日常の暮らしの中で…
私の日常には、これといって大きな変化はない。
日本茶を飲みながら蜜柑を食べたりしてる。仕事で仕方なく都心へ出掛けなければならない時もある。それ以外は、下町で慎ましく暮らしてる。
高次脳機能障害により母が寝たきりだから、介護もしてる。実家に泊まることもある。夜中に母が「のどが渇いた」と言うから、暗い室内を歩いて、水差しで飲ませている。「ありがとう」と言ったきり母はまた眠る。
自転車のタイヤに空気を入れたり、食事の後片付けをしたり、たまたまバーゲンで安かった洗剤を使い溜まった洗濯物を洗濯したり、近所のスーパーでお米を買ったりして、気がつけば日曜も夕方になっている。
決まってそんな時に仲間たちから電話がある。電話に出るたび私はたいてい驚いたり呆れたりする。仲間の突飛な発言についていくのが大変。精神障害者で病んでいるからそれも仕方ないのだと分かっている。だがこちらも精神疾患なんだから、あんまりビックリさせないでほしい。
時間が余るとテーブルでブログを読む。私は健康な人の健やかなブログが好みで、ひとり笑ったりしてる。そのブログは破天荒とは正反対で、律儀ではあるけど、どこかおかしみがある。昔のゲームセンターのことなんかが書いてある。
変わらない私の暮らし…季節の大幅な変化もない。トイレに入って用をたす。湯呑み茶碗を撫でたりする。不意にふーっと溜め息をついてみて、彼女の帰りが遅いのに気づく。気づいても、物理的な変化はまるっきりないから、黙って椅子に座ったまま、湯呑み茶碗にまたお茶をいれる。
サービス狂の彼女は、私には優しくしてくれる。病んでいて、症状はさほど重くない。ただ何かの折りに、突然キレたりする。びっくりする。出し抜けに冷蔵庫を足で蹴る。しばらくして、彼女は、泣く。そして私にまた優しくしてくれて、「ごめんなさい。こんなはずじゃなかったの」と独り言を口にしてる。いつものことだから、私はもう慣れている。「悔しいのよ、あたし。だってさ…」また泣いている。
こんな風に、賑やかな周囲が、私をちょこっと翻弄する。笑い上戸の私は、あまり喋らない。周りの乱痴気騒ぎに、戸惑っているだけだ。異常を異常と認識しない周りが、たまに憐れだと私は思う。