#24 ヘルシンキ、どうしよう住みたいかもしれん(旅行記)
9月のはじめにホリデーをもらい、ヘルシンキへ旅行した。
北欧の国へゆくのは人生で初めてのことだった。
北欧のライフスタイルだとか、デザインみたいなものは日本でもとても人気がある。
けれどもわたし個人としてはあまり興味を持っていなかった。
それはおそらく、日本にもたらされているアート、ロハス、スローライフ、てきな北欧のイメージに自分自身があまり迎合できていなかったから。
いま思えば、わたし自身が田舎出身であるというところも理由としてあるかもしれない。
どちらかというと都市から生み出されるもののほうに心が惹かれていたし、憧れていたし、自然のゆたかなところから生み出されるものに対して、なんというか気恥ずかしさやむずかゆさを感じていたからだとおもう。
わたしの地元も北欧の雰囲気に似ているだのなんだのと姉妹都市でもないのに勝手に盛りあがっていて、そのことへの反発心も天邪鬼に拍車をかけていた。
さて、そんなわたしがヘルシンキへの旅行を決めたのは、予定していたイスラエルへの旅行が安全状況や物価の面からむずかしいと感じたからだった。
それじゃあどこへ行こうかとワーホリ中に行ってみたかった場所のリストを眺めて、アアルトの建築を見たかったことをおもいだした。
そして結論から言って、ヘルシンキはとてもよかった。
なによりもよかったのが、その静けさだった。
ヘルシンキはフィンランドの首都だから、もちろん国内ではもっとも人が多い場所ということになる。
それでも、人口は65万人ほどというから札幌なんかよりもよっぽど小さい。
繁華街なんかはやはり人はいるけれど、そこまで騒がしくなく、むしろ郊外や幹線道路のほうが車が多くて少しノイジーなかんじがした。
湖のあるあたりなんかは、たしかに地元に似ていなくも、ない。
とくによかった場所はアアルトの自邸があるあたり。エリアとしてはMunkkiniemiというところにあたる。
自然ゆたかで穏やかな住宅街は、市内中心部からもそれほど遠くなく、住むにはきっとよいところなんだろうと想像する。
そして、住んでみたいと感じた。
ほどよい利便性と静けさをあわせ持っているヘルシンキという街は、わたしにとってとても魅力的におもえた。
知らずのうちに地元のようなバイブスを求めてしまっていた自分がなんだか少し恥ずかしくもあり、合点のいくところでもあり。
実際の生活はどうなるだろう。
たいてい英語が通じるから買い物なんかは困らないだろう。
物価は高いからビールを外で飲める機会は少ないかも。
おしゃれな服屋も多いからそこは満足できそう、でも冬はどうなるのかちょっと想像がつかない。
路面電車やバスの中も静か、厄介なティーネイジャーもいない。ダブリンの中心部にはないおだやかさがある。
もう少しヨーロッパに住んでみたいという思い、そして、日本とフィンランドのあいだのワーキングホリデーがこの8月にはじまったことも、そう考える理由になっている。
人数制限もなく、申請に必要な残高もたぶんクリアしている。行けなくはない。
とはいえ、英語もままならずフィンランド語にいたってはDuolingoで勉強し始めたばかりとかいう0歳児レベルで、この地で仕事を見つけて働くことは現実的ではなく、そこがいちばんのネックになっている。
次に住まう国の選択肢を、自分自身がもとめる住環境を、思いがけず見つけてしまった旅行だった。