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サウンディングとは?

ブレインファームマネジメントコンサルタントの中村正志です。

今回はサウンディングについて解説します。
PPP/PFIを効果的に実施するには、案件の発案段階において市場性(主として民間事業者の参入可能性)の有無を確認したり、実現性が高い事業スキームに関するアイデア等を幅広く民間事業者から聞き取り、それらの意見を事業に反映させたりすることが望まれます。
そうした行政と民間の対話の場を「サウンディング」と呼びます。

目次
1.サウンディングは誰が何のために行うか
2.サウンディングに参加する対象者とは
3.サウンディングの流れとポイント
4.トライアルサウンディングについて

1.サウンディングは誰が何のために行うか
サウンディングは、主に行政機関(自治体・政府機関)が主体となって実施します。具体的には、PPP/PFI事業や官民連携プロジェクトの企画・立案段階で、市場の関心度や民間事業者の意見・アイデアを把握するために行われます。
①地方自治体(都道府県・市区町村)が行う場合
・公共施設の整備・運営や土地活用などのプロジェクトに向けて実施
・指定管理施設を公募する前に実施
・PFI事業、公募設置管理制度(Park-PFI)、包括的民間委託、コンセッション事業などの前段階で実施

◆五條市の事例

②国の機関(省庁・独立行政法人など)やPPP/PFIに関する※プラットフォームが行う場合
・大規模なPPP/PFI事業やインフラ整備に関して実施する前段階でサウンディングを実施
※PPP/PFIのプラットフォームとは、自治体や民間事業者等が集まって情報交換を行い、PPP/PFIの案件形成を含む、地域社会の課題解決について検討する仕組み(地方ブロックプラットフォーム、PPP/PFI地域プラットフォーム、公民連携プラットフォーム等がある)

◆国土交通省による事例

2.サウンディングに参加する対象者とは?
サウンディングは、主に民間事業者(ディベロッパー、運営事業者、建設会社、金融機関など)が対象になります。また、場合によっては市民や地域団体も対象に含まれることがあります。参加する事業者の縛りはそれほど厳しくないので、対象となる案件に興味があり、ぜひまちづくりに関わりたいという事業者は積極的に参加していただきたいと思います。

<サウンディングに参加している事業者の例>
不動産開発会社・ゼネコン、運営事業者(商業施設、観光施設、公共施設運営など)、金融機関・ファンド(事業資金提供者)、コンサルティング会社(PPP/PFI支援)、NPO・地域団体(地域活性化・社会事業関連)

なお弊社のようなPPP支援に携わるコンサルティング会社はサウンディングの支援やアドバイザリー業務を行うことが多いです。自治体と民間事業者の間に立って、円滑な対話の設計・調整を支援する役割を果たします。

サウンディングの結果をもとに、事業の方向性が決まり、具体的な公募や事業スキームの設計が進められる流れになります。

3.サウンディングの流れとポイント
PPP/PFIを成功させるためには、サウンディングを行うにあたり、しっかりとた効果を生むための計画策定や準備が必要です(中には以下のようにサウンディングを行っても魅力的な案件組成になっていない例があるので注意が必要です)。
<サウンディングを行っても、案件が魅力的にならない例>
・自治体側の情報発信が少なく、民間事業者に認知されないため、サウンディングで多様な意見が収集できない
・サウンディングでの民間事業者の意見が案件の仕様書等に反映されておらず事業者の参入障壁が高くなる
・ヒアリング項目の秘匿性が担保されず、民間事業者の参加意欲を損ねる

自治体担当者としては、サウンディングは民間事業者との貴重な対話の場であり、参加する民間事業者にはできるだけ丁寧に接するとともに、他のサウンディングの実施事例を勘案して計画を練ることが重要です。

サウンディングの流れとポイント(筆者作成)

4.トライアルサウンディングとは?
上記のサウンディングによく似た言葉ですが実質的な意味が違ってくるトライアルサウンディングという手法もあるので少し解説します。
トライアルサウンディングとは、対話を行う場ではなく、PPP/PFIの市場性や継続可能性を確認する“お試し期間”のようなもので、民間事業者に検討対象となる公共施設を暫定的に使用してもらい、民間事業者が提案しようと思っている収益事業を試験的に実施する機会を提供することです。
具体的な活用例としては、
・公園や公共施設の利活用(例:キッチンカーの試験営業、イベントスペースの活用)
・官民連携による地域活性化事業(例:遊休地を活用した観光施策の検証)
・公共インフラの新たな活用方法(例:駅前空間のシェアオフィス化の試行)

事例①奈良市の都市公園での活用
奈良市では、都市公園等の活性化を目的に、トライアルサウンディングを実施しています。期間中、フリーマーケットやキッチンカーを含むマルシェイベント、ヨガやキッズダンス教室、プレーパークイベントなど、多彩なイベントが開催されています。

奈良市トライアルサウンディングのチラシ

②酒々井町の旧相川家での取り組み
千葉県酒々井町では、歴史的価値の高い旧相川家を活用したトライアルサウンディングを実施しています。期間中、町の観光資源として、集客・消費を促進する施設への活用を目指し、民間からの提案を募集しています。

酒々井町の旧相川家

③藤沢市の公共空間での試み
神奈川県藤沢市では、市役所本庁舎の屋上庭園や奥田公園を対象に、トライアルサウンディングを実施しています。市役所本庁舎の屋上庭園では、期間中、民間事業者や団体が試験的に事業や活動を行い、公共空間の有効活用を模索しています。

奥田公園トライアル・サウンディングのチラシ

対象施設において、予定している事業を実際に実施してみることで、民間事業者側は想定される利用者数や費用等の市場性やニーズを確認でき、自治体側は、それらを勘案した参画条件や公募条件等を整理し、課題を把握することが可能になります。

弊社ブレインファームでは、自治体におけるサウンディング実施支援、民間事業者におけるPPPへの参入支援等を行っています。ご興味のある行政・事業者の方はぜひお問い合わせください。

↓参考文献:「これ一冊ですべてがわかるPPP/PFIの教科書」(中央経済社)。


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