「砂とシュラ王・2」
″僕に聞こえる運命の音色は、穏やかな清流のようなんだ。そうして嵐のような衝撃が、時折り胸を締め付ける。″
巷ではロマンス詐欺が流行っていた。
トキコと出会ったのは、そんなくたびれた影が延びる頃だった。
捲し上げられた形の良いうなじに、ほっそりとした腰はまさに芍薬のようで、朝露に燦めくような萌芽の如きフェロモンは、彼女の健康的な細身の肉体を魅力的な曲線にしていた。
彼女の本名は、檜透子(ひのきときこ)というらしい。
ハツラツとして豊かな精神性と、くすぐるような童女の母性を併せ持つ、コケティッシュな大人の女性だ。
彼女はどういう訳か、ほのかに″透けている″。
まるで冗談のようだが、彼女は身につける物、手にした物すら部分的に、皆にも透けて見えるらしい。
朝日に輝く彼女の肢体を見れば、男たちは口々に、「まるで西欧の″妖精女神(ニンフ)″を彷彿とさせる。」と答えるだろう。
彼女が物を口に運ぶと、それはすべて果実の雫のように溶け消え、彼女の曲線を情気させる。
色のない彼女に溶けた飛沫(しぶき)は、瞳を潤ませ、肌を恍惚とさせる。
そんな精霊のような在り方の彼女には、たったひとつの願いがあるらしい。
トキコは自分を染めてくれる″色″が欲しいのだという。
彼女の手に握られた″砂″は宝石のように美しかった。
砂とシュラ王・2
〜鴇色の彼女〜
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