希望のつくり方 2016/2023
この記事は2016年6月25日に長岡市で東京大学社会学研究所教授の玄田有史先生が講演された内容を僕の所感を含めながら再構成したものである。
希望について
希望とは実現の過程で期待をもてるもの。
まだ実現していないものの、いずれこうなるだろうと見通しを立てることに人間は喜びを見いだす。それは捕らぬ狸の皮算用で手に入るかできるかどうか分からないけれど、実現したら嬉しいなと期待を寄せることで将来への希望が生まれる。
農業に従事する高齢者が平均的に長生きなのも肉体労働に従事して体を動かす以外に、このように近い未来(作物が無事に成長して収穫できるのか)への希望を抱いているからではないのだろうか。
1.JAXAで宇宙飛行士の候補生を選ぶ仕事をする人の話。
宇宙飛行士になりたい人に対して最終面接でどんな質問をするのか?
「あなたは桃太郎になりたいですか?それとも浦島太郎になりたいですか?」
一般的に桃太郎は課題設定能力、課題遂行能力、チームワーク力、思いやりがあり、社会的に望ましいと思われる。
一方で浦島太郎は海でぶらぶらしているだけのニート。しかし、浦島太郎のその後には色々なパターンがある。
①おじいさんになって、ずっと海を眺め続けている。
②おじいさんになってどこかへ旅にでる。
③おじいさんになった後、龍の背中に乗ってどこかにいってしまう。
どのパターンでも一つだけ共通していることがある。
それは、竜宮城に行って、戻ってきたら村は様変わりしていて自分は老人になったとしても決して、後悔しない点である。
つまり「竜宮城なんて行かなければ良かった」と思わないところが浦島太郎の良いところである。
人間が宇宙に関して分かっていることは5%。
ほとんど分からないことだらけの宇宙。上手く行かないことや不運に遭遇することもあるが、決して後悔せず、なるようになると考える潔さが肝要である。
宇宙に限らず、先が見えない世の中でやれるだけのことをやる悔いのない生き方。両方やってみる「浦島桃太郎」が一番いいのかもしれない。
IBMで優秀な女性が退職する例
「先が見えないから辞める」
「先が見えてしまうから辞める」←こっちの方が理由として多い。
見えないけど何か見えていくような気がする状態が一番希望を持ちやすい。希望とはまだないけれど近くに存在することを感じることができるものである。
曖昧なもの、よくわからない物を切り捨てるのではなく、受け入れてみることから始めてみよう。
2.売れる本の条件
玄田先生が、長岡市出身の幻冬舎の編集者とその部下で飲んでいたとき、売れる本の条件について話をしていた。
その編集者曰く
①誰に読んで欲しいのか、はっきりイメージできている。
日本中のすべての人向けというのはだめな本。
②一言でこの本は何が言いたいのかが分かる簡潔な内容の本。
ちなみに「希望のつくり方」は希望を作ることができる。叶わないことはあるけれど、情報が氾濫している中で「すぐにダメだ」と投げ出さずに希望を育んでいくことが大事というメッセージが込められている。
③妥協してはいけない。でも意固地になってもいけない。
玄田先生の一番のお気に入りの条件。矛盾しているが矛盾を上手く内包できる本が売れる本らしい。
3.壁にぶつかったときの対処法
壁にぶつかったら壁の前で正しくウロウロしなさい。
待つ・辛抱することの大切さ。
作詞家・プロデューサーの秋元康先生は
「壁にぶつかったら壁にそって歩きなさい」という。
自分なりの対処法を見つけて言語化し、壁を乗り越えたエピソードを誰かに伝えていく。それが希望を育むことにつながる。
気休めがいえない、安易に「希望を持てば大丈夫」といえないような状態にある人には、一緒に悩む、寄り添い話を聞く。
「理由」などないけれど体が動かない。生きるリズムが崩れてしまっている。リズムが崩れると手も足もでない。
そんなときは自分の好きな古典(小説、音楽、映画など)に触れて体を動かしてみる。古典にはリズムがある。自分が昔好きだった物を思い出し、触れることで、リズムを取り戻す。
4.雑記
希望のトップ3は①仕事、②健康、③家族である。しかし、リーマショック、震災後②、③の比重が大きくなってきている。
高齢者の役割とは人生がまんざらではないことを人生の先達として言葉、姿、背中で後世に伝えることである。
今日も皆様にとってよい一日でありますように。