アリと僕

最近、息子はアリを見つけると
「ボクってしんにゅうしゃ?」と聞いてくる様になった。
最初に聞かれた時は、「どーした、どーした?」と言葉の意図が分からず、息子にかける言葉に迷ってしまったのだが、そこでよくよく思い返してみると、もしかしたらあれか、、?と思いあたる出来事があった。

息子は物心ついたころから、アリを見つけると捕まえたくなる習性がある。アリのサイズにかわまず摘もうとするので、小さいアリは潰れてしまったり、逆に大きいアリには噛まれてしまったり(なかなかアゴの強いアリで全然離してもらえず息子は大泣きだった)まぁその都度本人も驚いたり喜んだりしている。
アリを捕まえるのと同じくらいやってしまうのが、アリの巣を見つけるとほじってしまう事だ。子どもあるあるだとは思うが、あの小さな穴にせっせと物を運ぶ働きアリを見て、中をのぞいて見たくなったのだろう。
図鑑などのアリの巣の全貌、みたいなのを見せるが、やはりこの目で確かめたかった様だ。

まぁなんとなく眺めていたりもしたが、なんだか働きアリ達が可哀想になってきてしまったわたしは、穴に向かっていく息子を止めた。
「お家壊したら可哀想だよ!息子くんもお家壊されたり誰か入って来たら嫌でしょ?」
彼は、「壊れたらまた作れるよ。アリさん強いもん。」などと対抗してくる。
「でも、知らない人が入って来たら怖くない?」というと「でもお家に誰か来たら楽しいよ」と、あー言えばこー言う。
「でも壊しに来てるのは勝手に入ってくる人は侵入者だよ。お母さんは侵入者怖いと思う」などと言ってしまった。その時の彼に侵入者の意味が伝わったかは定かではないが、ちょっと良くない人というニュアンスは感じ取っていた。

それからだろうか、アリの巣を見つけてもほじくらなくなっていて、言いたい事が通じたのだな〜と嬉しく思っていた。
それが今年の初めころ。最近になってアリを見ると「ボクってしんにゅうしゃ?」と質問し始めた。
最近になるまで、彼の中でどんな事を考えてどんな事を思っていたのだろう。なんだか伝え方を間違えたかな〜と思ったりした。
「アリさんのお家を壊してもないし、ほじってもないし、全然しんにゅうしゃじゃないよ。」と伝えるが、なんとなく腑に落ちていない感じ。「そもそも侵入者ってのは〜」と言ったところでちゃんとは伝わらないだろう。
どうしたもんか。いっその事訪問者になってしまえばいんじゃないか?
「じゃあさ、アリさんの巣を見かけたり通り過ぎる時は、おじゃましまーす!っていってみたら?」と言ってみた。
彼は"そうか!"と言わんばかりにニコッとし、それからはアリの巣とか関係なしに、アリと出会えば「アリさんだ〜おじゃましまーす」と言う様になった。
側から見たら???だけど、彼にはそれで落ち着いたのだろう。
なんだか言葉って、伝えるって難しいな〜と思う。今回だって正しいやり方なんて分からない。でも、その都度考えて彼と向き合っていきたいと思ったりした。
今日も彼はアリさんを見かけて嬉しそうに声をかけている。

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