【中小企業の降格ガイド】正しい「降格」の使い方で退職リスクを回避し、組織を強化する方法
中小企業の経営者にとって、「降格」は避けて通れない課題の一つです。ときには業績不振や組織改革などを理由に、管理職からの降格を検討する場面もあるでしょう。しかし、降格は、社員のモチベーション低下や退職など、企業にとって大きなリスクを伴う“諸刃の剣”にもなり得ます。
本記事では、30人以下の中小企業を主な対象として「正しい降格の使い方」を解説します。社員のモチベーションや組織の活性化に配慮しながら、降格を前向きに活かすためのポイントをぜひご覧ください。
1. 降格は「覚悟」が必要な諸刃の剣
多くの中小企業において、降格に伴って給与や手当が下がるケースは少なくありません。給与に直結する降格が実施されると、以下のようなリスクが生じやすくなります。
本人のモチベーション低下・退職
周りへの悪影響や不満の拡散
企業文化がネガティブになる
特に30人以下の中小企業では、少数精鋭であるがゆえに「降格された」事実がすぐに周囲にも伝わります。「あの人は管理職だったのに同僚ポジションに戻った」という状況に、当事者が居心地の悪さを感じて退職してしまうことも珍しくありません。そのため、経営者は「最悪、退職もある」という覚悟をもって慎重に取り組むことが重要です。
2. なぜその人をマネージャーに昇格させたのかを振り返る
降格を検討する場合、まずは「そもそも、その人をマネージャーに昇格させた理由は何だったのか?」を改めて振り返る必要があります。
本当にマネージャー適性があると思ったから?
ほかに任せられる人がいなかったから?
年齢・在籍年数・営業力など“何となく”の理由?
もし「消去法」でしか人選ができず、結果的にマネージャーになったという場合は、経営者サイドの任命責任(配置ミス)の可能性があります。また、初めは適性があると判断したものの、実際にうまくいかなかった場合は「何と何のギャップがあったのか」を振り返ることが大切です。
育成プロセスを十分に確保できていなかった
目標や役割を明確に伝えていなかった
思い込みや短い期間で早々に見切りをつけてしまった
いずれも経営者・管理者サイドに原因があるかもしれません。「適材適所」を正しく見極めることが、降格による不幸な結果を回避する第一歩になります。
3. 降格を検討する前にやるべき3つのポイント
「どうしても成果が上がらない」「組織運営に支障が出ている」というとき、すぐに降格を切り出すのではなく、まず「マネージャーに何を求めるか」を整理しましょう。ここでは、マネジメントの大枠となる3つのポイントを紹介します。
3-1. 目標のマネジメント
会社の理念・ビジョンをもとに、各チームに落とし込む目標を設定し、PDCAを回しながら達成に導くのがマネージャーの役割です。
「なぜこの目標を追うのか」「どこまでが許容範囲か」などを明確にしないまま、結果だけを求めてしまうと、部下もマネージャー本人も混乱してしまいます。
💡具体的な実践例💡
3-2. カルチャー(文化)のマネジメント
チーム全体が後ろ向きであったり、保守的な文化が根づいていると、いくら目標を掲げても前進しにくいのが実情です。マネージャーには、前向きで挑戦しやすい雰囲気を作るためのリーダーシップが期待されます。
💡具体的な実践例💡
3-3. 人材育成のマネジメント
中小企業では、明文化された人事制度や評価制度が整っていないケースもあります。逆に言えば、そこを整備し、運用を徹底すれば大きな武器となります。人を育てる過程は簡単ではありませんが、評価制度・キャリアパス・研修の仕組みなど、具体的なステップが見える状態を作ることが大切です。
💡具体的な実践例💡
4. 正しい降格プロセスとは
降格を検討する際は、「懲罰」ではなく「適材適所」という視点を忘れないことが重要です。
たとえば「期待している役割に対して、本人の行動・実績が足りない」という理由が明確であれば、まず以下のステップを踏みましょう。
マネージャーに期待する役割の明確化
目標管理、カルチャー構築、人材育成など求めるスキル・行動を具体的に説明する。
トレーニング期間の設定
3か月や半年など、期限を切って改善に取り組む機会を与える。
進捗確認とフィードバック
定期的に進捗を確認し、できていない点を補うための具体的アクションを検討する。
それでも改善が難しい場合の話し合い
あらかじめ「この水準に達しなければ、マネージャー職を外す」という合意を得る。
給与体系の変更や異動先などを含めてお互いが納得できる形を模索する。
このように段階を踏んだうえで降格を行えば、“企業としてやむを得ない決断”だと本人も理解しやすくなります。
5. まとめ:「降格」を「成功の転機」に変えるために
降格は企業にとって大きなリスクを伴う決断ですが、正しい目的とプロセスを踏めば、企業と社員双方にプラスに働く可能性もあります。なぜなら、適切な配置転換が組織全体のパフォーマンスを向上させ、結果的に会社の成長を後押しすることもあるからです。
経営者として「辞められても仕方ない」という覚悟を持ち、
求めるマネジメントの役割を具体的に示し、
十分なトレーニング期間とフィードバックを行い、
それでも難しい場合に初めて降格という選択肢を行使する。
このプロセスを丁寧に踏むことで、「降格」が社員のモチベーションや組織文化を破壊する“諸刃の剣”ではなく、企業にとっての新たなチャンスに変わるのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。降格を前向きな組織改革のきっかけに変え、30人以下の中小企業がさらなる成長を遂げられることを願っています。