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【PODCAST書き起こし】アングラ演劇について「梅山いつき」さんに聞いてみた!全4回(その3)続・梅山さんのアングラ演劇史をお聞きする!14000字
*TFCラボプレゼンツ『みんなで語る小劇場演劇』
【山下】梅山さんは、その後大学を普通に4年で卒業された。そして大学院に行かれましたよね? なんで、院に行こうと思ったんですか?
【梅山】なので、元々は舞台芸術の演出に関心があったんですけど、自分は向いてないなって思ったことと、さっき言いましたように機関紙に「同時代演劇」だとかの、当時の評論にインスパイアされて、自分自身が評論ちょっとかじるというか、西堂さんのところで、書き始めたりっていうことがあって、もうちょっとせっかくだから今度は座学の方で、研究として演劇、特にアングラ演劇のことについてもうちょっと調べたいなっていうことで、大学を早稲田の方に変えて、古井戸秀夫先生のところに入門させて。
【山下】明日いらっしゃいますよ。
【梅山】明日いらっしゃる。よろしくお伝えください。古井戸先生にお世話になって。それで、2年間でポスターと機関紙についての修士論文を書いて。
【山下】さっきおっしゃっていた「同時代演劇」とか。
【梅山】そうです。地下演劇だとか、どうしてあの人たちはそんなに熱心にやっていたのかみたいな、ことを。
【山下】それを研究されていたんですね。
【梅山】それで修士論文を書いて。
【三浦】すごく面白いですね。
【梅山】やっぱり、修士論文書いたら劇場とかに勤められたらいいなとか、その当時はまだ現場思考で。
【山下】公共劇場とかね。
【梅山】なんですけど、ちょっといろんなことがある中で、博士課程の方に進学をして。
【山下】博士に進むのって少なくないですか? 文系で。そうでもない?
【梅山】ただ、たまたまその時仲良くしていた早稲田の友人たちは、もう修士に入るっていうのは博士も行くことだよねっていうような子が多くて。
【山下】4年間も覚悟してっていう。
【梅山】はい。もう早稲田に入る、早稲田時代って仏門って言われてて、仏門に入るって。
【山下】何で仏門。何でですか?
【梅山】出家するみたいな感じで。
【山下】出家するみたいな。どういう意味ですか?
【梅山】ほとんどだから、劇場か大学かみたいな。
【山下】もうそこだけ、もうオンリー。全てがそれ、生活の。
【梅山】全然。ひょっとしたら、20代の半ばから後半って一番遊んでいい時期なんですけど、ほとんど遊ばずに、ストイックに。
【山下】なるほど。修業したわけだ。
【三浦】劇場に足を運ぶ。
【山下】大学で学習、本をたくさん読んで。
【三浦】でも、そういう修練の時間をきちっと過ごされている方は、もうやっぱり、重さが違います。
【山下】重さが違いますよね。でも20代の前半にやるのっていいんじゃないのかな、前半というか半ばか。
【梅山】そうですね。半ばから後半ぐらいで。ただ、今思い返すとどうですか2000年代の後半ぐらいの話なんですよね。博士課程でそのアングラ演劇を研究するっていう人間がほぼいない時だったので。
【山下】特に梅山さんみたいな若い世代の人で。
【梅山】見てないので、見てない世代がっていうところでもちろん西堂行人さんだとかがアカデミックな世界でいろいろ論じてはおられましたけども、西堂さん見てる世代ですから。
【山下】そうですよね。リアルタイムですもんね。
【梅山】っていうのは、当時の学会員の先生方にとっては、ちょっと衝撃だったみたいで。
【山下】なるほど。
【梅山】初めて学会で発表したときに見てないやつ何がわかるんだみたいな。
【山下】逆にいろいろ厳しいこともあるんですね。
【梅山】言われて、そう。
【三浦】やっぱりよくある経験主義者の非常にドグマが考えですよね、そういうのはね。
【梅山】ですから、言われた当時は、「何くそっ」てこう新しいことを邪魔しやがってみたいなことを、反発心を抱きましたけど、ただその後だんだんわかってきたのは、演劇ファンの中でも特にアングラ演劇を好きな人、見ていた人たちっていうのは、そういう傾向が強くて、ですね。
【三浦】自分のものとして大事にしておきたいということですか?
【梅山】だから、それも実はアングラ演劇の特性の一つじゃないかと。
【三浦】なるほど。観客及び。批評の中にもそれがあるっていう?
【梅山】はい。なんかお客さんがむしろ客席が、さっきの観客席の話ありましたけど、寺山さんの。観客席がむしろ熱かったというか。
【山下】そうですね。
【梅山】そこがむしろ主役の時代だった。
【山下】観客がね。
【三浦】でも、寺山さんはそういう観客的な思考を、非常に嫌って観客そのものを解体しようと。
【梅山】なるほど。それでの分断でもあったんですね。『観客席』。
【三浦】『観客席』ってそういう意図で作っていったという。
【山下】なるほどね。でも、面白いね。
【三浦】でも、自分のものとしておきたい感覚ってちょっとあります。
【山下】三浦さんもありますか?
