メンヘラホイホイ-33 暴露(その3)
早朝の俺のマンションのゴミ捨て場でゴミを漁っている所長を目撃した俺は、その場でただ呆然とした。動きが止まった。
俺に気付いた所長。
所長「あっ!〇〇君(俺の名前)おはよう。何処に行ってたの?」
俺「バンドメンバーとそこら辺で飲んで帰って来た所です。」
所長「いやー、〇〇君ならまた女と会ってたんじゃないの?」
俺「いや、違います。ところで何してるんですか?」
所長「あのー・・・、、、お客さんの領収書がなくなってしまってさ、もしかしたら〇〇君が渡しそびれて捨てちゃったのかなって探してたんだ。」
俺「自分は必ずお客さんに領収書渡してますよ。渡しそびれても集金したかは覚えてるんで、領収書だけ捨てるなんてしないです。」
所長「そうかぁー。いやね、最近そういう問い合わせがあるからさ。もしかしたらまたそんな事があったら確認しないといけないんだ。そういう時は探すの手伝ってね。頼りにしてるよ。」
そう言って所長は帰って行った。
吐き気がした。
優子は所長からのメールで
今家にいるよな?今から電話するから、エアコンのリモコンの音を聞かせてくれ。
とか、そんな事を抜き打ちで言ってくるらしい。
昨日はそれが無かったそうだが。
コイツ、何故か知らんが勘付いているか。
あるいは疑っているな。
自宅に戻ったら優子から電話が来た。
早朝からは所長から優子に電話が来る事は無いらしい。が、今回は電話が来て
「良く眠れた?気持ちのいい朝だから電話しちゃったよ」と言われたらしい。
おい。曇天じゃねーか。
俺は所長に対して怒りが沸いて来た。
そこから優子は精神的に参ってしまった。
別れを切り出され、結果的に優子の精神状態を第一にするとそうするのが最善策だと思ったんだ。
電話でフラれた。俺達は話をしながら泣いた。
俺は前に進みたかった。
この所長を潰すか、逃げ出すか。考えた。
潰す為にやった事はデータ収集だ。現在2店舗目の所長になる為に研修を受けているが、過去五年から現在までの顧客数を調べた。そして現在の顧客の数と、ざっくばらんな年齢。
4年以内でこの業界は終わると判断した。
所長になって所長を潰す計画はやめた。
所長になる事をやめた。
研修に今度から参加しない旨を伝えた。
そこから所長は、身柄を拘束するが如く、俺が休みの前日に領収書探しを命じた。ある訳無いのに。その目の前で優子に電話している。
「今〇〇君(俺の名前)は一生懸命になくなった領収書探しをしているよ。もう遅いから後で飲みに誘ってあげようと思ってるんだ。」
このゲス野郎。
もう一つはココから抜け出す事。そして優子を連れて行くんだ。
しかし、優子は鬱病が悪化し、所長が携帯を解約させた。そして新しい携帯を所長が与えたみたいで、俺との連絡手段は断たれた。お店にも来なくなり、みんなの前で所長が言った。
「専務は体調が悪化したので当分来れないから一応みんなにも言っておくね。働けない状態だからお店の経費でうちのやつの携帯料金を払うから、もし連絡先を交換してる人がいたら連絡が取れなくなるからよろしく。
精神的にも参ってるから、あまり人と関わって無駄に傷付くのも良くないからね。」
多分、俺が優子と連絡したのをこっそりと見ていた奴がいる。恐らくブタ女だ。あいつは嘘つきだが、見た事に対して背びれ尾ひれ鱗に至るまで余計な事をつけてバラすんだ。
バラす相手は所長。
と、もう1人。
歯抜け野郎だ。
先日の深夜、事務所に忘れ物をした。
何故か真っ暗な事務所の前に配達員のバイクが2台停まっていた。
さっさと忘れ物を取りに行って帰ろうと勢いよく事務所の扉を開けたら、
ブタ女と歯抜けがキスをしていた。
最悪の組み合わせだ。
俺がお客さんの奥さんとヤリまくっているだのデタラメな噂を流したのは歯抜けだってのはわかっているんだ。
その数ヶ月後、嘘か本当かは知らないが、所長からみんなに発表があると言った。
優子もいた。
「一度離婚したんですが、俺達は再婚する事になりました!」
その瞬間、優子は声を出さず泣き崩れた。
所長は
「どうした?また体調が悪くなったんだな。奥に行こう。」
そう言って優子を連れて所長室に入って行った。
俺はまた好きな人を守れなかった。
悔しくてたまらなかった。
数年前から俺は成長していないのか?
やっぱり世の中は金なのか?
どうして優子は逆らわないんだ?
数秒だけ優子とすれ違った時に、優子に言われた。
「こうするしかなかったんだよ。」
なんでこうなんだ?
俺の声に蓋をされるのは何回目だ?
優子の姿は見なくなった。
地方に所長が家を買って、そこにいるって所長が言っていた。実際に優子の家は空き家になっていた。
何もかもどうでも良くなった。
配達中に酔っ払いの女性に道を尋ねられた。
お礼に飲みに誘われたが、拒んでも何度もお願いされた。
そのまま抱きつかれ、なんだか俺はどうでも良くなりそのままヤってしまった。それがキッカケでしばらく付き合っていたが、、、。
彼女はとあるバーの常連で、そこに一緒に行った。他のお客さんと仲が良さそうだが、一線を超えている様な嫌な気がした。
俺が見えない所で他の男とキスをする彼女を見て
「君の姿が見当たらないけど、トイレ行ってくる」
そう送って帰った。
今も俺はトイレから出て来ていない事だろう。