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【コメディ】先輩からの物体X

この記事はオーディオドラマシアター SHINE de SHOWに再掲されています。今後はそちらのアカウントにてご覧ください。

コロナのおかげで、
“お土産”をもらう機会もすっかり無くなってしまいましたが、
今回は、そんな“お土産”にまつわるお話です。

マコトは気になる先輩から、海外遠征のお土産をもらって大喜び。
いつメンのユウリとタカミへ、一緒に食べようと自慢ついでに誘います。
ところが、目の前にあって、同じように見えているはずのお土産が何なのか、3人で意見が割れ始めて……。

コロコロまあるい、“お土産”らしきこの物体の正体とは……!?

*byプロデューサー 田中見希子

*************
▶ジャンル:コメディ

▶出演
・マコト:福島貴子(東北新社)
・ユウリ:新木千智(東北新社)
・タカミ:船越智子(東北新社)

▶スタッフ
・作・演出:山本憲司(東北新社/OND°)
・プロデュース:田中見希子(東北新社)
・収録協力:映像テクノアカデミア


『先輩からの物体X』シナリオ

登場人物
 マコト(17)高校生
 ユウリ(17)マコトの同級生
 タカミ(17)マコトの同級生

   箱を開ける。
マコト「お団子だ!」
ユウリ「お団子……だよね」
タカミ「……お団子?」
マコト「何よ、タカミ」
タカミ「いや、これは……お団子ですか?」
マコト「どういう意味? お団子じゃん。ねえ、ユウリ」
ユウリ「うーん……」
マコト「え、どういうこと?」
ユウリ「いや、その……マコト。お団子かというと微妙な……」
マコト「何なの二人とも。これ、カシワバラ先輩が海外遠征であたしのために心を込めて買ってきてくれたんだよ」
タカミ「それは聞きました」
マコト「遠い異国からわざわざ買ってきてくれた大切なお土産を特別にあんたたちにおすそわけしてあげようとしてんじゃん」
ユウリ「恩着せがましい~……」
マコト「なんか言った?」
ユウリ「いいえ……」
タカミ「わたしはただ、お団子なのかという点について議論したいだけです」
マコト「だからお団子でしょ」
タカミ「では、お団子の定義とは?」
マコト「それはぁ、コロコロっとして丸くて柔らかくって……それがお団子じゃん」
ユウリ「でも……まんじゅうにも見えなくない?」
マコト「まんじゅう? まんじゅうとお団子は違うっしょ!」
ユウリ「そっか。アンコとか入ってんのがまんじゅうか」
タカミ「アンコ入りのお団子もあります」
ユウリ「えー、じゃあわかんない」
マコト「もうどっちでもいいじゃん」
タカミ「たしか……違いは皮の原料だったはず。そういう観点からすると、わたしはお団子じゃないと思うんですよ」
ユウリ「だよねー、そんな気するよね……」
マコト「もういいよ! 一人で食べるから!」
ユウリ「ちょっと待ってよ~」
マコト「明日カシワバラ先輩と会うの! お土産の感想言わなきゃいけないの」
ユウリ「だよね……」
タカミ「ちょっと待った! 普通は、賞味期限とか原材料とか書いてあるはず」
マコト「え?」
ユウリ「そう言えばどこにも……」
マコト「そんなのは箱の裏に……あれ?」
タカミ「うーん、これはおかしい……」
マコト「書いてないお菓子だってあるっしょ」
ユウリ「あるかもー」
タカミ「と言いますか、そもそもこれ食べ物でしょうか?」
マコト、ユウリ「エ~ッ?」
マコト「待ってよ~、『お団子なのかまんじゅうなのか問題』飛び越えちゃってんじゃん」
ユウリ「え、じゃあ食べ物じゃないとしたら?」
タカミ「たとえばですが……ぬいぐるみとか?」
マコト「ぬいぐるみ!? どう見ても食べ物っしょ」
ユウリ「あたしもこれ抱いては寝れないな……」
タカミ「じゃあ何だと思いますか?」
ユウリ「……柔らかそうだし、丸っこいし……」
マコト「いいじゃんもう。お団子で!」
ユウリ「(匂いを嗅いで)くんくん……あ、なんかウチで飼ってたウサギみたいな匂いするかも」
マコト「ウサギ?」
タカミ「なるほど」
マコト「なるほどじゃないわっ!」
タカミ「生き物いきものという可能性も出てきましたね」
マコト「ナマモノって言いたかったんだよね」
タカミ「いいえ、生きてる物の、生き物です」
ユウリ「あ~(と納得)たしかに生き物っぽい」
マコト「やめてよ。生き物のわけないじゃん」
タカミ「生き物のお土産だってあり得ますよ」
