#27 10ヵ月のスウェーデン留学を終えて
日本へ向かう長い飛行機の中でこれを書いています。数時間後には日本に着き、10ヶ月の留学生活、私の初めての長期海外滞在が区切りを迎えます。これまでを振り返って思うことをつらつらと最後の留学便りとして書いていきます。(最後にならないかもしれないけど笑)
留学であり、生活だった10ヶ月
渡航するまでイメージしていた、これまでずっと憧れだった留学生活は、授業や友だちとの交流、パーティーなど、イベントや「留学」の中で大切にされるものでいっぱいだった。海外に行きたい。留学をしたい。という思いがずっとあったからかもしれない。しかし、どこに行っても「生活」をすることは変わりはないと感じた。朝起きれないこともあるし、電気をつけっぱなしで寝てしまうこともある。美味しいご飯を食べると幸せになるし、部屋はしばらくすると汚れ、掃除をすると気持ちがいい。
どの国から来た友達と話していても、シャワーを浴びるのが面倒になってしまう気持ちは万国共通であったし、グラデーションはあれども、良いな、美味しいなという感情が出る時も似ている。風邪を引くときは引くし、悲しい気持ちになる時もある。友達と夜遅くまで話し込んでしまうし、いつだってそれはどちらでも良いような、でもその時の私たちにとっては大切な話題だ。
文化の差を感じることはよくあったが、同じように似ている部分、同じ部分もたくさん見つけられた。日本とスウェーデンの差はどんなところ?とたくさん聞かれたが、違うといえば違うけれど全く違うわけではないとまとめることしか出来ない。
ファッションやメイク、聞いている音楽から、食べるもの、バスの乗り方もジェスチャーも、どんな教育を受けてきて、どんな学校行事、地域の行事があったかも全然違う。けれど、あまり仲良くない人と街で会った時の気まずさは同じらしいし、列の順番待ちを破ることには厳しい。(これは特に日本とスウェーデンが似ていると思う)日本と大体同じものが会社は違えどお店には売っているし、同じようなサービスが普及している。コロナの話をすると同じような経験をした人が世界中にいたことを感じる。
留学に行っても変わらない自分
想像よりも今までと変わらないことが多かった留学生活の中で、留学をしても変わらない自分にもたくさん向き合った。人が変わるのはとっても難しいと感じた。
環境や生活が大きく変わったために変化したと思う部分もある。今まで大学に行き、アルバイトをし、サークルや学生団体での活動をしたり、友達と遊んだり、という日々から、人間関係を1から始め、住む場所も行くところも全て新しい環境に行くのだから当然ではあると思う。時間の用途が大きく変わった。
自分で予定を決めることが多くなったため、何をやりたいのかを自分に聞くことが多くなった。自分自身の”好き”や “やってみたい”に耳を傾けられることが多かった。絵を描いてみたり、こうやってnoteを書いてみたり、日記をつけたり、大学とは別に興味を持った勉強を始めてみたり、お菓子作りをしたり、友達と遊ぶ計画を立てたりした。勉強に集中する時間も増え、授業数も少なかったため、自分の興味のある勉強を深めることができたと思う。もっと勉強したい、もっとここを知りたい。と思えるようになった。
英語力が伸びたことも実感できている。去年の8月には一つ一つ考えて、翻訳を使って、確認をして返していた友達とのチャットも、寝起きでぼーっとしながらでも返せるようになった。電話越しに話すことにも緊張していたが、全く躊躇いなく電話越しに会話をして笑えるようになった。話した方がいい!英語向上のために!と思っていたが、今は話したい時、疑問に思った時に何ともなく言葉を出せるようになった。わからない箇所を聞き返せるようになったし、自分の話したいことをほとんど伝えられるようにはなった。まだ詰まるし、早い会話や専門的な内容、日本語でも分からないものの話にはついていけないことがたくさんあるし、100%伝えられているわけではないけどね。まだまだ!と思うこともたくさんあるのでこれからも英語の勉強は継続です。TOEICも7月末に受ける予定だしね。
反対に変わらなかった自分。
留学中にこれからの進路の方向性を固めたいと思っていたけれど、まだまだ自分自身について分からない部分が多いし、”留学に行くと価値観が変わる”と留学前聞いていた言葉は嘘ではないけれど180°変わるわけではなかった。視野は広がると思うが、これまで積み重ねてきた自分のいいな、嫌だなは中々変わるものではなかった。他人を軸にして生きる自分やはっきり主張ができない、決められないところも変わらなかった。自分を軸に行動をして決断をしている人にとても憧れるし、そうなりたいとずっと思っていたけれど、これは変わることがないんだろうなと思う。自分と向き合う時間が多かった分、潜在的に、他の人を軸にして、周りを考えながら行動をしていることにたくさん気付かされた。でもそれはきっと悪いことじゃない。そんな自分も受け入れながら、いつまでも変わりたいと思いながら変われない自分と一緒に頑張っていけばいいんじゃないかなと思えるようになった。
10か月間でもらったもの
素敵な人達に出会った。こんな人みたいになりたい、こんな風に生きていきたいと思うような人にも出会った。
そんな人たちにたくさんの温かい言葉ももらった。あなたならできる。きっと大丈夫。すぐにネガティブになりがちな私に周りの人がたくさんの励ましをくれた。
優しい人達にたくさん出会った。受け入れてもらう側であり、何もかもが新しい生活だったからこそ、何度も何度も助けてもらったし、スウェーデンのことを教えてもらった。
他の留学生も、温かく、そしてかっこいい人たちだった。すぐに会えるわけではないけれど、世界のどこかであの人が違う生活を送っている、と思うだけでどこか勇気が湧いてくる。
スウェーデンはどんな国だったのか
