![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139764252/rectangle_large_type_2_ffdc75e9c0addae59052010ca6e86a42.png?width=1200)
大阪市の介護保険料は日本一高い
はじめに
この記事を書いていた時は、「日本一高い?」でしたが、厚生労働省の発表で、やはり「日本一高い」ことが判明しましたので、タイトルを「日本一高い」に変更しました。
さて、介護保険料は令和6年4月から変更されています。これは市町村の介護保険事業計画が第9期(令和6~8年度)になり、それにあわせて介護保険料の改定が行われています。これから3年間は介護保険料は同じ金額をはらっていく必要があります。
さらに、あまり知られていないことなのか、万博の陰に隠れてあまり報道されていないですが、政令指定都市の中でダントツに1位になっている市が大阪市になります。
基準額が年額で110,988円、月額で9,249円です。
(参考)大阪市の介護保険料
令和6年4月になって朝日新聞が独自に調べていましたが、
「月額6500円が半数 74自治体調査」と記事のタイトルにあるように、大阪市以外の政令指定都市は、札幌市5,773円~堺市7,417円の間に収まっているので、いかに大阪市の介護保険料基準額が高いのか分かります。前回の介護保険料基準額から+1,155円の伸びも一番高いです。
なぜ、こんなに高くなっているのか?についてせっかくなので深堀りしていきたいと思います。
資料は、
大阪市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(2024(令和6)年度~2026(令和8)年度)
を読み解きながら、分析していきましょう。
基礎的なデータ(介護保険より)
第一号被保険者 676,867人(令和5年3月末)※65歳以上の大阪市民
大阪市年齢別推計(令和6年4月1日現在)
65歳以上人口 696,500人
要介護認定者数 181,416人(令和5年3月末)
計算上の要介護認定率 26.8%
つまり、65歳以上の1/4以上の人は要介護認定を受けている。
介護保険料基準額の計算に必要な
令和6年度 第一被保険者数 674,000人
(第9期計画より)
基礎的なデータ(大阪市の寿命より)
(参考)大阪市の寿命 (※いずれも2020年)
大阪市の平均寿命
男性 79.3歳 65歳からあと 14.3年 余命
女性 86.8歳 65歳からあと 21.8年 余命
大阪市の健康寿命
男性 77.8歳
女性 83.4歳
不健康な期間
男性 1.98歳
女性 4.18歳
疑問❓
不健康な期間 = 介護が必要な期間
だとすると、
介護が必要な年数は、男性は女性の半分でしかないです。
65歳以上の 不健康な期間 / 平均余命 の割合は
1.98 / 79.3 - 65 ≒ 13.8%
4.18 / 86.8 - 65 ≒ 19.2%
およそ介護が必要な期間の割合は、13.8~19.2% の間くらいだと推測されます。にもかかわらず、26.8% の介護認定率となっている現状はとても不思議であり、分析のポイントとなります。
要支援・要介護認定の推計
令和6年度 28.2%
令和7年度 28.8%
令和8年度 29.0%
(第9期計画より)
令和6年度 介護保険保険給付及び地域支援事業にかかる費用(見込)
介護保険給付 3,127億円
地域支援 149億円
計 3,276億円
(第9期計画より)
介護保険料基準額の計算
3,276億円✖️23%(第1号被保険者が負担する割合)=753.48億円
753.48億円➗674,000人
🟰111,792.2円(年額)
月額にすると、9,316円です。
(令和6年度分で計算)
実際には令和6〜8年度の3年分費用や第1号被保険者数で計算します。
詳しい内訳については次の資料があります。
(参考)大阪市介護保険料の上昇について
さらに介護保険料基準額は所得に応じた割合を乗じる
あくまて、大阪市の月額9,249円は基準額であり、さらに所得に応じた割合を乗じます。
✖️1.5倍になる人は、所得が200〜300万円
✖️2倍になる人は、所得が400〜500万円
✖️3倍になる人は、所得が1000万以上
その基準額から多く払った保険料を財源として、市町村民税非課税の人の減額分を補っています。
(参考)大阪市の令和6年度~令和8年度の介護保険料
介護給付費準備基金とは?
