自治体内弁護士のススメ

第1 きっかけ及びこのノートの趣旨

このノートでは、地方自治体にて任期付公務員(弁護士)―自治体内弁護士の経験談を記載していきます。
このノートをはじめたきっかけとしては、
・自分の備忘録・検討メモを残す、棚卸すること
・自治体内弁護士の職務の紹介し、任用を促進すること
にあります。
方針としては、よくある相談事例を抽出し、裁判例や相談対応例を紹介していきたいと考えています。

第2 主な職務内容

自治体内弁護士は、おそらくもう10年ほど前からはじまったものかと思いますが、自治体の規模によって職務内容が異なっているかと思います。
私が任用(=ほぼ採用と同じ意味です)された自治体は小規模なところなので、主に小規模自治体の法務についてお話します。

1 法律相談

小規模自治体では法律相談対応が8、9割の業務を占めます。
「印紙税はどうすればいいですか」といった契約の形式面から、「行政処分を行うにあたっての手続きや事実認定をどう行っていくか」といった行政法っぽいものまで様々です。
法律相談の対応については、今後、各記事のなかで紹介していきます。

2 行政不服審査への対応

大規模な自治体では、行政不服審査対応が年に数件以上あるのに対して、小規模な自治体では年一件あるかないかというところです。
関わり方としても、審理員、処分庁、行政不服審査会事務局とさまざまですが、自治体によるミニ裁判が行われるに等しく、一般職員のみ対応では困難なため、内部弁護士がサポートします。

3 例規審査

これは行政に特徴的な業務になりますが、補助金や各種委員会の設置等のために、条例、規則、要綱等(例規)を策定します。
たとえば、原課から「こういう政策のために、このような補助金を出したいから要綱を新規制定したい」というとき、要綱は民法上、定型約款(民法第548条の2)による贈与契約となる(私見)ので、補助対象、補助の方法、返還の定め等をきちっと定める必要があるので、これらを審査することになります。
このように話すと、かなりクリエイティブな業務のように感じられますが、実際は、国の制度改正にあわせて自治体側も改正するといったものが大半です。ただし、このような場合も「改め文」を作成しなければならず、その対応をすることになります。
「改め文」の作成自体は職員でも対応できる内容かと思いますが、新規制定で補助金を出す、委員会の規約を制定するといった場合には、弁護士のサポートが必要と感じています。

4 情報開示

個人情報開示請求や公文書開示請求への対応も弁護士が関与している自治体が多いかと思います。
住民に対応するなかで知りたい情報や見たい文書を特定していき、特定した文書のなかに非開示とすべき部分がないかを検討するというものです。
プライバシーとは何ぞや…と考えるきっかけになる仕事です。

5 訴訟等への対応

これも、小規模自治体ではほぼない業務です。
定型的な案件としては公営住宅関係がありますが、基本的に雑多です。住民訴訟・監査請求もごくまれにあります。

6 その他の業務

その他の業務としては、たとえば、顧問弁護士への報酬の支払い事務、選挙時のお手伝い、不当要求対応、各種事務局等があります。かかわり方によっては、税、社会福祉、学校、消防、幼稚園・保育園、債権管理といった分野に精通していくことも可能かと思います。

第3 終わりに

自治体内弁護士は、こんなの実務では使わないだろうと思っていたような知識を使う場面が多く、法律が好きという人には向いている業務かと思います。
このノートでは、自治体内弁護士を検討している人には職務の具体的なイメージをもってもらえるように、現在自治体内弁護士として任用されている人には検討の参考になるように、自治体側には弁護士をこのように使えるのかと知ってもらえるように、そのような契機になれば幸いです。

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