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第36回_「セルバンテス短篇集」(牛島信明編訳)感想

片倉洸一の耽楽的音声記録
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キンモクセイの香りが漂い、異常な米価の値上がりに仰天する季節の感覚を少しでも留めるべく録音。

1:季節感
・買い物に奔走
・米価事情―7月購入時には品薄+去年の米が従来より1000円以上値上がり。今月は新米も入ったし値下がりしてるだろうと思えば…5㎏3000円台になるとは考えたくない。
・今年の主食は代替策を考える必要がありそうな予感
・キンモクセイが香る季節は過ごしやすい

2:第5回耽楽的即興感想「セルバンテス短編集」
・マーク・トウェインに続き、40前後で小説家デビューのセルバンテス
・セルバンテスのスペイン小説の祖としての自負―いかにしてスペインの「オリジナル」を生み出すか
私こそスペイン語で短篇小説を書いた最初の作家である。昨今、印刷されて出回っている多くの作品が、すべて外国語からの翻訳のごときものであるのに対して、ここにお目にかけるのは、決してまがいものではなければ剽窃でもない、自前のもの、つまりわが才知が胚胎し、わがペンが生みおとしたものだからである。
・牛島氏のセルバンテス作品の分類
A―イタリア文学の模倣が強く、従来作品の様式が強い
B―Aの様式を借りつつそれを乗り越えて近代小説的な要素が見受けられる。(理想と現実の描き方が共存)
C―社会や慣習の観察、批判、諷刺を描けている。(物語性は薄い)
牛島氏はロマンスとノベルの混合と近代的要素が見られるBを特に評価。

1作目「やきもちやきのエストレマドゥーラ人」
・元放蕩息子の資産家老人が10代の嫁をもらうものの異常に嫉妬深いために妻と使用人全員を閉じ込める要塞のような邸宅で生活。
・しかし理想の暮らしは外からの好奇心と内部の亀裂によってあえなく崩壊。
・内外からの崩壊で極限状態に追い詰められた老人は聖人じみた悔恨を告げてこの世を去る。
・末路としての修道院と外地

2作目「愚かな物好きの話」(「ドン・キホーテ」の作品内小説)
・作中で小説が読まれる間、肝心の遍歴の騎士主従は屋根裏部屋で熟睡。
・親友の貴族の息子2人の片割れ、アンセルモによる異常な試験―妻カミーラの貞節試したいから親友のロターリオに誘惑を頼む。ロターリオはガチ説教して諫めるがそれでも引かないアンセルモに折れて仕方なく…
・結局二人は不倫関係になり、3人は破滅いたしましたとさ。その過程が近代小説的で面白いわけでございます。

3作目「ガラスの学士」
・一方的な好意と毒によって知性と狂気が同居する狂人と化した元天才少年トマスの話。
・自分の体がガラスでできてるという妄想に憑りつかれた以外は「あらゆる難題に対し、的確な、しかも鋭い洞察に満ちた答えをするという知性」を持って自分に群がる人々と問答を続ける有名人に。
・小説というにはやたら本筋以外の要素が多い。―トマスのイタリア紀行、大半を占める群衆との問答集
・オチはまた外地行き

4作目
・おなじみ仲良しの貴族の息子2人組―放浪生活数年でマグロ漁場の混沌に惚れたカリアーソ、それに興味を持ったトマスが漁場に向かう道中の町の宿屋のとんでもない美人の皿洗い娘、コスタンサの噂にトマスが興味津々。一目見てベタぼれしたトマスの勢いに仕方なくカリアーソも一緒に宿屋に使用人として住み込みで働く事に。
・小説としての中心要素は皿洗い娘ではなく、宿屋を中心にした町の人々がサン様に入り乱れる生活描写。
・というわけなので割とどうでもいい本筋をネタバレ。―コスタンサの正体、その生誕の原因となったカリアーソの親父のとんでもない告白からの無理矢理すぎる大団円(一気に婚姻3組成約)に苦笑。
「奥さん、どうか大声をたてないで下さい。声をあげればあげるだけ、あなたの恥を世間にさらすことになるんですよ」
・親父のレ〇〇でめでたしめでたし、という貴種流離譚

3:セルバンテスから見るオリジナル―コピーの関係
【優れたオリジナルを創作するにはコピーの方法が重要である。】

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