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掌編ファンタジー小説「異世界伝聞録」その20
“ものの本質はいつだって秩序立って整列されている。“
それは形無く。
見ることができず。
ただ知ることで在るマトリクス。
原質構造体。
ファラは目を開くとき、耳を澄ますとき、優しく語るとき、決まってマナが宿る。
それは誰しもある程度はそうだが、4年制とはいえ聖女に選ばれる子はマナの性質が静妙だ。
それはある種の霊性にも通ずる。
僕の詩での秩序化の解法のように。
それは原質的な構造を育むようで。
“天の性質“でもある。
多くの人はエレメントの性質を備えるが、
星と宇宙に通じているエレメントは万能だ。
例えば、先生が、泉で使った“さかづき“がある。
あれを最初に考えた人は、液体である水を、効率よく、一定に何回でも掬う為に、閃きで“設計“した。
それこそが“原質構造体(ロジックゴースト)“。
世界から秩序を組み上げる偉業。
例えば本がある。絵や文字が書いてある。それらは綴じてある。
開いて読むには知識という鍵が必要だ。
その鍵と、本という媒体と、本に書かれた内容は、紛れもなくロジックゴーストになる。
星の子ども。
僕たちはそう呼ばれて育てられた。
遠く永い異郷の星のエレメント。
そこからなる命の在り方と、時空の鍵。
僕は夜空を眺めて呟くのだ。
「今は何も要りません。もとより僕らに失うものはありませんが……。願うのならば、なにが理想であるか。僕には毎日、日が昇り、風が吹き、雨が上がり虹がかかって……そんな当たり前があることが、どうしようもなく愛おしい。」
読みかけの本でも捲ろうか……。
きっとそこには、僕より多くの“人生(ものがたり)“が、広がっているだろうからね。
僕は夜空に星座をみつけて、お気に入りのレモン水をひと息煽ると、流れ星が流れるのをみた。
「今日。この星空に乾杯を!」
からりとなる氷に、余韻を傾けながら。
ーーー異世界伝聞録。
ある太陽の歌と星空の晩餐。
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