スラムダンクにかぶれたオタクがプロバスケットボールの試合を観戦に行った話
【前置き】
これはルールもまともにわからないのに無謀にもプロリーグを試合を観戦しに行ったオタクの感情を書き散らしたものとなります。
無知ゆえの見当違いな発言、無礼な発言等があることを先んじて謝罪いたします。大変申し訳ございません。
当該選手、クラブ、ブースターの皆様を侮辱する意図はありませんが、この前置きで少しでも不安に思われた方がいらっしゃいましたらブラウザバックをお願いいたします。
【本題】
2023年4月。筆者は映画THE FIRST SLAM DUNKにおおはまりしていた。映画館に通い、花道たちの奮闘に熱狂しているうちにふと思った。
本物のプロバスケットボールの試合を観に行きたい。
地元にもプロチームは存在しているが折角ならトップリーグであるB1クラブの試合が観たいと思い調べてみると隣の県のクラブがB1に所属していた。
これ幸いとばかりにチケットを買ったが、残念ながら競技経験は授業のみ。ルールに関して知っていることもスラムダンクで得たもののみ。具体的には
・ゴールにシュートすれば点が入る
・30秒ルール(現行の24秒ルール)
・インテンショナルファウル(現行のアンスポーツマンライクファウル)
・トラベリング
・スリーポイントシュート
・ファウルの種類によってはフリースローが与えられる
こんな感じ。
この程度の知識で観戦しようと良く思ったな、と思われた方もいらっしゃることでしょう。私もそう思った。
それでも一度熱の入ったオタクの無謀な行動力は止められなかった。
ちなみにホーム側クラブについて知っていたことといえば、特別指定選手という大学生の選手がいること、チームカラーが赤なこと。
そしてアウェー側は当季地区優勝をしており、元日本代表の選手も所属している。つまり強豪。
まあスラムダンクも主人公が髪が赤いしか知らないまま観てたしいけるでしょ〜という、観戦に行きたいという情熱はあるものの知識を得る意欲はあまりないまま会場へ向かったのだった。
【総評】
こんな面白いことしてるならもっと早く教えてよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
スラムダンクでバスケットボールの面白さは理解していたつもりでいたが正直舐めていた。
めちゃくちゃ面白い。もっと早く知りたかった。
個人的に驚いたポイントがいくつかあるので詳細に述べていきたい。
①会場
主要駅から徒歩5分ほどの好立地にこんなに大きな体育館があるとは知らなかった。主要な交通手段が自家用車の地域で駅近の立地は珍しい。
赤い服やグッズを身につけた方について会場へ向かう様はさながらアイドルのコンサートのようだった。
体育館の中に入ると思ったよりもコートと客席の距離が近く、チケットを取った一階席は既に練習を行っていた選手たちの表情まで見ることができた。
スポーツ観戦の経験はドーム球場での野球しかなかっため、選手は豆粒ほどの大きさでしか見えず試合が始まるまで選手の姿を見ることはないと思い込みがあった。
イメージとのギャップに戸惑うあまり同行してくれた友人に「本当にここで席合ってる? 近すぎない?」と何度も聞いてしまった。
②演出
チアガールの方が試合前に応援の仕方を教えてくれる。初めて観戦する身としては非常に優しい。そして皆様可愛い。
試合開始前のチアガールの皆様のパフォーマンスがあり、その完成度の高さにも目を瞠った。
可憐に踊る彼女たちは可愛いだけじゃない。華奢ながらも力強くしなやかに舞う姿はまさに女神。
パフォーマンス自体は非常に短い時間であったがこの時点でかなりの満足感があった。
え?マスコットの着ぐるみも踊るの? しかもかなりキレが良い。着ぐるみがラインダンス並みに足上がることを初めて知った。
会場の照明が落ち、天井に設置されたモニターからオープニングムービーが流れる。これから試合が始まるんだというワクワクとドキドキが高まっていく。
そして選手の入場。真っ赤なライトに自動制御で煌めく客席のペンライト。手拍子や選手へのコールで高まる会場の一体感。
試合開始前にして会場に足を運ぶ意義を強く感じた。
この空気感は配信で見るだけではわからない。
③声援
会場中から湧き上がる声援の大きさに驚かされた。
