大文字伝子が行く159

おんなだけ
==== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
渡伸也一曹・・・陸自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当の事務官。
草薙あきら・・・警視庁からのEITO出向。特別事務官。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
天童晃(ひかる)・・・EITO東京本部剣道顧問。EITO準隊員待遇。闘いに参加することも。
須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
本郷隼人二尉・・・EITOシステム部。弥生の弟。EITO秘密基地勤務。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
原田正三警部・・・潜入捜査官。新宿風俗担当。
 
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
=EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズ後方支援部隊である。=
 
午前6時。
オクトパスからまた、Tick Tackに「課題」が送られて来た。

やあ。じゃ、次の課題はねえ。「女だけ」。
簡単でしょ。

 
午前9時。EITO本部。会議室。
ディスプレイにTick Tackが映し出されていた。
「大文字っ!!」「はい。こいつとの決戦の時は私を呼べ。」「・・・。はい。」
須藤医官は出て行った。幸田は慌てて後を追った。伝子も皆も呆れて見ていた。
「トラウマでもあるのかな?また訳の分からないこと言って来たな。」
「ウーマン銭湯!!」と、仁礼と財前は叫んだ。
「ん?昨日、ウーマン銭湯の帰りに痴漢退治したんだったな。確かに『女だけ』の条件に一致するな。でも、他の要素も考えなくてな。一佐。ホワイトボードに書いておいてくれ。河野君。所轄の警邏を強化するよう連絡を頼む。じゃあ、諸君の意見を聞こうか?」と、理事官は言った。河野事務官は、慌てて会議室を出た。
「理事官。隊長。『女だけ』っていうのは、女子固有って意味でしょうか?」なぎさは尋ねた。
「だろうな。」「確かに、『えだは会の事件』の時は女性アスリートばかりだったが、男性競技がない訳では無かった。」理事官と伝子は交互に言った。
「あの。はとバスとかは危ないでしょうか?」と馬場が言った。
金森が睨んでいる。「あ。公私混同していないよ。」「だって・・・初めてのデートが、はとバスの都内一周だったんです。私は、つまらなかった。」と、金森は膨れた。
「夫婦喧嘩は後にしろ。馬場が言いたいのは、バスガイドが危ないのでは?ということだろう。しかし、本数が・・・。」
「都から離れる観光バスは除外して、本数を減らして貰いますか。もし、オクトパスが日時を指定して来たら、ポイントは絞れます。」と、夏目警視正が言った。
「そうしよう。考えてみると、女性の社会進出と共に『女性特有』が少なくなったな。医師、薬剤師、看護師、介護士、保育士、教師、タクシードライバー、トラックドライバー、電車の運転士、整備士も女性がいるな。調理師、パティシエ、ソムリエ、店員なんかも・・・。」理事官の言葉を遮って、「あの、アマさんは・・・。」と大町が言った。
「アマさん?庵主さんの尼さん?修道院のシスター?」珍しく江南が言った。
「ダイバーのアマさんですよね。」と、安藤が言った。
「ああ。」皆が納得した。海女さんのように潜る男性もいるが、一般に海女(あま)は女性固有の職業だ。
なぎさは、ホワイトボードのバスガイドの文字の下に海女を追加した。
「歯科衛生士は?」と高木が言ったが、「残念。男性の歯科衛生士も最近結構いる。」と筒井が言った。
「客室乗務員は?あ。スチュワードって昔からいたな。」と、青山は一人で言って、一人で納得した。
「女子アナって言葉があるけど、男性アナいるし。どこかの議員が言ってたけど、女子アナって言葉が差別だって。TV局で勝手に言い出しただけなのに。局アナも差別になるのかって誰かが言ってましたね。」と井関が言った。
「テレビ局って言えば、メイクさん。あんまり男性のメイクさんは聞いたことがないな。」と田坂が言ったが、「残念だな、田坂。前に利根川さんに聞いたことがあるんだ。少数派だが、いる。ジェンダーの人が多いらしいが。」と、伝子は言った。
