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「砂とシュラ王・5」

″天涯孤独と人は言うけれど。″

″超常の神も、自然神も、言葉としての神も。″

″そしてなにより私たちが観るこの世界も。″

″すべて始まりから離れ、各々が神であるとも言える。″

″それが個(=子:こ)。″

″で、あるなら……。″

ある日の夜……。報われない在宅仕事の終わりに無駄な時間を忘れながら、ふと、トキコに言葉を投げかける。

「なぁ、トキコ。」

トキコは、いつでも筆談する。

見えない、声すら聞けないというのは、人生を大いに損している。

僕は言うべきか迷ったが、打ち明けることにした。

「トキコは、″変なもの″は好きかい?」

″はい? 変なもの?″

トキコの透明になったスマホは、ライトの光る画面だけで文字として疑問を呈していた。

「僕はトキコと満足には喋れない。どこにいるかはよくわからないが、側に来ればとてもいい香りがするし、近づけば体温も感じる。肌に触れれば柔らかく滑らかで、歩く音も聞こえる。」

″それは……普通の範囲じゃない?″

「でも、トキコと君の周りは酷く澄んでいて、透明だ。普通とは、言い難い。そんな君を好きな僕は、きっと変わり者だ。君はそれを、変なものを好きになれるかい?」

途端。叩きつけるような硬い衝撃に痛みを覚えて目を丸くする。トキコのスマホだ。

ガチャ、バタンッ!

トキコはどうやら怒ったらしい。

彼女のスマホには、

″あなたは変じゃないし、賢く真面目だが、いわゆる大馬鹿だ💢“

彼女は相当ご立腹のようだが、なぜだろうか……。

彼女の言葉がうれしくて、僕の眼からは透明な雫がトキコの砂のように流れ落ちていた。
 
             砂とシュラ王・5
             〜時の涙〜


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ほづみわたる
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