マコト「もうわかった! あたし一人で食べるからね! 食べ物だったらもうあげないからね」
ユウリ「ええ~」
マコト「もう遅いから! 食べるから!」
タカミ「って言いつつ、なんで目つぶって深呼吸してるんですか」
マコト「うるさい! 行くわよ。行くからね!(大きく息を吸う)」
ユウリ「キャッ!」
マコト「何よ!」
ユウリ「(震えて)なんか……なんか今動いたような気がする!」
タカミ「やはり」
ユウリ「そうなのかなあ、やっぱりそうなのかなあ」
マコト「もう、タカミが変なこと言うから!」
タカミ「わたしは別に」
ユウリ「よく見たら表面になんか薄っすら毛、生えてない?」
タカミ「言われてみれば……」
マコト「生えてない!」
ユウリ「なにげに呼吸してるような気がする」
マコト「呼吸してない!」
タカミ「ワインとかチーズも呼吸するって言いますからね」
ユウリ「へえー」
マコト「余計なうんちく言わない!」
タカミ「わたしは客観的に観察してるまでです」
ユウリ「あ、何これ! 説明書?」
マコト「え?」
   紙を広げようとすると、ペットボトルが倒れる。
マコト「うわっ! なにやってんのよ! 水かかっちゃったじゃんもう~」
ユウリ「ごめんごめん」
マコト「頼むよ~」
タカミ「Keep them away from water?」
マコト「え? 何?」
タカミ「説明書というよりこれは注意書きかもしれませんね。いや、警告か」
マコト「警告!?」
ユウリ「なんて書いてあるの?」
タカミ「直訳すると、水に近づけてはならない」
マコト「今水かけちゃったじゃん!」
   着メロが鳴る。
マコト「あ、カシワバラ先輩。もう! 食べてないのに!」
ユウリ「あたしのせいじゃないも~ん」
マコト「どうしよー」
タカミ「とりあえず出たほうが」
マコト「そっか。あの……もしもし? カシワバラ先輩! どうもありがとうございました。とっても素敵なえーと……お団子……え?……お団子じゃない?」
タカミ「やはり!」
マコト「どういうことですか?」
ユウリ「じゃあ何なのこれ」
マコト「もしもし? 先輩? 先輩! 先輩ーっ!」
ユウリ「どうしたの?」
マコト「なんか先輩、叫んでる!」
タカミ「先輩も同じ物を?」
マコト「ええ、もう開けちゃいました……ダメ? え、警告? え? 先輩!?」
ユウリ・タカミ「キャー!」
マコト「ハッ、何? キャー!」
ユウリ「す、す、すんごい膨らんでる~っ!」
   泡が膨らむような音、増大していく。
   ボン! と爆発音。
   ──が収まっていき……
マコト・ユウリ・タカミ「げほっ、げほっ、げほっ……」
マコト「何なのこれ!」
ユウリ「真っ白になっちゃった~」
タカミ「破裂するとは……」
ユウリ「エイリアンに寄生されちゃったのかな~……」
マコト「まさか!」
ユウリ「だってベタベタしてるー」
タカミ「ベタベタ……」
ユウリ「どうしよう。防護服着た人がやって来て隔離されるよ~」
マコト「ええ……(うろたえ)」
ユウリ「(泣き出す)」
マコト「泣かないでよー。(タカミに)ごめん、タカミ。疑ったりして……あたしがお団子にこだわったばっかりに……ん? タカミ?」
タカミ「うーん……」
マコト「タカミ?」
タカミ「うーん、う~~~~ん!」
マコト「どうしたの? 大丈夫?」
タカミ「……甘い」
マコト「え?」
タカミ「甘いです。これはおいしい」
ユウリ「え、マジ?」
タカミ「はい」
ユウリ「(食べて)……ほんとだ。おいしい~」
タカミ「これはイケますね」
ユウリ「おいしいおいし~い」
タカミ「何というか……」
ユウリ「これはやっぱり……」
タカミ「お団子」
ユウリ「そう。おいしいお団子だ!」
マコト「待ってよ! 一体これのどこがお団子なのよ! こんな毛生えてて呼吸してて部屋いっぱいふくれて爆発してベタベタするお団子なんてあるわけないじゃん! 説明してよーっ!」
タカミ・ユウリ「食べてみればわかるって」
                               〈終〉

シナリオの著作権は、山本憲司に帰属します。
無許可での転載・複製・改変等の行為は固く禁じます。
このシナリオを使用しての音声・映像作品の制作はご自由にどうぞ。
ただし、以下のクレジットを表記してください。(作品内、もしくは詳細欄など)
【脚本:山本憲司】
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*番組紹介*
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