「栄養士は、どうでしょう?」結城が言った、その時、ディスプレイに市橋総理が映った。どうやら、久保田管理官の部屋のようだ。
「大文字さん。Tick Tackの動画が出てから、『女性だけが狙われるのか、EITOは防ぎ切れるのか?』って言う声が大きいの。是非何とか事件を解決して欲しいの。」
市橋総理に向かって、伝子は言った。「本命は、あなたです。他の人が狙われても、それは陽動だ。」
皆、一様に頷いた。市橋早苗総理は、日本初の女性総理で、副総理や副総裁は役目が違う為、唯一無二、正に『女だけ』の存在だ。
なぎさは、慌てて市橋総理の名前をホワイトボードに追加した。
総理の依頼がホワイトボードに書き込まれた後も、会議は続いた。
稲森の案の『コンパニオン』も追加された。
基本的に何らかのコンパニオンは、女性だ。
日向の『コンシェルジュ』という案は、ターゲットが絞り難い、ということで却下された。
午前11時半。
久保田管理官が、一人の男を伴って、現れた。
「大文字君。君が朝イチで提言してくれた通り、取り敢えず、この3日間、映画、テレビ、AV、グラビア撮影会、ファッションショーの撮影等は中止させておいた。」
「ありがとうございます。」と、伝子は頭を下げた。
「紹介しよう。潜入捜査官の原田正三警部だ。」
「こんにちは、原田です。新宿歌舞伎町で反社の動向管理をしています。」
「公安のようなもの、ですか?」と、結城が尋ねた。
「んん。まあ、そんなモンかな。風俗の公安かな?」と、原田は応えた。
「歌舞伎町と言えば、風俗。風俗の取り締まりという名目だが、反社の抑止力にもなっている。DVとかを行われない限りは『自由恋愛』が建前だから、簡単にはしょっぴかない。ところで、その反社から泣きつかれた。最初は1人、2人という単位だったが、店ごと女の子がいなくなった。」
「拉致とか誘拐ですか?」と、伝子は原田に尋ねた。
「うむ。那珂国系の店がいつの間にか半数以上になっている。今の総理が外国人土地売買規制法修正法案と通してくれたお陰で歯止めはかかったものの、すっかり食い物にされている。先月、抜けようとした者が惨殺された。臓器の多くを抜かれてな。奴らは、そのマフィアは、人身売買だけでなく、臓器売買を扱っているらしい。那珂国本土では、もう何年も行われている大きな犯罪だが、日本にも上陸してきた、という訳だ。」
「それで?私には、オクトパスらしくない犯罪に見えるが。」という伝子に、「私も別口ではないかと思う。もし、ダークレインボーの配下なら、あんたらの闘争に参加している筈だ。それで、反社は、その組織『アナザーストーム』と明日取引をするが、金も女の子も返ってこない、と思っている。何せメンバーは10人しかいない。相手は何人がかりか分からない。」
「ヤクザもレンタル時代と聞いたが、しょぼい組織になったものだな。で、私たちに手伝えと?闘争を。」
「そういうことになるな。オクトパスが言う、『女だけ』条件には当てはまるが、別口なら、放置するかね?」
ブザーが鳴り、司令室から、通信が入った。
「秘密基地から通信です。ディスプレイを切り替えます。」と、スピーカーを通して河野事務官が言った。
画面には、秘密基地の高遠と本郷隼人が映っている。
「アンバサダー。高遠さんとアンバサダーの勘は当たっていました。オクトパスのTick Tackのメッセージの後の数秒間、長波のメッセージが入っていました。『スペクトル分析』して、文字起こしをして、デジタル音声に変換しました。聞いて下さい。」と、本郷隼人は言った。
 

ストームの取引は明日午後3時。同じ時間のこちらの作戦とは関係ないからね。ちゃんと解析してくれよ、エーアイ君。

 
「よし、決まった。原田さん、明日の、反社とアナザーストームの取引には、EITOが参入、平定します。理事官。はとバスの運行は当該午後3時を含めた数時間の運行を停止、都内、いや、都下の海女さんには臨時休業、飛行機及び新幹線は遅延または欠航させて下さい。ウーマン銭湯も臨時休業、総理のSPは強化をお願いします。」
「凄いな、あんたとこの親分は。」と、原田が筒井に言うと、「ああ。反社も半グレも元殺人犯も味方につけてしまう女だ。因みに、俺は元カレだ。」
「なんだか分からないが、奴らに朗報を伝えよう。」原田が行きかけるのを伝子は、「ああ。原田さん。ヤクザ屋さんには、野球のユニフォームを着るよう指示して下さい。」と言った。
「明日は、彼らのレクレーションの野球の練習試合ですから。」「了解しました。」と原田はニッと笑って出て行った。
―完―

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?