今回の大阪市の介護保険料基準額のうち、「介護給付費準備金の取り崩し」による▲368円という項目があります。
これはどういうことかというと、介護保険は、3年間ごとに介護サービスの見込量に見合う保険料を設定する方式ですが、介護給付費が増加傾向にあるため、一定の剰余金が生じるように設定されており、この剰余金を介護給付費準備基金としてプールしています。3年ごとの期間の最終年度に残高がある場合には、準備基金を取り崩して次期保険料に充てていきます。
つまり、前回の余ったお金で月額368円、介護保険料が下がっています。
ただし、その前回の前回で余ったお金で引き下げていた分は上がります。ちなみに+417円介護保険料が上がっています。
結論:次の令和9~11年度の介護保険料は、少なくとも月額368円上がります。年額にすると、4,416円です。
次回の介護保険料の値上げを見据えて
この次の月額368円の値上げを見据え、簡単に辻褄を合わせるためにすることは、第9期計画においても余剰金がでるようにサービスを多めに見積もることです。
(参考)大阪市第9期介護保険事業計画(概要版)
(概要版 P34より)
③~⑤サービス利用者(受給対象者)数の推計になりますが、
「施設・居住系サービス利用者数」
・第8期計画期間 3年間平均 30,946.3人
・第9期計画期間 3年間平均 35,295.3人
これは、前期ベースで114%も伸びています。
「在宅サービス受給対象者数」
第8期も第9期も1~3%増程度で見込まれています。
(概要版 P33より)
高齢者人口のうち後期高齢者
令和5年度 383万人
令和8年度 401万人(大阪市福祉局推計)
年度ベースの増加は104.7%になります。「施設・居住系サービス利用者数」の伸びはどういっても、5%くらいが上限ではないでしょうか?
つまり、残りの1割程度は余剰金を出すために多めに見積もっているのではないでしょうか。
後期高齢者人口の増の推計の疑問❓
そもそも、後期高齢者(75歳以上)人口の増も疑問❓ありです。
(参考)大阪市の寿命 (※いずれも2020年)
大阪市の平均寿命 を後期高齢者人口ベースで平均余命を考えると、
男性 79.3歳 75歳からあと 4.3年 余命
女性 86.8歳 75歳からあと 11.8年 余命
これから、大幅に平均寿命が伸びることがなければ、その前提となる前期高齢者数が、加齢により後期高齢者に移行していくことなります。
ところが、第8期においても前期高齢者は減少しています。
令和3年度 325,000人
令和4年度 308,000人
令和5年度 293,000人
※1,000未満は四捨五入
つまり、後期高齢者が増加していくという推計自体に疑問があり、増加前提にしていることが、大阪市の介護保険料が高い理由の一つです。
複雑化してきた介護保険制度
介護保険制度がスタートしたのは、平成12年(2000年)4月1日です。もう24年目になります。細かい改正の経過は省力しますが、概ね改正のたびにより便利に、実際の現場の声をいかしながら、より介護保険給付などのサービスがより、被保険者にとっていいものであるように改正されていきました。
あわせて、介護保険制度がより複雑になっていく過程でした。
そのため、介護保険給付サービス以外の、「管理コスト」の増加を招きました。特に大阪市の介護保険制度の管理コストを見直すことなく、介護保険料に転嫁していることが、大阪市の介護保険料が高い理由の一つです。
具体的には、大阪市の業務委託を参考にしてもらえれば、介護保険に関して多くの契約がされていることが分かります。
(参考)大阪市福祉局随意契約結果
このうち、特名随意契約結果(うち100万円を超える契約)のうち、4月に契約が集中しています。
高齢化率が高い地方より、高齢化率が低い都市部の方が介護保険料が高いという事実
これについては、高齢化率が高い方が第1号被保険者の人数が多くなるので、1人当たりの介護保険料はむしろ減るという仮説を検証した研究もあります。
いろんなことに管理コストなどの費用が発生している大阪市
(参考)大阪市の介護保険料 の資料に戻りますが、よくHPを読むと、「大阪市介護保険料コールセンターの開設について」とあります。これは一例として、詳しく見ていきます。
大阪市介護保険料コールセンター
電話番号 06-7777-4269
下記の期間中は、大阪市介護保険料コールセンターを開設しておりますので、そちらにお問い合わせください。
令和6年4月16日(火)~令和6年4月30日(火)
たった、2週間ですが、大阪市介護保険料コールセンターが開設されて、業務委託されています。大阪市の契約実績を調べると、
株式会社電算 が 220万円 で契約をしています。
そんなにたくさん電話がかかってきているのでしょうか?