【三浦】見る機会がって、当然そんなにたくさんやるわけじゃないし。
【山下】体験ですもんね。
【三浦】やらないから。その体験を大事なものとしてとっておきたいという気はしますけど、でもね、その後から学習されたりする方が、考えを発するのにはとてもいいことだと思うし、そういうものに対して自分の拙い言葉なり、少ない体験でもこうやって話しできるのはすごく嬉しいですね。
【山下】いや、そうですね。世代を超える良さが出てくるような気がします。ただ、よく劇評家の西堂さんとかもおっしゃっているけど、観客と演じる人の、舞台を見るって共犯関係を作ることだってよく言うじゃないですか。多分その人たちは共犯関係を作ってないのに何で言っているのっていうことなのかもしれないけど、だから。
【三浦】そこは時間を超えて共犯関係を作れるのではないか。
【山下】そう、そうなんですよ。だからそこをだからもうちょっと違う解釈をしていくと、それは別にそこにいなくても、なんとなくそこを作っていけるんじゃないかなっていう、ね。
【三浦】梅山さんがやっておられることが今、一部をこうやってね、今日お話し聞くと、割かしそういうことだったのかって。
【山下】ものすごくわかりやすいですよね。
【三浦】腑に落ちることが、すごく今日多いです。私にとっては。
【梅山】当時、リアルタイムでご覧になっていた方は、もうまさにその肉体の演劇と言われた通り、麿さんとか四谷シモンさんだとかの強烈な特権的肉体に圧倒されたその観賞っていうのを超えた強烈な体験って記憶に残っているので、それはそれでなんですけど、私はそれがない分、活字の方にものすごく衝撃を受けるっていうことが、結果的にはいい。新しい側面、実は肉体の演劇っていうふうに語られていたけど、すごく多弁で。
【山下】そうですよね。
【梅山】ものすごいしゃべって芝居自体もものすごくしゃべりますし、あとはそういう機関紙類っていう活字、言論活動っていうのはものすごい展開してたっていうところを、もう一度再興できたっていうのが、私の一つの仕事だったのかなっていうふうに思うんですよね。ただ、やっぱり一方で本を出したときに、扇田昭彦さんが、ものすごく評価してくださったんですけど、一つのこれは私の宿題と思ってるようなことも、ご批判もいただいていて、やっぱりその自分にとっては、まさに疑いようもなく目の前にあった肉体、体っていうものが、あたかもそれがないというか、私はこの本で偽物の身体っていうキーワードに、それは別にその肉体を。
【三浦】否定したわけではない。
【梅山】肉体を批判するようなタームではないんですけど、ただその言い方語り方っていうのがどうも自分がその目の前にあった、もう疑いようのない実態としての肉体っていうのがちょっと削ぎ落とされているような感覚を覚えたっていうことを、扇田さんが、宿題としておっしゃっていて、だから、それは今後の研究活動の中でどうやってそういう失われた部分、当時のお客様も含めて、もう絶対再現できませんよね。お客さんとそのお客さんの目の前で立っていた俳優たちっていうものをどういうふうにしてこう後世に語り継いでいけるのかっていうことが、研究者としての課題かなとは思っていますね。
【山下】まあね、演劇と身体性とは切り離せないので、今このコロナの時代になってですね、オンライン演劇という新しいジャンルがまた出てきていますけど、それは多分今梅山さんのお話しとちょっと通底するところがあって、だからオンラインだと身体はなかなか感じにくい。ただ、今度2025年に大阪万博をね、やるときに、バーチャルリアリティーでやろうかって若い人たちが言っていると。そうすると僕も実はですね、年末にオキュラスリフトっていうVRゴーグルを買ったんですよ。それをやると本当に目の前のね、身体の感じはあるんですね。だから、もしかしたらそこにまた新しいテクノロジーで面白いことをやる、それこそ、今、寺山修司が生きてたら興味を持ったんじゃないかなっていうふうに思うんですね。そんなことを感じました。
【梅山】オンライン演劇でいいますと、私去年1年間、自分自身もオンライン授業をやったり、やはりオンラインっていうのをずっと、オンライン生活を続けて思ったことは、結局舞台上が、3次元が2次元になるとかっていう問題ではなくて、客席なんだと思ったんです。やっぱりライブ会場ライブパフォーマンスっていうのは、自分以外の様々な身体、様々な人たちに囲まれて、そのどこから来たかどういう人かもわからない人たちと一つのものを共有して、一緒に笑ったり、興奮したりっていうその得がたい体験を得てるんだと思うんですよね。それをどうやったらVRだとかで再現できるのかなっていうのは、そういうテクノロジーに期待したいところではありますよね。
【三浦】確かに。共通感覚的なことも含めて。
【山下】わかるわかる。そうですね。
【三浦】どう共有できるか。
【山下】オンライン演劇いくつか僕も見たんですけど、面白いなと思うのって、必ずそこの劇場に観客がいるんですよ。
【梅山】わざと、映り込ませてるんですね。
【山下】笑い声も聞こえるし、無観客でやっても面白いのもあるんだけど、なんとなくあれっ? ていうようなのもあって、それは梅山さんがおっしゃっていることとちょっと通じるものがあるかなっていう気もしました。それであれですよね、話また戻しますけど、大学4年間やられてその後ポスドクになるわけじゃないですか。ポスドクのときはどういうふうにされていたんですか?
