「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 ー 第2回会議(10/17)の議論ポイント(事務局説明資料より)
第2回会議での検討事項
10月17日に第2回会議が開催され、事務局説明資料が公表されています。以下になります。
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/earning_power/pdf/002_03_00.pdf
今回の会議での検討事項は事務局資料の以下に記載の赤字の箇所です。バーチャルオンリー株主総会の開催は対象外ですね。
従業員・子会社役職員に対 する株式の無償交付、実質株主の情報開示制度、 株式対価M&Aの拡大、指名委員会等設置会社の権限の見直しの4つですが、この中から、実質株主の情報開示制度と指名委員会等設置会社の権限の見直しについて簡単にポイント等を触れたいと思います。
実質株主の情報開示制度
実質株主とは株式の議決権指図権限や投資権限を有する者です。個人株主は株主名簿上に氏名がそのまま掲載されていますが、機関投資家などは株主名簿上は名義は記載されておらず、〇〇信託銀行(〇〇口)とかで名簿に記載されています。例えば、投資信託の場合、株式管理をする信託銀行が名義株主となり、そぼ背後で名簿には名前は出てこないが、投資判断を行う機関投資家が実質株主となります。〇〇信託銀行(〇〇口)の背後にある、例えば、野村アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、ブラックロックジャパンなどが実質株主といいます。
この実質株主の名前と株数は、会社側は把握できないので判明調査が必要になります。結構な金(1回当たり最低数百万円程度かと思います)をかけて専門業者に委託するわけです。多くの会社は年2回はしますので(3月末と9月末)それなりの出費です。
この制度について、発行会社が実質株主や名義株主に対してその保有状況や実質株主に関する情報について質問し た場合には、その質問に対する回答を義務を負担するとした場合、どういう制度設計にするかの議論がされたようです。詳細は以下です。
指名委員会等設置会社の権限
指名委員会等設置会社というマイナーな機関設計を採用している企業は上場企業でおおよそ90社程度かと思いますが、このマイナーな機関設計の会社の指名委員会と報酬委員会の権限が議論されています。よって大多数の会社には関係のない議論ではあります。もつともマイナーな機関設計とは言え、採用会社は、ソニー、日立製作所、メガバンク、大手証券会社、東京電力、三菱ケミカルホールディングスなどの日本を代表する超大企業が多いのが特徴です。以下がリストになります。
https://www.jacd.jp/news/iinkaisecchi2.pdf
この機関設計に馴染みのない方も多いと思いますので、事務局資料のP60の以下の記載をご覧頂ければと思います(毎回思いますが、事務局資料をしっかりと読むと結構な知識が身につきます)。
この指名委員会について、「社外取締役が取締役会の過半数を占める指名委員会等設置会社で、一部の取締役のみが参加する指名委員会 に指名の決定権限を帰属させることは不適切であるとの指摘がある」というのが課題の1つです。そこで、指名委員会等設置会社における取締役候補者の指名権限をどのように見直すべきかということが議論されたようです。
また、指名委員会だけでなく、報酬委員会も同様に「取締役の一部のみが参加する報酬委員会において、取締役・執行役の報酬の最終決定を行うことは適切ではない。社外取締役の担い手が増加し、現に取締役の過半数を社外取締役が占める指名委員会等設置 会社も多く存在する現状では、制度策定時の趣旨も妥当しない」という意見もあり、各取締役・執行役の報酬の決定権限をどのように見直すべきが議論されたようです。
指名委員会等設置会社の役割は会社法で規定されているので、権限を変更するには会社法改正が必要なので直ぐに対応が必要というわけではないですが、こんなことが議論されているということは事務局は把握しておくことが大事かなと思います。
第2回会議の議事要旨の公表はまだだいぶ先になるとは思いますが、公表された段階で内容を整理して、紹介したいと思います。