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えんびフライ

一日中、バタバタ過ごして
疲れた帰り道

ふと、考えるのは

「さて、
今夜のご飯は何にしようかな?」

その日は、
作る気力も無い程
疲れていたので、
これが都会なら
「Uber Eats」等で自宅まで
美味しい食事を
配達してもらえるのですが

我が家は、何と!
「配達外」なんですよ。

割と色々なサービスが
適応されていない
地域なので、調べると、
いつも…
「やっぱり田舎なのね...。」と
再認識してしまいます。

ですので、
車を運転しながら
帰宅途中に寄るのは
いつものスーパー。

その日は、
週末だったという事もあって
色々な美味しそうなお惣菜が盛られた
いわゆるオードブル盛りがありまして

あ、これなら
みんなでつまんで簡単に食べれそうと

みんな大好き割引シール(笑)が貼られた
それを購入して帰宅しました。

バラバラに帰宅した家族が集まって、
その日あった事などを話しながら
オードブルをわいわいつまんでいると

娘が急に
「えんびフライ」と言いながら
えびフライのしっぽまで食べたんですよ。

あれ? すごく懐かしい気がする。

そう言えば、以前息子も
えびフライを食べる時に
同じ事していたなぁ。

いやいや…
むしろ、自分もしていた気が…

思い出した!

「あっ!それ国語の教科書に載ってた!」

「お母さんの頃にも載ってたの?」


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        三浦哲郎さんの作品
                「盆土産」

(大まかな内容です。)

東京に出稼ぎに行ってる
お父さんが
家族に食べさせたいと
苦労しながら鮮度を保って
持って帰って調理してくれた
「えびフライ」
歯のないおばあちゃんも
美味しくて、嬉しくて
えびの尻尾まで食べてしまって
思わずむせて出してしまいます。

それを見て、
お父さんがおばちゃんに

「歯がねえのに、しっぽは無理だえなあ、婆っちゃ。えびは、しっぽを残すのせ。」

それを聞いた、
僕とお姉ちゃんのお皿にも
えびのしっぽはなくて…

顔を合わせたふたりは
肩をすくめてしまいます。

次の日、
皆でお母さんのお墓参りに行くと
おばあちゃんの口からお念仏の合間に
「えんびフライ…」と聴こえてくる。

お父さんが、また東京に向かうのを
お見送りする時に、僕は思わず
「えんびフライ」と言ってしまった。

 (このエッセイを書くにあたって
もう一度読んでみましたが改めて、
心温まる素敵な作品だなぁ…と思いました。)

📖┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈📖


この作品は、
学生の頃に授業で読んだのですが
この家族の裕福ではないけれど
心が温かくなるような
純粋な幸せを感じて、
感動し、胸の奥が熱くなり…

当時、窓際の席でしたので
外の景色を見るふりをしながら
涙で滲んだ瞳を窓から吹き込む風で
乾かそうとしていました。

また、地域は違いますが
やはり、訛りのある地域で
暮らしていますので
このご家族の「えんびフライ」が
飾らない幸せな時間の象徴の様で
やさしい言葉に聴こえてきます。

私は、エビとカニに
若干アレルギーがあります。

でも、エビに関しては、
少量なら問題ないので
ひとつだけ、いただきました。

やっぱり、美味しいですね。

でも、この次、
家族みんなで食べる時は
えびフライを作って
揚げたてを食べさせてあげたいなぁ。

 やっぱり、しっぽまで食べるのは
揚げたてが1番ですから。

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