛策は廃止するが「買収者が出現した際には有事型の買収防衛策などの措置を発動することが有るぞ」という警告です。なんでこんなことを記載する必要があるのでしょうか?

これまで買収防衛策の発動には、事前開示の原則が求められていました。つまり、買収者が株式の買い占めを進める途中又は買い占めた後に突如として対象企業が買収防衛策を導入して対抗措置を発動したらどうでしょうか?買収者にはあまりに酷ですね。だから、買収者が出現した場合には、買収防衛策で対応する余地もあるぞということを匂わせておくのです。

これが「金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、その時々において適宜適切な施策を講じてまいります」です。もっとも買収防衛策に限定するものではありませんが、現時点での有効な施策は買収防衛策かと思います。

本日は少しマイナーな話でしたが、買収防衛策のプレスリリースを読まれる方はご参考にして頂ければと思います。