急に介護保険料が高くなるから電話したくなるのであって、介護保険料が下がればほとんど電話がかかってくることもないのに、さらに費用がかかることをしていますが、実績はどれくらいでしょうか?
おそらく、これは氷山の一角で多くの管理コストがかかっていると思われます。ひとつひとつ見ていきたいと思います。
大阪市介護保険特別会計(令和6年度予算)の内訳、比較
(参考)令和6年度 予算事業一覧の公表について
細かいところも気になるところですが、大きなところからも見ていきます。
(参考)令和4年度 介護保険特別会計 委託料一覧
いろんなところに費用がかかっているのがよくわかります。
(参考)第9期介護保険事業計画
p167 の全国、大阪府、大阪市の比較があります。
令和5年2月分のサービスの分析になりますが、
1人あたり給付費(要支援者 )(千円)全国 11.5 大阪府 9.8 大阪市 9.1
1人あたり給付費(要介護1・2)(千円)全国 99.0 大阪府 96.6 大阪市99.3
1人あたり給付費(要介護3以上)(千円)全国 210.7 大阪府216.5 大阪市217.3
となっています。
分析はまだこれからですが、これだけみると他都市より1.5倍の介護保険料となり理由がいまいちよくわかりません。
大阪市の介護認定の仕組み
大きな流れとしては、申請書を認定事務センターに申請書類を送付すると、委託を受けた認定調査員が調査を実施します。
その後、主治医に心身の障がいの原因である病気などに関しての意見書とあわせて、介護認定審査会で審査・判定して、要支援・要介護認定を行っていきます。
他の自治体では、調査にかかる委託費用が公開されています。
名古屋市
在宅 3,150円→6,050円(令和6年度から)
施設 2,620円→3,410円(同上)
大阪市は非公表です。
これには理由があり、他都市では認定調査を個別に指定居宅介護支援事業所等に委託していますが、大阪市は直営で運営しており、特定の事業者のみで認定調査をしているためです。
申請書をまずは、認定事務センターに送付します。そこから委託を受けた調査機関(多くは大阪市社会福祉協議会)が調査員派遣します。
つまり、
認定事務センターへの業務委託経費(令和4年度委託料:601,080,744円)
大阪市社会福祉協議会への業務委託経費(※単価契約せずに、概算契約です。)調査員への報酬も含みます。
これらを合算した額が、委託費用になるためです。
調査員は、各事業者が雇用した職員が行います。今でも、検索したら求人がでてきます。
もちろん、それだけでは足りないので、個別に募集もしています。
(参考)大阪社会福祉士会での募集(※大阪市社会福祉協議会)
最終的な調査員の報酬は、3,500円(交通費別)で、大阪市社会福祉協議会が個人に請負している状態です。ちなみに、有資格で調査員は1日研修受ければいいだけです。
3,500円で指定介護事業者等に単価契約すれば、余計な委託経費がかからないとは思いますし、中抜けが一体いくらなんでしょう。また、中間業者が入ることで時間も余計にかかると思います。
(参考)令和4年度 介護保険特別会計 委託料一覧
過去の委託料の資料から、令和4年度の単価契約の委託軽費は
在宅 4,400円
施設 3,300円
ではないかと推測されます。市外で大阪市の住民が入院していたり、施設に入所していて、介護保険が必要になった場合は、単価契約で認定調査を行っているようです。
大阪市認定事務センターについて
まず最初に介護認定の申請書を受けるのが、大阪市認定事務センターですが、場所は大阪市西成区出城2丁目5番20号になります。
ここは、
(参考)大阪市社会・情報研修センター
です。ここは大阪市が所有する建物で、指定管理者として大阪市社会福祉協議会が運営しています。ここに認定事務センターが入居することで賃借料を大阪市社会福祉協議会が受け取ります。その賃借料は、約6億円の委託料の中に含まれています。
つまり、市民から集めた介護保険料から、大阪市へ賃借料を払うシステムになります。
賃借料がいくらなのか調査しても分かりませんでしたが、おそらく、
JR環状線・大和路線「今宮」駅(西出口)から徒歩約10分
大阪メトロ四つ橋線「花園町」駅(2号出口)から徒歩約15分
大阪メトロ御堂筋線・四つ橋線「大国町」駅(5号出口)から徒歩約15分
という立地ではオフィスの需要がないので、借り手がいなければ負の遺産になっていたんでしょう。
配食サービスは介護保険の適用外のはずなのだが
5月14日に厚生労働省が、各自治体の介護保険料を発表したために、日本一高い介護保険料となった大阪市のコメントの中で、「単身高齢者が多い、低所得者が多い」という説明がありました。
