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第31回_第14回耽楽的楽曲紹介_Zeal&Ardor「GRIEF」(2024)

片倉洸一の耽楽的音声記録
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先月2年ぶりに発売されたZeal&Ardorの新アルバム感想を、おそらく日本最速で紹介。
前回彼らに(というかマニュエル・ガニューに)言及した記事はこちら。
https://note.com/brainy_azalea673/n/nf607a3f379d9?magazine_key=mdf46b8d32247

・片倉が追いかける数少ないグループ
・新アルバムまでの経緯―1~3作目のアルバムで大きな物語から小さな物語の並立になっていったという印象だったが…

曲別感想
1: the Bird, the Lion and the Wildkin
主語が集団的に(we、they、kin、ilkなどなど)。テーマも今回は統一的。
2:Fend you off
ヴェヴレンを思わせる人類史的な変遷「無数の者達が無数の方法で、我々が互いを忘れ、互いに忘れる方法」を試してきた。まさに平和愛好社会から略奪野蛮社会への変遷を連想。
3: kilonova
略奪野蛮社会の上での大爆発といえば…女王の首を載せる首を持ってこい、お前らも皆殺しだ…古いやり方で気分がいい!
4:Are you the only one now?
今度は自滅的な方向に。「燃えがらの後流に巻き込んで俺達を全て死なせてしまおう、レイズせずすべて失え、全ては善き事のため」
6:Clawing out
お得意の呪術的詠唱が炸裂。Justificatum malum factum(悪事の正当化)をしつつ目指すのは「果てなきものを見つける」ためらしいのがいかにも彼ららしい。
8:369
今回は後景化していた悪魔の示唆が全面的に行われる。「つまり、悪魔は死んでない」「我らは不浄な道にいる。戻れない」
9:Trill
テーマからやや外れて韻律をひたすらに重視した感じの曲。対象と主語の反転という今回特徴的な構成もあり。
10:une ville vide(語義不明)
ここでファンには安堵すら感じる電子音の響き。1stアルバムの間奏曲を思い出させる。
12:Solace
Z&A流の「慰め」は端が刃の様に鋭いロープ。
13:Hide in Shade
久々のメタル調。ここでも9曲目で見られた反転があり。ただしどちらにしても「我ら」に安住の地はないらしい。
14:to my ilk
最後は厳かに締めくくられる。一見神的、悪魔的存在と「我ら」の関係を歌ったようで、祖先と子孫と敵となる「They」の関係が扱われるあたりから、これまでの黒人奴隷的な物語、悪魔崇拝的な物語とは違った、古来からの部族社会の祖先崇拝や人類史の普遍性を言及したような方向性の違いを感じる。

・総評
正直、これまでのように刺さった曲はなかったが、グループの基軸は失われていないまま新たな方向性、テーマを模索する創意工夫、失望はしない新作だったので同時に安堵もできた。

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