パンセクシャルの僕が好きな人と幸せになりたくてもがく話。⑤

パンセクシャルの僕が好きな人と幸せになりたくてもがく話。⑤

①はこちら。

さて、オフ会を控えて数週間。
僕は勿論別界隈にも友人がいる。有難い事に。

名前をさくら君。サバサバノンケ。年齢=彼女いない歴更新中。ムチムチ。

さくら君はたまにるる君、うすば君、僕に混ざって遊ぶ事があった。
さくら君も別界隈の人間だったのでそんなにしょっちゅうでは無いにしろ、認知される程度には。
そんな四人で遊んだ後だった。

さくら君とるる君が寝るからと落ちたあとの通話にて、うすば君が何か物言いたげに口篭る。
(僕たちは比較的仕事の融通が効くので、みんな落ちた後に少し雑談したりする。)

🌊「うすば君、どうかした?さくら君の事少し苦手だったりする?」
໒꒱「あー…」
🌊「あ、聞き出したい訳じゃないんだけどね、もし苦手だったりするなら今後誘わないから、別にそれで僕がさくら君と縁を切ったりする事はしないから、気にせず教えて欲しいんだ。」
໒꒱「…うーん、苦手とか…嫌いとかじゃないんすけど…。」
🌊「うん、うん。」
໒꒱「……なんか、うみ君とすごい仲良いじゃないすか。俺が知り合う前から。」
🌊「うん、…ああ、疎外感とか感じさせちゃったり…?」
໒꒱「……これ嫉妬っすね。嫉妬だな。…あー、…嫉妬しました。すません。」
🌊「えっ、えっ!?嫉妬!?…か、かわいいなあうすば君…!?」
໒꒱「……いや、嫉妬とかそんなしないんで自分で感情にビックリしてんすよね…」
🌊「あっ、はい…えーと、…こういうのは言葉でどうって話じゃないと思うんだけど、僕が今仲良しなのはうすば君だよ。」
໒꒱「分かってんすよ、だって俺が一番うみ君に懐いてんすもん。」
🌊「えええ可愛いことを言うじゃん…」
໒꒱「…まあ、俺は明日も遊んで貰うから良いっすけど!」
🌊「教えてくれてありがとう…ね…?えっとさくら君は今後…?」
໒꒱「あ、誘って貰っていいっす。」
🌊「あっはい…」

し、嫉妬。嫉妬したと。この他人の感情にも自分の感情にも鈍いこの男、うすば君が、よりによってさくら君に!?
…るる君は良いの?って聞いたらるる君は特別らしい。けど、君は嫉妬って伝えられるんだ。僕はすみれちゃんへの嫉妬を伝えられないけど、君は。
素直な子だなあ、僕もそうあれたら良かったのかな。でも、君に気持ちがバレないようにするにはこうしか無かったよなあ。…嬉しいなあ。
じんわり広がる喜色を必死に噛み砕いた。砕いて、飲み込んで、表に出さないように笑った。
この恋が終わった時のための思い出作りは思うよりも上手く事が進んでいた。うすば君への感情は既に最初より随分大きく膨らんでた。
くそう、嬉しい。可愛い。好き。嫉妬、かあ。そんなに近しい存在にはなれてたんだな。

さて、オフ会である。
東京で行われる飲み会、飲み屋の予約を取ろうとしている瞬間だった。
その瞬間は二人きりの通話で、僕は逃げ場もなく。

໒꒱「あ、そう言えばオフ会ってすみれ呼んでいいすか?」
🌊「…、すみれちゃん?…僕は良いけど、すみれちゃん疎外感感じたりしないなら。一応るる君にも聞いてから、すみれちゃんお誘いに行こうか。」
໒꒱「疎外感?…まあ俺がいるんで大丈夫じゃないっすか?」

(すみれちゃんは関東住みではないものの、まあ来れる範囲)

すみれちゃんを、オフ会に呼ぶ…?
凄く驚いて、そして酷くショックも受けた。
るる君はパートナーを連れてくると言っていたので、るる君とパートナーさん、うすば君とすみれちゃんのペアが出来上がるのだ。
僕は一人でそれを見てる事になるんだなあ、と。すみれちゃん相手に、妬かずに一日を過ごせるかなとすら。いい歳をしておいて。

すみれちゃんは少し心の弱い子だった事もあり、少なくともその場で最優先すべきはすみれちゃんになるだろう。分かってる、僕がうすば君に優先されたいなんて、思って良い存在じゃないけれど。
最優先がすみれちゃんだと理解した時、僕はその場で泣かずに居られるだろうか。
正直、自信はなかった。

໒꒱「すみれ友達少ないんで、こういう場に出来るだけ呼んでやりたいんすよ」
🌊「お兄ちゃんだねえ。…るる君、良いって言うとは思うよ。」
໒꒱「あ、そこ二人の事信じてるっす!」

僕は信じて貰えた喜びと、どうしようもない寂しさと、よく分からない嫉妬でないまぜになった。
すみれちゃんが羨ましい。若い女の子で、うすば君に大事にされてる。僕らだってきっと別ベクトルで大切にして貰えては居るんだけど、それでも僕の欲しいものを貰う事はきっと一生出来やしない。
すみれちゃんは、大切にされてる事って気付いてるのかな。良いな。良いなあ。僕だったら、…な。醜いなあ、僕。僕の感情も、僕自身も。

僕は後日、るる君に連絡を取った。
🌊「オフ会、行かないかも。」
🎶「え、何で?仕事?」
🌊「ええと、かくかくしかじか。」
🎶「はあ~」
🌊「ヘタレでごめんね…」
🎶「どうでもいい~~~」
それでこそるる君…。

さて、勿論るる君からうすば君にOKは出た。
僕はどうすれば良かったんだろう。素直にすみれちゃんをここに入れて欲しくないと、伝えるべきだったのかもしれない。裏でこんな風に動く方が余程陰湿だし、性格が悪い。
それでも、僕はうすば君にこの恋がバレる事が何より怖かった。後手後手に回る、僕の下手くそな恋。

結論、すみれちゃんは後ほど、別日のゲームの予定をすっぽかした。…と言うと、悪意があるかもしれない。寝坊して、起きれなかったらしい。これは後ほどうすば君から聞いた。
別に人数的には問題無かったので集まった人間だけで遊んでいると、予定時間の二時間ほど後にすみれちゃんがやってきた。
໒꒱「すみれ、どうしたの遅れて」
💐「寝てたわ 」
この反応が、うすば君のタブーに触れる事となったらしい。縁を切ったり、遊ばなくなったわけではない。ただ、僕たちに対しての謝罪がなかった事で僕たちと遊ばせる事を止めた。結果、オフ会への参加も立ち消えとなった訳なんだが。

大切にされてるなあ、と僕はまた思った。
僕よりずっと素直で、ふたりの関係性が羨ましかった。裏であんな風に僕は考えていたのに。来なければ良いのに、僕は行かない、なんて自分が可哀想な顔をして。
いい歳してこんな自分が情けなくて、少し泣けた。

こうして、オフ会にすみれちゃんは来ない事が決まった。僕の心に、自らへの軽蔑を残して。
欠片も、心は軽くならなかった。
うすば君の嫉妬と、僕の嫉妬はどうしてこんなに違うんだろう。

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