介護保険料自体は、介護保険にかかる支出の総額から、被保険者で割って計算をするので、介護保険料が軽減されている低所得者の分は、高所得者が負担をするだけで、なぜ「低所得者が多い」という説明をするのか不思議だったのです。
「低所得者が多い」は、介護保険料の話ではなく、介護保険サービスに費用がかかるという意味で、その一例が、大阪市生活支援型食事サービスです。
(参考)大阪市生活支援型食事サービス
そもそも、配食サービスは介護保険の適用外です。それを大阪市は「みまもり」という目的をつけて、介護保険のサービスの中に入れています。
いろいろな事業者が参入していますが、
令和4年度の委託料が多い上位5事業者は、
(株)ソーシャルクリエーション 82,066,991円
(株)シニアライフクリエイト 42,177,934円
(医)隆生会 28,137,368円
(株)クローバス 26,221,934円
よどがわ保健生活協同組合 25,132,220円
(大阪市HPより)
利用料
・食材料費および調理に要する費用は利用者負担(お弁当代)となります。(利用者負担額は配食事業者により異なります。)
・世帯全員の年間総所得の合計が150万円以下または市府民税非課税世帯であって、利用者負担額の支払いが困難な場合は、利用者負担額1食あたりのうち、400円を超える部分について150円を上限に利用者負担額(お弁当代)の軽減を受けることができます。
つまり、低所得者層は利用者軽減という名目で、食材料費および調理に要する費用(お弁当代)を介護保険サービスとして支出しています。
(参考)配食のふれあい 大阪みなみ店 一例です。
コストはかかる介護予防ポイント事業
管理コストがかかる事業のひとつに、介護予防の事業の中に、介護予防ポイント事業があります。
(参考)介護予防ポイント事業
日本一の介護保険料のニュースが出た際に、横山市長が「高齢になっても介護を受けずに元気で暮らせる状態がベストとした上で、体操教室など介護予防の取り組みを通じて健康寿命を延ばしたい」とのコメントを出していました。
介護予防の取り組みは大事だとは思いますが、管理コストが高すぎるとあまり意味がないと思います。
(参考)令和4年度 介護保険特別会計 委託料一覧
過去の委託料の資料から
介護予防ポイント事業 24,615,936円
活動実績は令和4年度は256人です。ちなみに令和5年度の活動実績はどこにも公表されていません。公表されるのは、次回の事業計画の際になると思われるので、3年後ですかね
(参考)第9期介護保険事業計画
P85に介護予防ポイント事業の実績が記載されています。
ちなみに第9期介護保険事業計画の前半部分は第8期実績が記載されていますので、参考になります。
活動者1人あたりにかかるコストは、年間96,156円になっています。コロナ禍で活動者の実績が低調であったとは思いますが、この活動をすることで介護保険のサービスを使わなくなるより、コストが上回っていると思います。
令和5年度以降の事業費がいくらなのか調査しても出てきませんでしたが、同程度の規模(年間24,615,936円)で事業を実施しているとして、
第9期介護保険事業計画では、
令和6年度 500人 1人あたり年間49,231円
令和7年度 650人 1人あたり年間37,870円
令和8年度 800人 1人あたり年間30,769円
難しいのは、
健康寿命が延びる ≠ 介護が必要な期間が短くなる
ということです。どんなに健康な状態が長続きしたとしても、介護状態になってしまえば、一定の介護が必要な期間があります。
先述のとおり
不健康な期間(介護が必要な期間)
男性 1.98歳
女性 4.18歳
が短くならない限りは、介護サービスのコストが変わることはありません。
むしろ、寿命が短い男性の方が、介護が必要な期間が短いと考えると、介護予防を進めることが、果たしてサービス費用の抑制効果があるのか不明です。
ちなみに、事業は大阪市社会福祉協議会に業務委託しています。
損益分岐点という概念がない?
いろいろ分析をしていますが、大阪市自体に事業をやるにあたって、コストに見合う成果があがるのかという視点で検討されているのか不思議です。「やることに意義がある。コストは度外視」体質が、日本一の介護保険料日本一になる要因のひとつではないでしょうか?
※まだ続きます。
いいなと思ったら応援しよう!
![もさもさくん](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100608583/profile_98132da0e458a82dbd5ae09101960f08.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)