それでも世界が続くなら/CIVILIAN リリース10周年記念・収録曲限定LIVE 2023/9/3(日) 感想

1.このライブについて

 このライブは、タイトルの通り、それでも世界が続くならが10年前にリリースした「この世界を僕は許さない」「彼女の歌はきっと死なない」のリリース10周年を記念して、それらのアルバムに収録された曲のみをやる、というコンセプトのライブである。まあ、実際には収録曲以外もやってくれたのだが。
 それでも世界が続くならを知ったのは「参加賞」という曲で、「彼女の歌はきっと死なない」に収録されている。人生に疲れた人によりそうような歌で、強い励ましのメッセージや元気をくれる要素がある曲ではないが、そこがいい。ほかにも「スローダウン」や「チルの街」はそれせかの曲の中でも何度も聞いている曲だ。
 それでも世界が続くならの歌詞の方向性は、CIVILIANを丸くした感じだと思う。このライブはCIVILIANとの対バン形式だったが、共通点が多いと感じていた2バンドの相違点が見えたライブであったように思う。

2.CIVILIAN

 セトリは毎度のことながらうろ覚えなので抜けも多いと思う。

1.人類教のススメ
2.犬になりたい
3.ぜんぶあんたのせい
4.イエスタデイワンモア
5.千夜想歌
6.カッターナイフと冷たい夜
7.夢の奴隷
8.覚えていようと思ったよ
9.declasse

 それぞれの曲については、ワンマンでやっていた曲が多かったので特に印象に残った曲について話す。
 「ぜんぶあんたのせい」はイントロのギターが好きで気に入っている。また、「夢の奴隷」はワンマンでもやっていたが、曲の持つ勢いもあってライブ映えする曲だなあ、と思った。
 曲間のMCで、それせかは今の自分たちを呼んでくれたのだから、昔の曲をやるのではなくて、今の自分たちのベストの曲たちをやろうと思ってきた、と言っていた。なので昔の曲はほとんどやりません、といってから「カッターナイフと冷たい夜」が始まった。Lyu:Lyu時代のライブ、ディストーテッド・アガペーの世界のライブDVDにおけるこの曲の「うるせえな わかってる その程度のこと」という部分は、心のドアを開けろと催促する外部に対する怒りが感じられて好きだ。このライブでもその部分が聞けて良かった。
 ラスト1曲「declasse」の前のMCで、「それでも世界が続くならとCIVILIANが対バンをした、それだけが真実なのにみんな見えないものを見ようとし過ぎていると思います。」という風なことを言っていた。どういう意図の発言なのか分からなかった。SNSなどで、それせかとCIVILIANの仲に関する憶測が広がっていたのだろうか。リスナーへの警鐘のように聞こえて、declasseの演奏中も気になってどういう意味か考えていた。

3.それでも世界が続くなら

 それでも世界が続くならのライブに行くのは今回が初めてだった。たいてい初めてライブに行くと、音の迫力に圧倒されるものだが、今回もそうだった。以下、セットリストを順に並べたつもりだが、順番の前後や抜けがあると思う。

1.スローダウン

 死ぬよりもつらいことがこの世界にはある、ということを歌った曲。死にたい、という人にかけられる言葉である、「死ぬ気になれば何でもできる」へのアンチテーゼになりえる。来年の誕生日には死なせて、という歌詞もいい。誕生日という一般的には祝われ、生を実感するであろう日に死ぬことが、死にたいという気持ちが強いことを周りに知らしめているように思う。
 自分も受験に受かったら死のうとか、就職決まったら死のうとか考えていた。めでたいはずの日に死ぬことで、一時の感情で勢いに任せて死んだのではない、と周囲に伝えたかったのかもしれない。まあ、今も生きながらえているのだが。

2.水色の反撃

 女子中学生?がいじめにあっているMVが印象的な曲。水色、という青春(自分はこの言葉がとても嫌いだが)を想起させる色が嫌いだと言っている曲だと思う。生きててよかったという言葉があるが、生きているとよくないことが起きる人にとって、生きていることを喜ばれることは、嬉しいとは言い切れないだろう。そういった絶妙な感情も想像させる曲だと思う。
 ちなみに自分は「いじめ」という言葉も嫌いだ。外部で起これば犯罪として扱われるような行為を、組織内部で行われた場合に、「いじめ」という言葉で濁しているように思える。かといっていじめがなくなるとも思わないし、そうした言葉を使う現実を変えようという気力もないが、嫌いだということを言いたかった。

3.自殺志願者とプラットフォーム

 自殺志願者が駅のホームから飛び込もうとしたけど飛び込まないという歌。「本当は寂しいのに 一人が好きとか言い張って」とか、「帰りの電車は 席に座りなよ」とか、歌詞の端々が染みる歌。

4.チルの街

 日曜の夜に聞く曲。明日への緊張や不安が和らぐ。最後の方のノイズギターはライブだと迫力があって、感情の爆発を表現しているようだった。

5.シーソーと消えない歌

 これもMVがいい味を出している曲。曲半ばのノイズサウンドもライブならではの迫力があって、病みつきになる。MVのイメージがあるから冬に聞きたくなる曲でもある。

6.文学少年の憂鬱

 CIVILIANが「今の自分たちを呼んでくれたので~」とMCで言っていたのに対して、そこまで考えてなかった、みたいなことをMCで言っていた。また、以前に弾き語りライブ?をしたときにCIVILIANはそれせかの曲をやってくれたにもかかわらず、自分は自分たちの曲しかできなかったので、ということでこの曲が演奏された。ワンコーラスだけだったが、聞けると思ってなかった曲が聞けたので良かった。

7.17歳

 27歳の時に作った曲らしい。自分の10年前はどうだったか。あの頃から見てる景色は変わらない気もする。悪い意味で。

8.参加賞

 好きな曲。がんばれとかじゃなく、もういいよと言ってくれるような曲は、貴重だと思う。辛い人にかけられるようなどんな言葉もむなしく滑る。たまに与えられる人の優しさに泣きそうになる。ということを歌っている。
 「死んだっていいよ 死ぬんだから」は、ボーカルの篠塚さんの考えをよく表している言葉のように思う。MCでも言っていたが、生きていることは偉くも凄くもなく、ただ死なずに生きているだけで、でもそれでもいいじゃないかという考え方で、等身大に現状を肯定していいて良い。

9.流星群

 アンコールで演奏された曲。ただゴミが落下しているだけでも、遠くから見ればきれいに輝いていて、流星群なんて呼ばれている。自分の人生もそうだったら、などと思って作った曲らしい。

4.おわりに

 だいぶセトリが抜けている気がする。ライブを通じて感じたことは、それでも世界が続くならとCIVILIANとの違いだ。どちらも似たような方向性の歌詞だが、CIVILIANのほうが怒りというか攻撃的な感情を感じる。対してそれせかは、自分の世界に閉じこもって、慰めてくれるような感じだ。
 どちらがいいというつもりはないし、その時の感情に応じて、どちらの曲を聴きたいか決める。ただ、今回初めてそれせかのライブを見に行って、どことなく「家」のような安心感を覚えた。
 12月の中旬位に、O-Crestで入場無料ライブをやるらしい。どこにも居場所がない人に来てほしいと言っていたように、それせかのライブは居場所を見つけたような気分になれる。
 MCでは、誰一人ライブに来てくれなくなるまでバンドをやり続けたいと言っていた。どうか、どこかでずっとライブをし続けてほしいと思った。
 

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