連作掌編小説シリーズ「砂とシュラ王」
終わらない夏の童心の日々。子供の頃の思い出は、蝉の抜け殻を集めていた。
秋の日には自然や文化に親しみ。
冬の空の下で黙々と雪だるまを作る。
あそびの最中、砂山に木の枝を立て、集まった皆で砂を取り合う。
砂つぶ一粒が、たとえば十円だったのなら。
一握りの砂が、子供の手には宝の山にも見えたのだ。
ーーー蝉がどこかで鳴いていた。
″はたらけど はたらけど猶 わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る″
石川啄木の″一握の砂″という詩集に収められた歌の一つだ。
大人になりややもすれば、純真無垢な幼少期からは多少擦れていく。
それは僕とて、例外ではなく。
春眠暁を覚えずとて、常日頃眠り子の如くあれば即ち、いついかなる時も春には違いないのか……。
机の上、飲み物の入ったグラスの隣に目をやる。
「銀の王冠はサイダーの王冠。甘く、爽やかで、恋の味。金の王冠はビールの王冠。ほろ苦く、芳醇で、大人の味。僕らは皆、恋をして大人になる。」
昨晩ノートに記した歌には、恋愛の詩が歌われていた。
今ではもう、よくわからないが。
街に出ると、いつしか公園も砂場も減っていった。
苦難の道もあったが、僕に残されたのはただ、良心的な真実だ。
″コインを弾け、可能性にベットしろ。″
″幸いなことに、この世には起こり得ることしか起きようがない。″
″君の持ち得るリソースを何に使う?″
人生とは即ち、できる範囲での行動と目的とその結果に違いない。
……心のなかの修羅は叫ぶ。
″他者より強く、他者より優れ、他者を圧倒しろ。そうすれば、漏れなくすべてが滅び去るだろう。″
「あぁ、僕はそんなことはしたくないのです。人は愛を紡ぐ生き物です。」
そうして″私″が生まれました。
砂とシュラ王・1
〜時の王、天の王、終わりの王。
そして秩序という混沌より〜