完璧な引継ぎなど存在しない
今年初めての転職を経験した。
転職活動は大きく分けて2つあると思っている。転職先を見つけるための活動と現職に退職の申し入れを行う活動だ。前者に関してはたくさんのノウハウが調べればネットに挙がっており私も参考にさせていただいた。
しかし転職活動をするうえで、私が一番しんどい思いをしたのは後者の方だった。単純に退職を申し入れるだけでは?と私も思っていたが実際は複雑で最終出社日まで耐えながら乗り切ることになった。
会社の状況やその人自身の気持ちのあり方など人それぞれであることは承知の上で、退職の申し入れから退社までに意識するべきことをまとめてみようと思う。
今回の記事では、自社や得意先の後先を考え辞めにくいと感じている人、転職をすることに後ろめたさを感じている人が主な対象となる。
優しすぎは毒
結論からいうと、当たり前に思う人もいるかもしれないが、会社の責任を個人が背負う必要は全くもってなし。優しすぎる必要はなくドライになるべきだ。
記載するにあたり私の経験談をお話しさせていただきたい。
私が元いた会社は業績不振で連続赤字が続いていた。人の入れ替えが多い業界ではあるものの、会社に反発する人も後を絶たず退職者が相次いでおり、また退職者の穴を補填しようと業務過多に陥り体調を崩す人も少なくなかった。
大きい会社ではなかったため人手不足は大きな問題の一つで組織崩壊の始まりともいえる負のスパイラルが続いていた。
私も同僚も口には出さないが頭の片隅に転職を考えながら仕事をしており、知らないうちに誰かが辞めているということが水面下で起こっていた。
とかいう私も退職したタイミングで3人ほど同じ時期に退職者が出ていた。
私の転職理由は様々あるのだが、一番の理由は新しいことに挑戦したいという思いが強かったことだ。
当時の会社ではリソースが足りなかっただけで、仕事や会社が特に嫌いだったかといわれるとそうではない。むしろ会社には感謝しているし、仕事もやりがいと誇りをもって取り組んでいた。
それだけに退職の申し入れはきつく、気まずいものがあった。
当然ながら会社から引き止めがある。私にいてほしいというよりも仕事が更に忙しくなるため残ってほしいというニュアンスだ。
私の決意は固まっており、会社に残るという選択肢はもちろんなし。退職の意思が固まったことを上長や役員に伝えてから嫌がらせが始まった。
退職を受け入れる姿勢を見せない会社
会社は人員が不足しているため、引継ぎ先が見つからないという理由で引継ぎをさせずスケジュールを引っ張る。
分かるように態度が冷たい。
事業部から労務部に話をかけあってもらえず話が進まない。
退職の承認をもらえず未決定の時期が3週間も続く。
会社の判断で得意先に退職の挨拶もさせてもらえない。
結局、私は労務部に直接かけあい、事情を説明し強引に退職するという手段をとった。社員に権利があるため、辞めることは無事できたが後輩や得意先に多大な迷惑をかけたこと、私自身も気を悪くした時間を1か月ほど過ごした。
長々とお話ししてきたが、仕事熱心な自責思考が強い人ほど陥りやすい罠だと思っている。この経験から学んだマインドの持ち方と対処の仕方をお伝えしたい。
退職時のマインドセット
ドライになる
会社、得意先への感謝や貢献、転職することの心苦しさなど様々な気持ちが入りまじり冷静な判断がしにくいとは思うが、仕事と割り切りドライな姿勢で組織と向き合うことが大事だ。
ビジネスも人と人がやり取りする場であり、気持ちを慮ったり感情が入ってしまうこともあるが自分が損してまで優しい人である必要はない。
責任の範囲を見誤り過ぎない
個人と会社の線引きができているかを再確認してほしい。
視座高く仕事に臨んでいる人ほど無意識に個人と会社の責任のすみわけが出来ていないことがある。
人員不足で引継ぎがいないのは組織の問題であり個人が責任を負うことはない。人が足りずビジネスが縮小するならそれまでなんだと肝に銘じるべきなのだ。
完璧な引継ぎなどない
引継ぎを完璧に終わらそうなど思わないことだ。
マニュアルをまとめるのは大事であるが実戦経験から学ぶことのほうが圧倒的に多い。マニュアルだけで完結できるものではないと思っている。最低でも3か月は実戦経験を積みながら引継ぎをしていくことがベターだ。
また、あらゆる事象に正解はなく引き継ぐ側が分からないこともたくさんある。そのため引継ぎにおいて完璧はないのだ。
あなたの代わりはいくらでもいる
残念な話だがあなたがいなくても会社や社会は回るようにできている。
時に人は他人を一般化し、なぜか自分を特殊扱いしがちな生き物なのだ。自分にしかできない付加価値を作るのはごもっともだが大抵のことはあなたである必要はないようにマニュアル化されている。
円満退社に近づけるために
引継ぎはしっかり行う
退職時に自分を守るマインドセットをお話ししてきたが、大前提の話をしておきたい。
それは謙虚に引継ぎを行うことだ。引継ぎ先がいないのであれば粛々とマニュアルを製作しておこう。社員の権利が強いとはいえ、引継ぎができていないことによる損害を社員の責任に値することもある。退職するからあとは知らないという態度はあってはならない。
就業規則を確認できているか
会社の規定は確認できているかもう一度入社時に確認したであろう就業規則は読んでおくべきで時に自分を守ることにつながる。
退職の申し入れは退職前〇日までに伝えるなどルールは把握しておこう。後々会社にいろいろ言われないためにも自分の身は自分で守るように意識しておこう。
上司に引継ぎスケジュールを提案する
引継ぎをスケジュールをこちらから提案するのだ。このタイミングで5割ほどマニュアルができていることが望ましい。辞める人に無関心な上司であった場合、こちらから働きかけることは有利に進めることができるはずだ。
おわりに
私の経験談をもとに苦しい思いをする人を少なくしたい。
私の場合は労務の人は客観的な立場で物事を言える人でありその人に相談できたことでつらい時期も乗り切れた部分はあった。見方がいなければ一人転職で戦う羽目になっていたと思う。
考えたところで1か月もすれば過去の人になるだろう。だれかがあなたの後釜で役をこなし会社はなるように回っていくのだ。せっかく新しいステージで期待が高鳴るなかであなたは前を向いて歩んでいってほしい。
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