悪夢

「レポート提出した?」
「まだだけど、11月21日に持って行くって、教授にはさっき伝えたよ。」
まだ、3週間もある。
大丈夫だ、余裕だ!
学生生活は充実そのもだ。勉強も大変と言えば大変だが、それなりに真面目に取り組んでいる。授業もちゃんと出ているし、研究室にも入って、教授からもそれなりの信頼を得ている。
教授は昔ながらの人で、教授に用がある時は、「何月何日に行きます。」ってアポをとらないとかなり機嫌が悪くなる。気難しいところがあるので注意が必要だ。
生活は一人暮らしをしている。親からの仕送りがあるから食べる分は問題ない。遊ぶ金はバイトをしなくてはならないが、まあ、周りの友達もそんなものだ。
今日もバイトだが、バイトはファーストフード店で働いている。主に夜のシフトに入っていて、余り物があると店長の配慮で、少しだけ帰りに食べさして貰える。
本来は廃棄処分しないといけないが、内緒で食べさせて貰えることが、このバイトの最大メリットだ。
店長から「最近忙しいから、昼間もシフ
ト入ってくれない?出来れば夜も、一日増やしてくれない?」
毎日授業が有る訳でもないから、僕は「授業が無い日ならはいれます。」と返事をした。そこまで、バイトに力を注ぐつもりは無いが、社会経験も少ないせいか、元々断ることが苦手な性格もあって断れなかった。
それから何日か経った頃、仲間と飲みに行った。そこには同じ研究室の美子がいた。なんか、不自然だ。彼女が来ていることに不満は無いが違和感を感じた。今まで、研究室の飲み会に彼女がいることはあったが、今日は研究室の飲み会では無いし、彼女からも友達からも来るって聞いてなかった。僕の心のディフェンスはこの時点で崩されてしまった。
しかし、飲み会は僕の違和感とは裏腹に盛り上がって楽しく進んだ。
彼女ともいつも通り話せた、彼女を前から知っていたが特に気に掛けることも無く、飲み会の時も特別視することは無く時は進んでいった。そして飲み会は終わった。
アパートに歩きながら帰った。ふと、彼女は何故飲み会に来ていたのだろう?メンバー的に彼女が来ていることが不自然だ。誰が彼女を誘ったのだろう?今日の飲み会で彼女と1番親しいのは研究室の同じ僕のはず!しかし、僕は彼女を誘っていない。疑問は残った…
誰が誘ったか?犯人を見つけるようなことをする必要もないのでそのまま酔って寝てしまった。
それ以降、研究室で彼女と顔を合わせることはあったが、今まで通り何の変化もなくお互い接していた、あの日の飲み会の話しも無ければ、僕の友人の話題も無い。僕も誰に誘われて飲み会に来たのか?聞くことさえ忘れていた。いつも通り、今まで通り研究室のメンバーで研究室の狭い話題しか無い。そもそも彼女と二人で話すことは無い。
それ以降、バイトと学業を両立して
忙しいく日々を過ごしていた。それは、今までと変わりない生活だ。
ウワーッ、しまった、レポートを提出しなければ?脳みそが突然沸騰し、レポートのことが思い出される。レポートをやらなけれ…レポートの提出日が思い出すこが出来ない、レポートの提出日の記憶が僕の脳にまったく無い!
今日ではないはず?
今日の訳ない!
そう思えば思うほど、提出日は思い出せないが、今日のような気がしてきた。不安を打ち消そうと、提出日を思い出そうとすればするほど、不安は増してより大きくなり僕の脳に襲いかかる。そんな追い詰められた状況の中にもかかわらず、脳に衝撃がはしる。そういえばバイトのシフト、昼間出る日っていつだった?思い出せない!
記憶が無い。なんなんだ、大切なスケジュールだけが思いたせない!昼間にバイトのシフトをいれた日を考えれば考えるほど今日の様な気がしてくる。やってしまった!確信は無いが不安が津波のように押し寄せてくる。どうしよう?
確認することが怖い!
何でシフト増やしてしまったのか!断る…断ることが出来なかったのか?断ればよかった。自分が嫌になる。
後悔と不安があふれだし、どんどん体にたまり膨らんだ!
僕は破裂しそうだ。
ウワーッ僕のすべてが大きくゆれた!その時、美子の声がきこえる!
「大丈夫?」
「大丈夫!」
目の前に美子の顔が数十センチの近さに現れ!ビビる!
なぜ?
なんだ?
なぜ彼女がここに?
目の前の世界が光に包まれ崩れていく。
あー

そして僕は目を覚ました。すべてが夢だったのか?現実をまだ受けいられない。
僕は寝ていだけなのか?確かめるために、僕は妻の美子になにもなかったように「おはよう」と声をかける。「おはよう」と返事が返ってきた。
夢だ!間違いない夢だ!
夢だったことにやっと安心した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?