資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応③ - 最後に取組みの実行~「投資者の視点を踏まえたポイント」より
(おさらい)資本コストや株価を意識した経営の実現の流れ
「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」についての流れは次の3つですが、これまで「計画策定・開示」までお話をしました。本日は最後の「取組みの実行」です。
◆現状分析
-自社の資本コストや資本収益性を的確に把握
-その内容や市場評価に関して、取締役会で現状を分析・評価
◆計画策定・開示
- 改善に向けた方針や目標・計画期間、具体的な取組みを取締役会で検討
-その内容について、現状評価とあわせて、投資者にわかりやすく開示
◆取組みの実⾏
-計画に基づき、資本コストや株価を意識した経営を推進
-開示をベースとして、投資者との積極的な対話を実施
ベースは11/21に東証が公表した「投資者の視点を踏まえたポイント」です。
https://www.jpx.co.jp/news/1020/mklp77000000lw4e-att/mklp77000000lygv.pdf
取組みの実⾏
投資者の視点を踏まえたポイントでは「対話・アップデート」と記載されていますね。次の内容になっています。
ポイントを整理すると次のようなことかと思います。
◆経営陣自らが株主・投資者との対話に積極的に参加
◆対話で得られたフィードバックを経営陣・取締役会で共有する
◆株主・投資者の属性に応じたアプローチを⾏う
◆対話の実施状況を開示し、更なる対話・エンゲージメントに繋げる
◆取組みや目標設定を継続的にブラッシュアップする
経営陣自らが株主・投資者との対話に積極的に参加
ここは次の記載があります。
投資者との信頼関係を構築する観点から、経営陣自らが株主・投資者との対話に積極的に参加、直接コ ミュニケーションを図ることも有効な手段
株主や投資者からの求めに応じて、社外取締役が対話に参加し、経営を監督する⽴場として、ガバナ ンスの現状や課題認識等について話をすることも、株主・投資者が企業のガバナンス体制やその実効性を理 解・評価するうえで、有効な⼿段
対話で得られたフィードバックを経営陣・取締役会で共有するなど、対話を企業価値向上に向けた 意思決定に繋げるための取組みも期待
対話の主体が誰であるべきかが書かれています。通常のIR取材は部長・課長が担当する企業が多いと思いますが、ここではマネジメント層による対話の重要性が言われております。
というのも、こここでの対話の内容は既にしまった期の決算の対話ではなく、将来の成長戦略だからマネジメント層が求められるのです。部長クラスが語る話ではないからです。
では、マネジメント層であれば、平の取締役や常務クラスで良いかというと、ここは会社の判断によりますが、私はもっと上の層である経営トップ(CEO又はCEO以外で代表権を持つ方)であるべきかなと思います。会社全体のことを責任をもって語るには、このクラスでないと難しいと思います。通常の決算説明会は経理担当役員がやっている会社も多いですが、そもそも財務担当役員は、基本的に未来の事業戦略を語るポジションにはないので、事業を語れるトップマネジメントであることが大事と思います。
トップマネジメントが自ら対話に参加し、時には投資家から厳しい指摘を受け、それを取締役会での検討に反映するというサイクルですです。
株主・投資者の属性に応じたアプローチを⾏う - ところでターゲティングの前に考えるべきことがあります
ここは次のような記載があります。
一口に投資者といっても、その属性は一様ではない。投資⾏動や企業に対する対話・エンゲージメントのスタンスは異なる
対話の実効性を向上させるため、対話の相⼿方の属性や、相⼿方にとってのマテリアリティを十分に理解したうえで、タイプに応じたアプローチを⾏うことが期待
自社の事業をよく理解し、 成⻑の伴⾛をしてくれる投資者を自らターゲ ティングし、企業側から積極的にアプローチしていくこと
「ターゲティング」ですね。良く聞く言葉だと思います。
けど、意外に理解されていないのは、機関投資家をターゲティングしても自社が機関投資家から魅力ある会社と映っていないと相手にして貰えないということです。
身近な例でいうとお見合い(古い?)と同じです。自分のタイプの異性を絞りこんでも、肝心の相手に興味を持ってもらわないと全く意味がありません。これと同じで「当社も投資家のターゲティングしなければ」という企業は多いと思いますが、その前に投資家に何を遡及するのか、つまり、中計の達成確度やその先の成長戦略が訴求できるかまずありきです。ここが骨太でないといくら投資家を探しても徒労に終わるだけです。
対話実施状況を開示し、更なる対話・エンゲージメントに繋げる
ここは次の記載があります。
対話を通じて株主・投資者からの評価やフィード バックを得ながら、取組みを加速・ブラッシュアッ プしていくという好循環を⽣み出してくためには、 対話の実施状況や実例、そこで得たインプットがど のように経営の意思決定に取り入れられているかな どについて株主・投資者に示すことで、更なる対話・エンゲージメントの深化に繋げることが有効
対話では機関投資家から質問を受けたり会社のメッセージを伝えるなどの双方向のコミュニケーションの場です。その後、そこで得られた投資家の意見などをどう経営に取り入れたかを示すことが大事です。この開示が充実していないと、対話をした投資家にしてみるとあれだけ意見交換したのに、無駄だったの?となってしまいます。
簡単ですが、以上になります。