東武鉄道が買収防衛策を廃止 ー 廃止のプレスリリースの読み方
東武鉄道が買収防衛策を廃止
Twitterでも記事を引用しましたが、東武鉄道が買収防衛策を廃止することを決定したようですね。東武の株式時価総額は約5800億円です(本日時点)。大型銘柄で買収防衛策を持っている企業は今の世の中珍しいですが、とうとう廃止を決めたということですね。プレスリリースは次のとおりです。
https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/disclosure_documents/20240516150343GfuVYfgIlOxfZNfDAzFWdQ.pdf
買収防衛策を廃止する理由は?
本日はこの東武のプレスリリースを参考に、プレスリリースの読み方について簡単にポイント解説をしたいと思います。まずは次の文章です。
このプレスの中のポイントは「国内外の機関投資家をはじめとする株主の皆様との対話状況等を総合的に勘案し」というところです。
国内外の機関投資家の平時導入型の買収防衛策に対する批判は強いです。
つまり、株主総会で買収防衛策の導入議案を上程しても機関投資家の賛同が得られないということです。東部鉄道の株主構成は見ていないので機関投資家の議決権比率は分かりませんが、事前に機関投資家と会話をしたところ、賛同する投資家が少なかったのだと想像します。
または仮に賛同してくれる機関投資家がいても、買収防衛策を有することがESGの評価のマイナス要因にもなる可能性があり、こういったことも加味して廃止したのかも知れません。
プレスリリースの最後に良くある文章の意味は?
東武のプレスリリースを見ると最後に次の文章があります。
これは何でしょうか?廃止する企業のほとんどでこの表現があります。1つのお作法です。
これは、買収防衛策は廃止するが「買収者が出現した際には有事型の買収防衛策などの措置を発動することが有るぞ」という警告です。なんでこんなことを記載する必要があるのでしょうか?
これまで買収防衛策の発動には、事前開示の原則が求められていました。つまり、買収者が株式の買い占めを進める途中又は買い占めた後に突如として対象企業が買収防衛策を導入して対抗措置を発動したらどうでしょうか?買収者にはあまりに酷ですね。だから、買収者が出現した場合には、買収防衛策で対応する余地もあるぞということを匂わせておくのです。
これが「金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、その時々において適宜適切な施策を講じてまいります」です。もっとも買収防衛策に限定するものではありませんが、現時点での有効な施策は買収防衛策かと思います。
本日は少しマイナーな話でしたが、買収防衛策のプレスリリースを読まれる方はご参考にして頂ければと思います。