S木帽子店
家から徒歩2分のところに、S木帽子店はあった。
店舗に商品を並べて売っている帽子屋さんではなく、帽子をで作業で製作していた。
見本が並べてあったが、警察の制帽とかを作っていたはずである。
俺の小学校に入った当時は、まだ家電がある家は、クラスの1/3程度だった。
だからクラスの連絡名簿には、(呼)と言う表記があった。呼び出し電話と言う意味だ。つまり隣の家には電話があるが、自宅には無い時、隣の家に頼んで、電話を呼び出して貰ったのだ。
俺は小学校2年生の時に家電が付いた。
当時は個人情報なんて言葉すら無かった。俺が大学くらいまでは、各クラスの名簿には、住所、両親の名前、本人の生年月日、電話番号が明記されていた。
中学生になるともう呼び出し電話の人は、クラスに1人とかだった。
大学では全学生の住所、電話番号、学籍番号、帰省先の明記された学生名簿があった。うちの大学では、学生生活課で1000円で買えた。学生証見せれば、誰でも買えたから。また買わなくても、学生証見せればその場で閲覧出来たから、そこで知りたい人の情報を得られていた。
さて、うちの話だ。
うちは家電がないとき、そのS木帽子店を電話の呼び出し先にしていた。
うちに電話があれば、S木のご主人か奥さんが、電話ですよと家に来てくれるのだった。
大学時代は、やはり家電の無い人は、大家の呼び出しだったりした。
アパートに公衆電話があり、出た人が呼び出してくれるところは、まだ良かった。
大家の呼び出しは、うるさい大家だと文句言われたから。
まだ家電に父親がでる方が、楽だった。父親ならちゃんと名乗って、要件伝えたら、問題無かった。だが、大家はそれでも文句を言うから。
今は個人でスマホ持ってるから、家電自体知らなかったり、公衆電話のかけかたすら知らないから。
時の移ろいだな。