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公有地を活用した民設民営方式の導入例について
ブレインファームマネジメントコンサルタントの中村正志です。
今回は最近、拡がりを見せている民設民営についての第2弾です。前回、公有地を活用した民設民営が拡がる背景とは?ということで記事を書かせていただきましたが、このスキームを使ってどのようなものが事業化されているかを解説していきたいと思います。
目次
1.公有地を活用した民設民営方式の一般的な事例
2.民設民営導入に向けたプロセス
3.公有地を活かした民設民営方式が導入されやすい土地や施設とは?
4.民設民営方式のさらなる活用のポイントとは?
1.公有地を活用した民設民営方式の一般的な事例
弊社の代表による書籍「これ1冊ですべてわかるPPP/PFIの教科書」の中で、公有地を活用した民設民営方式の一般的な事例としては以下のような分類がされています。
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前回も記したとおり、民設民営案件については、PFIやPark-PFIのような特別な根拠法に基づくものではなく、民間事業者の自由な提案が基本的に採用されますが、とはいえ公共の不動産に建物を建てる訳なので、地域に賑わいを生み出すことを目的にした施設であったり、地域住民の交流に資する施設や事業等を行政としては期待することが多いので、民間事業者はそういった意識をもって事業計画を練ることが望まれます。
2.民設民営導入に向けたプロセス
以下は基本的に募集する行政側のアクションとなりますが、概ねこのような流れで民設民営の事業化がなされます。
1. 目的・方針の策定
公有地活用の目的や方針を明確にします。
・地域の課題(例えば、賑わい創出・観光振興・防災拠点化など)
・公共性と収益性のバランス
・関係者(住民・民間事業者・行政)の意見収集※住民アンケートやパブリックコメント等の実施
2. 公有地の調査・分析
対象となる公有地の状況を調査し、適切な活用方法を検討します。
・土地の面積、立地、用途地域、法規制
・近隣環境(交通アクセス、需要予測)
・他のインフラの整備状況
3.サウンディングの実施
民間事業者の意向やアイデアを事前にヒアリング(対話)し、民間の創意工夫や市場ニーズを把握します。
・公有地の活用に関する民間事業者の関心度を把握
・事業スキームや施設計画の方向性を柔軟に調整
・公募条件の適正化
4.公募・事業者選定
民間事業者を公募し、適切な事業者を選定します。
・募集要項や審査基準等の策定
・公募(公募型プロポーザル等による)
・優先交渉権者の選定
5. 事業契約の締結
事業者が決定したら、契約を締結し、事業の具体的な進め方を確定します。
・土地の貸付条件(期間、賃料、更新条件等)
・公共貢献(地域活性化、雇用創出、防災機能強化等)
・運営・維持管理の責任分担
6. 施設整備・運営開始
選定された事業者が施設を整備し、運営を開始します。
・設計・建設の進行管理
・運営体制の確立
・近隣住民や関係者との調整
3.公有地を活かした民設民営方式が導入されやすい土地や施設とは?
公有地を活かした民設民営方式が導入されやすい土地や施設については、人が集まりやすい土地であるが、現在のところその有効利用が十分なされていなかったり、老朽化等の原因により公共施設が取り壊される予定の土地に対して、商業施設の整備等により地域の賑わいや人々の交流が期待されるものが多くなっています。以下に最近の民設民営の事例をいくつか紹介します。
事例①:茂原市小林土地活用事業
本用地は、広い敷地と交通の利便性を有し、その都市機能により既に商業地として利用されております。本事業では、民間事業者のノウハウを生かし、地域ニーズに対応した活用方法により、さらに賑わいのある地域を目指すこととしております。
優先交渉権者:株式会社ケーズホールディングス
事例②:堺市駅前公共施設用地活用事業
本事業は、市域の中でも地理的な優位性が高いところに位置している本市有地において、現状利用している駐車場機能は残しつつ、更なる機能付加による新たな都市魅力の創出を図り、税源涵養に資する新たな利活用をすることを目的としています。
優先交渉権者:株式会社オークワ(代表企業)
事例③:西東京市民会館跡地活用事業
市が市民会館跡地に事業用定期借地権を設定し、市の示す施設整備の計画条件等に基づき、事業者が自らの資金で施設を設計・整備・所有し、維持管理等を行います。また、整備された施設の一部を市が事業者から賃借し、公共施設(文化施設機能:延床面積800平方メートル以上)として市が運営します。
優先交渉権者:戸田中央医科グループ
4.民設民営方式のさらなる活用のポイントとは
事業用定期借地権を活用した民設民営方式による公有地の有効活用は、今後ますます注目されると予測されますが、特に以下のポイントについては今後の動向に影響を与える可能性があります。
①地方自治体の財政支援
公有地を有効に活用するために、地方自治体は事業用定期借地権制度を積極的に取り入れると予想されます。これにより、土地を所有する自治体は、土地の活用におけるリスクを民間事業者に移転しつつ、地代収入を得ることができます。
②地域活性化の促進
民設民営方式の利点は、地元の経済や雇用を活性化させる点です。商業施設やオフィスビル、住宅など、民間の視点から地域に必要な施設が建設されることで、地域社会のニーズに応じた開発が進むと考えられます。
③テクノロジーとの融合
IoTやAIなどの新技術を活用した施設運営や、スマートシティ構想の実現に向けた取り組みも今後加速するでしょう。特に、民間企業のイノベーションを取り入れた施設開発により、効率的な土地利用が進むと予測されます。
事業用定期借地権を活用した民設民営方式は、今後も都市開発の重要な手段となり、地域の活性化、財政負担の軽減、持続可能な開発を進める上で大きな役割を果たすと考えられます。民間企業と自治体が協力して地域に適した開発を行うことで、双方にとって利益をもたらし、地域全体の魅力が向上する可能性が高いです。
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↓参考文献:「これ一冊ですべてがわかるPPP/PFIの教科書」(中央経済社)。