日本で聞くスウェーデンと留学をしながら見るスウェーデンには違いもあった。日本では、様々な媒体でスウェーデンが良い例として紹介されることが多かった。だから私も興味を持っていたし、魅力を感じたし、そうではない側面を見てみたいと思った。実際どうだったのか。
大きな主語
移民の受け入れに寛容な(過去形になりつつあるけれど)スウェーデンでは、街で様々な人種、民族の人を見かけた。大学でも、スウェーデンのほかにルーツが違う国にある人達と多く出会った。出身を聞くと、紛争のニュースで聞いたことがある国が返事として返ってくることも何度もあった。今までは遠い国の話であったけれど、実際に影響を受け、スウェーデンにいる人と会うと、とても身近になった。でもその紛争がなければ、今私がこうして会うこともなかったのか。とも思ったりする。国際政治の上の問題が、私の友達に関わる問題になったのは大きい。
”多様な人々が共生している"面ももちろんあった。移民の人向けに語学学校は無料で開かれているし、既定の年数働くことができれば年金ももらえる。海外ルーツの人の多さのためか、様々な種類のレストランがあり、スーパーがある。しかし、分離(segregation)が起きている というのも生活の中で感じた。ここはスウェーデン人じゃない人が多く住んでいてあまり治安がよくない地区、ここはスウェーデン人が多く住んでいる地区などと地区ごとに住む人が違うことを目にした。大学では、海外にルーツを持つ人同士やスウェーデンにルーツを持つ人同士で仲が良い印象を持った。もちろん例外もたくさん見たけれど。
この現象に対して悪いとは思っていない。移民が多い国ではこんなことが起きることもあるのか、と驚いた。同じルーツを持つ人同士、何となく近しい感情を覚えたり、共通の文化を見つけやすいことはよく理解できるし、自分自身、アジア出身の人というだけで少し親近感が湧いた。
ただ、この分離が、偏見や対立につながることがあるのかもしれない。
社会保障にかける税金が大きい分、移民が増えることで、社会保障費の分配が減ってしまうことに対して、不満を持つ人も多いようだ。移民受け入れに否定的な極右政党が前回の議会選挙で議席を伸ばしている。(直近のEU議会選挙では極右政党が他のヨーロッパ各国とは異なり、伸び悩んでいた。)
中東出身であると言うといい顔をされないという話も聞いたことがある。
できるだけ小さな主語で相手を見るようにしたいと思った。女性は、日本人は、大人は、学生は。一つに括ってしまった方が話しやすいし、分かりやすい。けれど、その大きな主語で分かりやすくしてしまった時、そうではない1人をとても見つけにくくなってしまう。相手がそうではないと思っていた時に、知らない間に傷つけてしまうことになる。ここまでの文章でもたくさん大きな主語を使ってきてしまっているが、どんな意図でその言葉を使っているか、真摯に向き合っていきたいと思う。まだまだ練習中です。自分の発する言葉を大切に、そして言葉に対して正直でいたい。
リサイクルシステムーpantー
スウェーデンでは、缶・ペットボトルのデポジット制度があり、缶・ペットボトルを主にスーパーにある回収所に持っていくと、容器代の返還としてスーパーで使えるお金が返金されるというものがある。1984年からアルミ缶、1994年からペットボトルの回収を始めていたそうだ。この制度をPantと呼んでいる。(参考:https://sweden.se/climate/sustainability/swedish-recycling-and-beyond)
ペットボトルや缶の飲料水に対して、それ相応のお金を払って、デポジットを使い容器代を返してもらう。という仕組みが20年以上前から出来上がっていることにとても驚いた。スーパーでの容器回収は日本で広く行われているが、どの程度の人がそれを習慣とできているのか、意識に頼るだけでは達成されない、何か動機づけが必要であるということも考えた。
Pantのシステムを利用し、お金を稼いでいるホームレスの人もたくさん見た。大学の図書館にいると、ゴミ箱の中に缶やペットボトルがないかを探し、袋に入れて持ち帰る人や、座っている人に声をかけ、缶を持っていないか尋ねている姿をよく見かけた。街中でも、家の近くのゴミ捨て場でも、自転車にいっぱいの缶とペットボトルを載せて走る姿を見かけた。
その姿を見てもあまり友達と話題にすることもなかった。次第に見てもあまり不思議に思わなくなった。
これも想像していたスウェーデンとは違った姿だった。
あくまでこれらは私が10ヵ月間の留学生として見た姿であり、1週間の滞在で持つ印象や、10年滞在した時に見る姿もまた違うと思う。また、スウェーデン語が理解できなかったため、自分に入ってくる情報はとても限られていたと思う。知りたいことや気になったことのみを理解していた。まだ、日本のことを全て知らないように、知らないことがたくさんある。
留学便りの最後に
今回自分がカールスタード大学に二学期分の留学をするという決断をしたことを本当に良かったと思っている。
飛行機で書き始めたのに、気づくとカールスタードを発ってから1週間が経とうとしていた。日本の生活にびっくりするくらい早く馴染んでしまったため、自分が1週間前にスウェーデンで生活をしていたことが夢であったのかとさえ思えてしまう。でもふとした瞬間、コンセントのプラグを差し込む時に変換プラグを探してしまう。みたいな癖が、あれは夢じゃなかったよと教えてくれる。
スウェーデンで出会った人、日本から送り出してくれた人たくさんの人に支えられた留学生活でした。留学を機に初めてnoteを書いてみて、note読んでいるよ、楽しみにしているよという声がとても嬉しく、noteを書くこともとても楽しく、自分の振り返りにもなっていたと感じています。今後は気分で更新するかもしれないし、しないかもしれませんが、ここまで読んで下さり、ありがとうございました😊