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企業と機関投資家との対話テーマ、企業側のスピーカーは誰が良いの?
機関投資家と企業のエンゲージメント(対話)
先日、X(Twitter)に投稿をしました10/11開催の「スチュワードシップ・コードに関する有識者会議」の資料の中で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)作成の資料で、上場企業と機関投資家のエンゲージメント(=対話)に関する記載がありました。GPIFの資料は以下です。
https://www.fsa.go.jp/singi/stewardship/siryou/05.pdf
2017年度から2022年度に行われたGPIFの国内株式運用委託先の21ファンドに よる26,792回、延べ48,077テーマの対話記録を整理したもので、運用会社(機関投資家)との対話テーマは何であるか、企業側の対話応対者は誰であるかが記載されており、企業側で他社の対話はどうなっているかなどを知る上で参考になる資料と思います。資料内容を紹介し、少し解説をしたいと思います。
機関投資家との対話テーマ
他社はどういうテーマで機関投資家と対話をしているか気になる会社も多いと思います。私も機関投資家と中長期の非財務情報に関する対話を始めた数年前は結構気になっていました。GPIFの資料は以下になります。
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取締役会構成・評価、経営戦略・事業戦略がある一方、気候変動も最近増えているといったところでしょうか。私は当初、機関投資家との対話の企画を始めた頃はESGの中でEやSなどの話題を中心にしていて(ESG対話とという名の下で)、そもそも機関投資家サイドもあまり対話にこなれていなかった印象でした。けど、ここ数年は、多くの企業も同様かと思いますが、経営戦略・事業戦略、取締役会での社外取締役の発言・指摘などが対話での機関投資家の強い関心事項だと思います。機関投資家と企業との対話は、企業の持続的成長を対話で確認するのがポイントですので、当然と言えば当然ですが。
気候変動もありますが、機関投資家が気候変動にどこまで関心があるかは微妙な気が私はします。GPIFは資本市場全体に幅広く分散して運用する投資家、つまりユニバーサルオーナーのため、全ての企業全体に関わるテーマには強い関心があり、その1つが気候変動でです。大口の機関投資家はGPIFから金の運用を受託しているため、気候変動も消極的ながら対話テーマに加えているところもあるように思います。
企業側のスピーカーは?
これも結構悩む会社は多いと思います。通常のIR取材は部長あたりがやっているので、部長クラスで良いのか、その上の執行役員(なんちゃって役員ですが)クラスがよいのか、本当の役員である取締役やCFOクラスか、または経営トップのCEOが参加した方がよいのかです。この点は次の記載があります。
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昔は部長や部長未満が多かったのですね。最近は取締役・執行役員が増えているほか、社長・会長も増えていますね。では、誰が良いのでしょうか?
私の感覚ですと、常務以上の肩書きがあり、かつ経営企画などの主要部門を担当する取締役であるか、経営トップであるCEOかなと思います。
誰を対話応対にするかは、機関投資家が何を知りたがっており、それについて責任を持って語れるのは誰かという観点で考える必要があります。通常の四半期決算の取材であれば部長又は課長レベルでも問題ないと思います。それは単に終わった期の結果報告が主だからです。
しかし、対話では、今後の業績見通し、特に当年度ではなく、2年~3年後の事業見通しなどを語ることを機関投資家は期待しており、部長・課長又は執行役員あたりの対話で機関投資家は満足するでしょうか?
まず満足しないと思います。それは部長・課長、執行役員クラスはそこまで語れるポジションにないからです。仮に語ったとしてもそれは個人的意見にならざるを得ないのです。
機関投資家が対話で知りたいのは、企業の先行きや企業の事業戦略等の中長期の話です。必ずしも数値で明確に出せるものでないかも知れませんが。となると ➀経営企画又は会社の主力事業を管掌し、➁ポジションの高いレベルの経営層(常務又は専務)が必須かなと思います。もっともよりベストなのはCEOだと思います。やはり会社の事業運営の最終的な全責任を負うのはCEOだからです。
以上になります。機関投資家との対話を今後企画するような企業、今回はじめて企画する企業はGPIFの資料は参考にされると良いと思います。