錬金術殺人事件
犯人
錬金術師
同情度 ★★
妹の夕凪はるかが自殺に追い込まれたのは気の毒だし、その復讐をしようと思ったのは当然だと思う。
ただ、真相の露見を恐れて全く関係ない不二森を殺したり、速水玲香を誤解で罪なすりつけようとしたりと、保身の強さや思い込みの激しさの印象が悪い。
見ていて妹の為に復讐する自分に酔ってる感じだった。「犯人たちの事件簿」でモテるアピールしてたけど、ただナルシストなだけだと思う。まあ、外伝での振る舞いを考慮に入れるのは考えものかも知れないが、この事件の犯人に限らず外伝を判断材料にして同情度考察するのは他の犯人にもやってるし、外伝でも本編の作者がクレジットされている時点で立派な公式作品ですからね。
被害者同情度
繭村琢也 ★
深森 蛍 ★
鬼沢龍子 ★
不二森映 ★★★★★
美影紗月 ★(生存)
速水玲香 ★★★★★(生存)
犯人同情度が2なので事件の元凶4人はそれより下が妥当。
速水玲香を入れているのは、彼女も犯人に恨まれた標的の一人だったので。ただこの点に関しては、先述の通り、犯人の勘違いではあるのだが。
不二森映
不二森は速水玲香への疑いを晴らす為に単独行動したのが災いしたが、誰かを守ための善意で動いていた人物にそれを咎めるのは酷だろう。
要は気が弱いか口下手なだけだったんだろうなと。いわゆる「コミュ障」か。
こう言う人物にこそ報われてほしかっただけに残念。
真相に迫りかけて殺害されたと言う経緯は緒方夏代と佐木竜太に似ているが、似ているようで細部が違う。
緒方夏代は誰かの為と言う意志の介在しないまごう事なき単独行動なので、不二森に比べるとやや軽率な印象を受けた(勿論これを言うのは酷だとは思うが)。佐木竜太は決定的な瞬間の撮影後、金田一に相談した上で公開しようとしていたので、殺されたのは完全に不可抗力で自分一人ではどうにもならなかった。寧ろこの件に関しては犯人に踊らされたとは言え佐木から離れてしまった金田一の責任でもある(これも酷な言い方なのは分かってる)。
犯人も夕凪はるかの事件に関係なかった不二森を殺してしまった事に関しては自分の非を認めていたが、不二森を巻き込まなければ犯人への印象は幾分変わっていたかも知れない。
美影紗月
美影は本人曰くグルではないではないらしいが、自分は他の3人と違うアピールしていたのが言い訳がましい。なら最初に金田一に問い詰められた時何でそう言わなかったのか。
かつての共犯者が殺されてその場にいなくなってから「私はグルじゃない」と言っていたのが言い訳がましかった。「私は悪くない」って言ってるみたいで。あからさまな責任逃れの発言がかなり印象が悪かった。
ヤクザと繋がりがあり、自身も物凄い剣幕で迫った鬼沢が怖くて従うのは仕方ないにしても、夕凪はるかに直接言う事はしなかったのかな。結局彼女に共犯を疑われるぐらいには不誠実だったって事なのでは?
不二森みたいなコミュ障ならまだ分かるけど美影はそういうタイプじゃないからな。
その後謝罪したとは言え、謝るなら言い訳をしなければよかった。言い訳をせずに謝るだけだったら、まだ印象は変わっていたかも知れない。
速水玲香
何も関係ない、それどころか夕凪はるかの事を案じていた立場だったのに犯人に一方的に恨まれたのがただただ気の毒だった。
実際の撮影でも、本番前でもヘラヘラしていた深森とは対照的に、夕凪はるかの意志を継ごうとした速水玲香は真剣そのもので、その影響か、その後の立場も明確に差が出た。
話がそれるが、「タロット山荘殺人事件」の犯人であり速水玲香の実の兄だった男は速水玲香の芸能活動を「(速水雄一郎が)自分の娘と偽って芸能人にして金儲けまでさせた」と言っていたが、自分の娘と偽ったのはともかく、芸能人になったのは玲香自身の意思だろう。でなければ今回の話の回想の場面のような周りに影響を与えるような芝居は出来ない。
続編である「金田一37歳の事件簿」では芸能活動を引退しているが、彼女にとって芸能活動は天職だったのかも知れない。
速水玲香のファンだった不二森の話をさせてもらいたいのだが、考えてみたら犯人は速水玲香の事も恨んでいたので、彼女を守ろうとした時点で彼が犯人に殺されてしまうのは避けられなかったと言わざるを得ない。残念ではあるが。
速水玲香の項目を作って人物語りをするのは初めてなので、この事件の前後のエピソードまで考慮して長めに書かせて頂きました。
最後に
最後にと言っても事件について書きたい事は書いたので、あとは簡潔に。
この事件の最後には怪盗紳士が出てきます。実は登場人物の一人になりすまして事件の現場に潜り込んでいました。勿論、捕まりません。
事件は今回もトンデモトリックでした。錫で出来た扉を開閉する密室トリック。溶かして開けるのはまだしも犯行中に綺麗に元に戻すのはあり得ないだろ。深森を殺したり玲香を拉致監禁するのと並行してだろ。氷橋といいリターンズでのなまはげの事件といい、この事件のトリックはトリックと言うよりもはや大掛かりな理科の実験みたいになってるな。
この事件の後、短編で「高度1万メートルの殺人」が描かれ、コミックスにも収録されています。この事件ではご存知明智警視が何と本物の飛行機を操縦します。
もはや何も言う事はありません(笑)。いっそ神にでもなったらいかがでしょうか。
以上です。
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