
機関投資家の議決権行使:野村アセットマネジメント(24年11月に改定)- モニタリング・ボードの要件が少し厳格化、女性取締役の比率
3月末も徐々に近づき3月期決算企業は、今年の株主総会に向けて本格的な動きに入るところだと思います。機関投資家の議決権行使基準も改定が本格化しますので(既に改定済の機関投資家もありますが)、ROE低迷の続く企業は関心が高いところだと思いますので、今回からアップデートなどを随時noteで書いていきたいと思います。
野村アセットマネジメントが24年11月に改定
24年10月7日の記事で野村アセットマネジメントの取締役選任議案の議決権行使基準の説明をしましたが、その後、野村アセットは議決権行使基準を24年11月1日に改定しています。改定後の基準は以下です。
https://www.nomura-am.co.jp/special/esg/pdf/vote_policy.pdf?20241101
主な改定のポイントは以下です。取締役選任関連です。
◆モニタリング・ボードの要件のちょこっと厳格化
◆キャッシュリッチ企業はROE8%以上必要
◆女性取締役の人数の最低基準の引上げ
3つ目の基準は適用は25年11月からなのでまだ時間的余裕があります。
モニタリング・ボードの要件のちょこっと厳格化 - 社外取は独立性が必要
野村アセットは取締役選任の業績基準でROE基準を採用しており、数値自体は多くの機関投資家の基準と概ね同じです。
ただし、他の機関投資家と大きく違うのは、モニタリング・ボードの場合とそうでない場合で基準の適用が違う点です。モニタリング・ボードに該当する場合には、基本的にROE基準が適用されなくなります。
従って、このモニタリング・ボードに該当するとROEの低い企業には「ラッキー!」ということになるのですが、今回の改定では、モニタリング・ボードに該当するための基準が少しだけ厳しくなっています。
モニタリング・ボードの基準は以下の全てをみたすことが必須です
➀取締役の人数が5名以上20名未満
②選任時に独立性の要件を全て満たす社外取締役が過半数
③社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会(法定・任意を問わない)を設置し、社外取締役が議長に就任
④女性の取締役が取締役の人数の 10%以上
⑤買収防衛策を導入していない
⑥政策保有株式を過大に保有していない
⑦監査役会設置会社の場合、取締役の任期が 1 年
⑧支配株主がいる場合、取締役会議長は社外取締役
この中で、今回改定されたのは➁の「選任時に独立性の要件を全て満たす社外取締役が過半数」の中の『独立性』です。これまで独立性の有無は問われていませんでしたが、今回の改定より追加になったということです。
『独立性』ってどういうこと?ですが、ここは次の3つです。
◆在任期間12 年未満
◆独立役員として届け出
◆大株主出身者でない
つまり、社外取締役を12年以上やっているような人は駄目です、ということです。あまりに長いと社内の人になってしまうということですね。さすがに10年を超えて社外取締役をやっていると長いかなと私も思います。
モニタリング・ボード型でも手放しでは喜べないことは注意
冒頭でモニタリング・ボードであればROEの厳しい基準の適用を免れ「ラッキー」と書きましたが、必ずしも手放しでそう喜ぶことが出来ないことは要注意です
それは、「経営改善努力が認められる」ことが必要ということです。これってうっかり見落とすことがありますが要注意です。経営改善努力ありと言うには、次のいずれかの要件を充たすことが必要です。
直近期の経常利益(経常利益が報告されていない場合は税引前利益、以下同 様)又は当期純利益が前期比で増加している
直近期の経常利益又は当期純利益が3期前比で増加している
要はモニタリング・ボード型であれば、ROE5%等の細かいことは言わず会社側に任せますが、ただし、業績向上はしっかりやりなさいよ、そうでないと厳しく判断しますよということです。
女性取締役の最低基準が比率に変更
女性の取締役の人数の最低水準ですが、これが 1 名から10%に引き上げられ、これを満たさない場合、会長・社長等の取締役再任に原則として反対になるようです。ただし、この改定の適用は25年11 月以降です。
なお、これは比率ですので、必ず女性取締役の人数を増やさずとも、取締役の全体の母数を減らすことでも基準充足は可能と思います。ここは企業によってどうやって基準を充足するかは各社各様といったところかと思います。
無理やり女性取締役を増やすより、無駄な取締役の数を削り、女性取締役の比率を高めるという方がだいぶ効率的かなと思います。