狂気の貴女の居場所なら確保する。
歌もなければ本もない貴女の居場所なら、私が確保するだろう。
「この世で、最も恐ろしい愛の物語です」
マルグリット・デュラスはそう言った。
よろしい、結構だと私は作家に応えたい。
こんな非情な茶番は、もう馴れてる。
若い頃から私は必要以上に不敵だったし、自尊心なら天を突き落とすに充分だった。
貴子ちゃん、自殺なんかしちゃいけない。
貴女の入院なら、私が全力で阻むだろう。
貴子ちゃん、イタリア帰りの私が眩しかったのか?
淋しかったのか?
気が狂いそうで、狂ったりもしたのか?
私たち、やり直そう。
時間をかけて、やり直そう。
いいかな、貴子ちゃん、恋に於いては、こういうことって、ありがちなんだよ。
苦しかったね、苦しいね。
貴女の居場所は、私だよ。
泣いちゃいけない、貴子ちゃん。
病気は、ゆっくり、回復する。
私がそれを保証する。
今度、一緒に、歌を唄おう。
私たちの歌を唄おう。
都内でNo.1になろう。
今日ね、レイモンド・カーヴァーの本が、5冊、私に届いたんだよ。
一緒に、読もう。