自然界のふしぎ 3
ハチは刺す、蚊も刺す、ゴキブリやハエは汚い。
ごく一部の昆虫たちがイメージの低下にひと役買っているのだ。しかし、ハチ・蚊で刺すのは♀のみ、防衛のため・子孫を遺すためだ。ハエは現在、ウジ虫を食用に供すべく鋭意開発中だが、この成虫で大騒ぎになったことがある。
筆者はさる学習塾で講師を勤めていたことがあるが、ある教室で大きめの黒蠅が闖入してきて、生徒数人がそれを追っかけたのである。結果、黒蠅は取っつかまり、潰されたが、それで授業開始が十数分遅れた。
チョウはともかく、蛾もダメである。マイマイガなんていう気持ち悪いのもいるし。
このように昆虫に嫌悪感を抱くのは、特に若い層に見られるが、昆虫だって人間に嫌われるために振舞っているのではないと思う。
わがホーネットクラブには昆虫嫌いが皆無だと、ほぼ確信を持って言えるが、かつて仲間とともに出掛けた遠征先の山中でハエや虻、ブヨに絡まれるのはごく当たり前であった。昔、夕張岳の麓でキャンプしていたら、キクビカミキリモドキにテント内で接触し、真珠状のできものが皮膚にできたこともある。そのキクビが今、絶滅状態にあると言われている。
このように一歩自然界に足を踏み入れると、さまざまなハプニングに遭遇する。そこでは都会暮らしで忘れていた野趣に、イヤでも巻き込まれる。
昆虫は全世界で1㎥に平均で6千匹以上もいるという。体内の微生物ほどではないが夥しい数である。それとほどよくうまく付き合うことで人生の幅が広がると思うのだが。
もちろん、自分の好みに応じて採集をしてもいいわけだ。保護区のそれを除いては。
昆虫は生態系の一部である。「エコ」を自称するなら好きになってみよう。
「虫」の入るコトバ
日本語で「虫」を使った諺・成句をいくつか拾ってみましょう。
まずは
蓼(たで)食う虫も好き好き
人の好みはそれぞれ違うという意味です。
飛んで火に入る夏の虫
これは燈火採集をする人にはぴったりの諺ですね。
一寸の虫にも五分の魂
読んで字のごとし、です。同じ生を享けた身として、それこそ身につまされます。
虫の知らせ
第六感と関係ありそう。
虫が好かない
単純に言って嫌いということです。
虫の息
死ぬ直前でしょうか。
苦虫を噛み潰す
物事が思うように行かず、切歯扼腕(せっしやくわん)する様子です。
弱虫・泣き虫
これにはなりたくない。
また、「虫の居所」が悪いとこのようになります⇩
そのほかには
虫酸(むしず)が走る
虫がいい
蝶よ花よ
泣きっ面に蜂
などがあります。
この国では野山に行けばたくさん虫がいます。それを虫かごに入れて飼ったり、鳴く虫を愛でるという珍しい習慣を日本人は持っています。また、欧米人と日本人では鳴く虫の音を聴く脳の部位が違っていて、日本人では右脳だといわれています。情緒に働きかけるらしいのです。
「虫」の諺・成句が多いのも、日本人が古代から虫に親しんできたせいでしょう。
これを読んで腹の虫が収まりましたか?
「腹が立った」なんて人はいないでしょうが。