ヒナドレミのコーヒーブレイク 全力で遊ぶ!!
夏の暑さから解放されてホッとすると同時に、どうしようもないもの悲しさと気怠さが襲ってきた。ピンと張りつめていたものが一気に緩んでしまったような脱力感。ベッドから起き上がるのも億劫だし、起き上がっても 立つのが億劫だった。
10月初旬のある平日のこと。頭上には 雲一つない青空が広がり、清々しい朝だった。屋外には 通学路を行く小学生の 無邪気な声が響いている。元気だなぁ、オレにも、こんな時があったのだろうか?変わってしまった現在の自分に向かって「大人になれば、皆 こんなもんさ」と呟く。そう言ってしまえば それまでだったが。
(あの頃は、こんなオレになるとは 思いもしなかったな)と当時を振り返って苦笑した。「将来の夢は?」と聞かれると決まって「宇宙飛行士」と答えていた。だが、現実には 夢とは かけ離れた道に進んでいった。「夢は、夢のままの方が美しい」などと 詭弁を弄していた.
夢を叶えることが出来たのなら、新たな夢を作ればいいし、そもそも 夢は一つである必要はない。単純なことだが、それが分からなかった。いや、分かってはいたが、分からないフリをしていた。いつから変わってしまったのだろう?
私は 大人になるにつれて 狡く 打算的な人間になってしまった。そんな自分が たまらなく嫌になることもしばしばだった。しかし だからと言って、それを変えようともしない。どうしたら変えることが出来るのか、考えようともしなかった。
何事もなく 一日を終えることが出来れば、それで良かった。特別に 楽しいことや嬉しいことがなくても、悲しいことや辛いことがなければそれでいい、そう思って生きてきた。時々、物足りなさや 虚無感に支配されはしたが。
ある時 私は思った。「今日 一日 全力で生きてみよう!」後になって考えてみても、この時 何故そう思ったのかは謎だった。そして私は 朝5時に起き、近くの公園まで散歩に出かけた。途中、少し走ってみたが、すぐに息が上がってしまったので 歩きに戻した。公園に着くと、少し汗ばんではいたが、不思議と不快感はなく 爽快感があった。公園は小さいが、大きな滑り台があった。辺りを見回しても、誰もいない。そこで私は、その滑り台の上に立ち、遠くを見回し、その後 滑り台に腰を下ろし滑った。心地よい風に当たりながら、一回、もう一回と滑る。そして次はブランコ、鉄棒、砂場・・・と公園内の遊具で一通り遊んだ。
その時の私は 童心に帰っていた。周りの目など気にしていなかった。そう、今日は全力で生きると決めたのだから、遊ぶことにも全力を出さないと。1時間後、私は 心地よい疲れの中、公園を後にした。(全力で遊ぶのも疲れるものだな)
完