
公有地を活用した民設民営が拡がる背景とは?
ブレインファームマネジメントコンサルタントの中村正志です。
今回は最近、拡がりを見せている民設民営についてです。何回に分けて解説しますが、1回目としてはなぜ今民設民営が注目されているか、その背景に迫ります。
目次
1.公有地の未利用化と有効活用の必要性について
2.PFIとの違い
3.民間事業者が参入する理由
4.定期借地権の設定
5.民設民営の施設に期待されること
1.公有地の未利用化と有効活用の必要性について
まず、民設民営施設が整備される、「公有地」についてですが、国や地方公共団体が所有する土地を指します。私たちの身の回りにある道路や公園、学校、図書館などの公共施設は、すべて公有地で建てられています。
それが全国的な少子高齢化や人口減少等の原因による統廃合のため、現在利用されていない公有地が増加しています。このような公有地を「遊休の公共施設」や「未利用の公共施設」と呼んだりしますが、国や地方公共団体が所有し続けると、多額の維持管理コストがかかってしまいます。そのため利用されていない公有地をいかに有効活用するかが、地域において喫緊の課題となっているのです。
※以下のとおり、未利用地の公有地情報は各地方公共団体等のHP等で公開されています。

2.PFIとの違い
遊休化されていない(=現在活用が出来ている)公有地を含め、建物の設計・建設等を行う場合には主にPFIというスキームをまず思い浮かべる方も多いと思います。しなしながらここでいう民設民営とは、イニシャルは民間が資金拠出を行うものの結局は公共が割賦払い方式でサービス購入費を負担することになるPFIとは異なり、民間が資金を拠出して施設整備を行い、独立採算で事業運営を行うものとして、PFIとは区別して捉えられているのとともに、PFI法のように特別な根拠法がありません。ただ、PFIも民設民営も公有地の有効活用の一例であり、以下の例のとおり、他にもいろいろな活用法があることは付け加えておきます。※民設民営については以下のEの利用方法に該当

3.民間事業者が参入する理由
公有地を活用した民設民営案件が増える=民間事業者が参入する理由としては、上記に記載したとおり、特別な根拠法がなく、独立採算で事業運営ができるというところが大きいところです。したがってPFIのように業務要求水準書等で細かく決められた機能により設計・建設・維持管理・運営等をやっていくのではなく、公共的機能や地域に賑わいを生み出すことを求めつつも物販、スーパー、飲食施設等を自由に提案できるところが魅力であり、必ずしもPPP事業に長けた事業者ではなくても参入がしやすいという点が挙げられると思います。そのため代表企業や構成企業ともに全国的な企業である必要はなく地域の建設事業者、スーパーマーケット事業者や観光事業者も参入が可能となります。※学童保育所や給食センター等民設民営であってもその使用用途が予め規定されているものもあるため、事業者の参入範囲については案件の規定等による
4.定期借地権の設定
民設民営のスキームについて、その契約形態については定期借地権を設定する形で事業化される場合が一般的になっています。
定期借地権とは以下のような種類がありますが、民設民営案件で使われるのは「事業用定期借地権」というものになり、存続期間によりいわゆる長期タイプ(30年以上50年未満)と短期タイプ(10年以上30年未満)に区分されます。下の図にその違いを記載していますが、長期タイプは更新や建物買取請求について『なし』という特約が可能となっています。つまり土地を貸す側の行政としては、将来予定外に建物を買い取れと言い出されても困りますし、民間事業者としても、この先30年以上先の経営環境を予測するのは難しいため、短期タイプの事業用定期借地権が設定されることが多く、このようなことも、行政からしたら「貸しやすく」、民間事業者からしたら「借りやすい」仕組みといえるのではないかと思います。

5.民設民営の施設に期待されること
最後に民設民営施設に対して期待されることをまとめておきます。
①公共財産の有効活用:未利用または低利用の公有地を有効に活用できる。②地域経済の活性化:民間投資を通じて雇用や地域経済の発展を促進する。③財政負担の軽減:公共施設の整備や運営に伴う行政の負担が軽減される。④住民サービスの向上:民間企業の効率的な運営により、より良いサービス提供が可能になる。
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↓参考文献:「これ一冊ですべてがわかるPPP/PFIの教科書」(中央経済社)。