感染症対策の制限があった記憶があるので全力ではなかったかもしれないが、北陸の地域性として盛り上がるべきところでもあまりはしゃがないというイメージを覆すボリュームであった。
誰か音頭をとったわけでもないのにぴたりと息が合っている。
オフェンスコールやディフェンスコールも試合が進んでいく中で萎んでいくどころか声の大きさは増して行く。選手がシュートを決めた時の歓声は一際大きく、そのパワーは身体がびりびりと震えるほどだった。
そして何より驚いたのが、アウェー側のフリースロー時のブーイングだ。
日本のスポーツ観戦の文化の中にブーイングがあること自体に驚きであったし、ブーイングコールやクラップでスローイングを妨害するという発想が新鮮であった。
最初はブーイングに躊躇していたが気付いたら声を張り上げていた。
それだけ会場の一体感が凄まじかった。
③選手
選手たち一人ひとりの個性にも惹き込まれた。
本当に恥ずかしい話ではあるが、選手については事前に調べてもほとんど覚えられなかった。
百聞は一見にしかず。試合の中で得意なプレーや強みを通して各選手の魅力を感じることができた。
バスケ選手とは思えないサイズの大きさのある選手はゴール下で存在感を発揮する。
一度ボールが手に渡ればシュートを外す気配のない選手。
チームメイトのシュートを自分のことのように喜びベンチで飛び跳ねる選手等々。
背番号があるので名前が分からなくても個人の判別はできるので同行した友人と「22番の人めっちゃシュート決まってない?」「向こうのチームの7番の人ってユニフォーム着忘れたままコートに行こうとした人だよね?」という会話もできる。
入場の際に貰ったパンフレットにも選手紹介が載っているので試合中に気になった選手を後からでも詳しく知ることができるのもありがたい。
ほぼ予備知識のなかった筆者もしっかり推しを見つけて帰ってきた。
余談
スラムダンクではポジションが番号で表現されるため、背番号は4番からという話があったかと思いますが、0〜3番の背番号の選手がいるのはなぜでしょうか。有識者の方ご存知でしたらご教示いただけますと幸いです。
④試合
アウェー側が地区優勝のクラブだという事前情報を得ていたため、防戦一方となるのではないかと邪推していた。
あまりにも素人考えだった。勝負事はそんなに単純に雌雄が決するものではない。
生身の人間同士がぶつかり合う試合ではまず真っ先に何もかもが速い、という心証を得た。
スピードはもちろん、展開の速さもだ。
一秒あればボールを奪える、ブロックができる、そしてシュートが決まる。
瞬きなどしていたらボールを見失ってしまうほどのスピード感に圧倒された。
前半のうちはせっかくチアの皆様が応援の仕方を教えてくれたのに愚かにもコールもクラップもしなかった。
なぜか。
かぶりつきで試合を観戦していて息をすることすら忘れていたからだ。
ほんの1秒、気が緩んだだけで戦況が変化してしまう世界に意識が飲み込まれていた。
前半終了間近に決まった2Pシュートで初めて感嘆の声が漏れた。
自分たちの流れを掴めれば格上の相手にも勝利できる。それがバスケットボールの魅力だろう。
試合は立ち上がりは両者譲らず点の取り合いという雰囲気であったが徐々に突き放したと思いきやじわじわと追いつかれ、そしてまた突き放し……と試合展開が目まぐるしく変化する。
大量得点をできたからといって安心はできない。相手にやり返される可能性もある。
今回の試合でも相手側に流れが来ていて点差を詰められる場面もあり気を緩める暇などなかった。
当初はただプロの試合を観たいという一点のみで会場を訪れていたため、どちらのブースターというわけでもなかった。
それなのに気がついたら完全にホーム側のブースターとしてオフェンスコールに混ざり、フリースローでは腕が痛くなるほど激しく手を叩いた。
試合終了のブザーが鳴り、ホームクラブの勝利が決まった瞬間は高揚感と興奮で現実が受け入れられず割れんばかりの歓声の上がる会場で声も出さずただ呆然としていた。
興奮のあまりアドレナリンが出ていたようで、心拍数が上がり身体中が熱くなっているのに頭の中は妙にクリアというなんとも不思議な状態だった。
未だかつて経験したことがないほどの熱狂の渦の中、
バスケってめちゃくちゃ面白いじゃん。
ただただ純粋にそう思った。
こうして筆者の初めてのプロバスケットボールリーグの試合観戦は終わったのであった。
バスケットボール最高! 試合観戦超楽しい!
