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機関投資家の議決権行使基準 - アセットマネジメントOne/24年よりTSRを導入


アセマネOneの取締役選任議案

前回野村アセットマネジメントの議決権行使基準についてお話をいたしましたが、今回はアセットマネジメントOne(以下「アセマネOne」)です。以下になります。
https://www.am-one.co.jp/img/company/16/kokunai_guideline_20240401.pdf

取締役選任議案におけるROE等の業績基準を整理すると「次のいずれかに該当し、合理的な理由が認められない場合、3年以上在任した取締役の再任に原則反対」となっています。

①3期連続赤字かつ3期連続無配
②資本の額が前期比で 50%未満
③債務超過
④3期連続で東証プライム市場上場企業の ROE 下位 1/3 分位未
⑤3 期連続でネットキャッシュ比率が25%以上、東証プラ イム市場上場企業の ROE1/2 分位未満、決算期末のPBR が1倍未満
⑥1 期・3期・5期いずれにおいても東証プライム市場上場企業 の TSR下位 1/3 分位未満

ちなみに、ネットキャッシュ比率=(現預金+短期有価証券-有利子
負債) / 総資産です。

ROEに関しては④にありますが、5%等の数値基準を明確に設定してはおらず、プライム市場全体で下位3分1未満の場合に反対するとなっています。

アセマネOneの特徴はTSR(株主総利回り)

⑥においてTSRを基準に入れている点が特徴ですね。たしか、アセマネOneは24年4月の改定ではじめてTSRの基準を入れたかと思います。

TSR( Total Shareholder Return )とは株価騰落と配当金による株主総利回りです。株式投資により得られた収益(キャピタルゲインと配当)を投資額(株価)で割った比率で表されます。

分かりやすい例で示しますと、ある会社の株価が1年間で1,000円から1,200円に上昇し、1株あたり50円の配当金が支払われたとした場合、TSRは次のとおりです。TSR (%) = (1,200円 - 1,000円 + 50円) / 1,000円  = 25%

TSRを議決権行使基準に入れる機関投資家は最近少しずつ増えている感じがします。つまり、株主は金儲けのために株式投資をしているのだから、いくらROEが高くても、儲けが少ないのであれば意味はないというにが背景と思います。
これは5年以上前にある日系のアクティビスト投資ファンドの方を招いたスモール会議に仕事で参加した際にその方が明確に言っていたセリフでした。まあその通りかと思います。

なお、金融庁がまとめた「企業内容等の開示に関する内閣府令」において、計算式は下記のように定められています。

[(各事業年度末日の株価+当事業年度の4事業年度前から各事業年度までの1株当たり配当額の累計額)÷ 当事業年度の5事業年度前の末日の株価 ]
5年前を起点にしてどれだけリターンがあったということです。

個人投資家・個人株主の方であってもTSRはエクセルに入力して簡単に作成できると思いますので、是非整理してみるとよいかと思います。