煮干し中華の店
煮干し中華のラーメン屋🍜である。
俺は偶然にこの店を発見したのだった。
その日俺はパブで飲んで、締めにラーメンでも食おうと思って、夜の街を彷徨っていた。普段行ってたラーメン屋が何軒かあるが、その方向ではない方向に歩いていた。新規開拓したかったなら。
すると道に赤い提灯が出ていた。
煮干し中華 次衞門 そう書かれていた。
その細い路地を入った左手の奥にその店はあった。
店の前にも赤い提灯。
俺は酔ってたし、躊躇わずに扉を開けた。
店内はカウンターだけで、6席ほどだった。8席だったかもしれない。平成初期だから、記憶が曖昧。
店内に客は居なかった。
俺はカウンターに座った。
煮干し中華500円との短冊が。
500円は安いな。
俺はマスターに「煮干し中華お願いします」と注文したのだった。
カウンターの中の厨房は、客席側より広かったw
そして本棚があり、横山光輝三国志が多分全巻揃っていた。
勿論これはマスターの読むためだろう。
だって、客席からはカウンター越しに体を伸ばしても、届かない距離にあったのだから。
大きな寸胴ではなく、麺は中華鍋の大きなので茹でていた。
そして、煮干し中華が俺に供された。
食べたら、思ったより美味しかった。
酔ってるから、あっさり系も良かったのかな?
俺は1杯食べ終わった後、すぐもう1杯注文した。
そして2杯完食して、スープも飲み干して、店を後にした。
2杯でも1000円だから、安いものだ。
俺は初めての店で、店主に話しかけたりするタイプではないから、互いに注文以外は無言だった。
それから数日して、また飲んだ後、俺は次衞門に向かった。場所はうろ覚えだったが、辿り着けた。
その日は俺の前にひとり客がいた。
俺はカウンターに座り、煮干し中華を注文したのだった。
俺が食べてる間にもう1人の客は帰った。
俺はまたお代わりを注文した。
するとマスターから話しかけて来た。
お客さん、名刺貰えるかな?
俺は仕事帰りでスーツ着てたから、ポケットから名刺入れを出し、マスターに1枚差し出した。
マスターも名刺をくれた。
マスターの名刺にはある地元のホテルの課長のめいしだった。
マスターが語り始めた。ラーメン🍜が好きで、ここは夜だけ趣味で開いているというのだ。
そして、そのホテルは俺の会社の別部署と取引があったのである。地元だと世の中は狭いから。
俺はひとりで飲んだ後は、次衞門に行く様になった。マスターとは馴染になり、色々と話をする様になっていたから。
友達と飲んだ時は、従来行ってたラーメン屋や蕎麦屋に行っていたけどね。
ある日俺が食べていたら近くのスナックのホステスさんが5人来た。そして煮干し中華を注文したが、マスターが麺が1人分足りない。今買ってくるから、少し待ってくれとホステスさんたちに話していた。
そして俺に店番してくれと言って、近くの深夜スーパーに麺を買いに行ったのである。
俺はそのホステスさんたちと話しながら、マスターが帰ってくるのを待った。
マスターは麺を買って来て、煮干し中華を作るのだった。俺は製麺所で仕入れてる麺とスーパーの麺じゃ味も違うだろうなぁ、とか考えたが俺のラーメンじゃないから考えないことにしたよ。
ある日一人でマスターと話しながら食べまでいたら、中年のサラリーマンが入って来た。
そして美味いと聞いたから来た、とか色々マスターに話しかけるのだった。だが、マスターは一言も返さないw
黙々とラーメンを作っていた。
その客は食べてからもまた色々はなしかけて、無視されていた。俺も多分最初に来た時に話しかけてたら、こうなっていただろうなぁ。
2杯連続で完食したから、マスターに気に入られて名刺求められたのだろうし。
その客は「つまらない。もう来ない」と言って帰って行った。
「来なくて良いよ」とマスターw
趣味でやってる店だから、そこは気ままだったなぁ。
だって、昼の仕事だけで収入は充分なんだから。
ほとんど趣味の店だったから、マスターの人の好き嫌いとかは、客商売では無かったw
俺が気に入られたのは、よく行った事、無駄に話しかけたりしなかった事、ラーメンをスープまで飲み干して、お代わりもしたりしていたから。これだろうね。