たった一夜で筆者の頭の中はバスケットボールのことでいっぱいになってしまった。
競技に対して造詣が浅くても楽しめる。演出もエンターテイメント性が抜群。室内競技なので天候に関係なく楽しめる。会場にもよるが気軽に来れる値段設定であるように思う。
お勧めしたいポイントはたくさんあるがこの記事で少しでも興味が沸いた方は是非会場に足を運んでみてほしい。
読んでくださった皆様の日本のバスケットボール文化に触れるきっかけになれますように。
【後日談】
劇的な勝利を目撃してしまったこともあり、すっかりホームチームのファンになってしまった筆者はもう一回観に行きたい!と思い次の試合日程を調べた。
するとその試合が当季のホーム最終節であったこと。
クラブはトップチームへの残留争いの真っ只中であることを知った。
え? 残留って何?
俺たちの冒険はまだまだこれからだ!
【補遺】
※オタクがうだうだ言ってるだけの蛇足です。
なぜ今になって一年近く前のエピソードを公開したのか。
より多くの人にバスケットボール観戦の楽しさを知ってもらいたいという思いももちろんあるが、自分自身が初心に返りたいと思ったことに由来する。
本編で観戦に行った当該クラブはまさに崖っぷちのリーグ単独最下位。
ブースタークラブにも入会し、できる限り現地へ足を運んでいたが想像とはかけ離れた厳しい現実が待っていた。
このままでは降格待ったなしの状況で冷静でいられるほどブースターとして覚悟は決まっていなかった。
いつのまにか今か今かと心待ちにしていたシーズンが今日は勝てるだろうか、降格争いをしているクラブは負けているだろうかという不安を煽る要素に変わっていた。
楽しみが楽しみでなくなるのは非常に辛かった。
このままクラブのことを嫌いになってしまいそうで、バイウィーク期間中にもう一度原点に立ち返ろうと思い立って当時のことを文字に起こしてみた。
あの日のことを思い出すと今でも血が沸き立つような感覚がした。割れんばかりの歓声が蘇ってくる。
やっぱり真っ赤に染まった市総が好きだ。
残留だとか怪我人だとか契約解除だとか、色々な要素を難しく考えすぎていたようだ。
バスケットボールが好き。
クラブが好き。
ちっぽけなバスケ素人のブースターにはこの思いだけあれば十分ではないだろうか。
とはいえ正直バイウィーク明けの一戦は怖い。
負ければ残留は絶望的になってしまうその瞬間を目撃してしまうのが怖くて観戦を控えようと思っていた。
勝手に不安がって好きだったものを遠ざけるのは馬鹿らしい。
自分の声援が選手の力になれるかもしれない。そうならば行かない選択肢はない。
自分が好きだと思ったものを信じてみよう。
気を決してチケットを購入した。
今週末、負けられない戦いが待っている。
頭を空っぽにして声を張り上げ全力でクラップをしよう。それが勝ちにつながると信じて。
最後に初心に返ってこの言葉を結びとしたい。
あきらめたらそこで試合終了ですよ。