【梅山】博士課程にまだ在籍しているときに早稲田大学の演劇博物館の助手になりまして、2008年にアングラ演劇再考という国際研究集会3日間にわたり。
【山下】そんな集会があったんですか。
【梅山】今、館長を務めておられる岡室美奈子先生と一緒に企画をしまして、そこで、いわゆる、唐さん別役さんをはじめとする代表とされる方をお招きして、アメリカからエレン・スチュワート、ラ・ママ実験劇場という60年代のオフ・オフを代表する。
【山下】オフ・オフ・ブロードウェイですか。
【梅山】寺山さんとも親交が深かった、寺山さんそこで上映しているんですね。なので、寺山さんの思い出も含めて、エレンに60年代のスピリットを語っていただくっていうような、ものを一つの目玉にした3日間の研究集会をして。
【山下】それは早稲田大学で行われたんですか?
【梅山】はい。キャンパスを使って、それが結構話題になって、それが助手時代。それもこちらのアングラ演劇論と同じ2012年に書籍化して出したんですね。
【山下】それは岡室先生と共著で。
【梅山】先生と共著で出させてもらって、そういったことが、あって、こういう本も出させていただくとやっぱり研究者としてのまず一歩を踏み出せたということで、そこから継続してやってるんですけど、研究以外では同じく演劇博物館助手時代に、助手は展覧会を企画しないといけないんですね、仕事で。
【山下】そういう仕事なんですね。
【梅山】はい。私は現代劇のセクションだったので、太田さんの。
【山下】太田省吾さん。
【梅山】展示を企画したり、第三エロチカのちょうど解散の年にあたったりしたので、川村さんと一緒にお仕事させてもらったりっていう中の一つに、水族館劇場という。
【山下】その時に知り合ったの?
【梅山】はい。野外劇、自分で好きなように企画が立てられるっていうことで太田さんとか、エロチカとか好きなものを扱ってきて、じゃあ何やりたいかっていうときにそのとき一番自分の中ではびっくりした、見てびっくりっていう、取り上げたいっていうんで水族館に声をかけて。
【三浦】実際に芝居を見て?
【梅山】はい。ポニーか何かちっちゃい馬が出ていて、お客さんは全然少なくてスカスカなんですけど、舞台上でふんしたりするんですよよ。その臭いが来るっていうテントの、もう衝撃的な体験で、何だこれって、ボロボロのプロペラ飛行機みたいな人力でクレーンかなんかで吊って、野外劇であるあるなんですけどボロッボロなんですよね。そのオンボロ感がたまらなくいいなと。
【三浦】もう金も全くないだろうと、もうギリギリの状態で芝居を。
【梅山】主演女優の千代次さんっていう方がもうその頃でも結構な年齢をいかれてたと思うんですけど、すごく可憐な少女から成熟した女性までを演じられるっていうもう千代次さんにも魅せられて、何だこの貧しいけどもものすごく豊かだなっていう。
【山下】今の時代に通じるね、本当に。
【梅山】強烈なアマチュアリズムって、もう愛おしくなっちゃって、大好きになっちゃったんですよね。それで、展示やりませんかっていうので声かけたら、全然そういうふうに大きな機関とかメディアから注目されることなく、ここまで来てたっていうことで、この機会に活動を振り返ろうよって言って一緒にやっていく中で次の公演の制作も。
【山下】なんかお手伝いされたんだね。
【梅山】やることになりまして、ですから、研究活動と水族館での実際のテント興業のお手伝いっていう。
【三浦】なるほど、実践。
【梅山】ていうので、数年間はポスドクの頃ですかね。
【山下】なるほど。その水族館劇場って場所が毎回違うところでやりますよね?
【梅山】その当時はですね、2000年代は駒込に大観音って通称されているあそこお寺の町ですよね。お寺の境内で10年間ぐらいですかね、借りて毎年5月にテントを建てていて、赤テントとかとちょっと規模が違いまして、建てるのに1ヶ月強ぐらいかかるんですよ。
【三浦】そんな、でかいんですか?
【山下】僕も一回行ったけど、木造で足場をすごい組むんですよね。
【梅山】木造は屋根の部分で、単管パイプ……工事現場のいわゆる足場。
【山下】鉄のパイプか。足場のパイプか。
【梅山】足場で使っている資材で劇場の骨組みを組みまして、高さにすると3階建ての。
【山下】ビルぐらいの大きさだもんね。
【三浦】建築ですよ。
【山下】そうなんですよ。
【三浦】工事現場ですね。
【梅山】はい。
【山下】はい。本当にそうです。
【梅山】はい。なのでその場所を。
【三浦】安全性とかも含めて?
【梅山】それは大丈夫なんですけど。
【三浦】安全性も含めてしっかり建てるっていうことですか?
【梅山】というか、座長の桃山さんだとかは、建築現場で働いてたり、これも野外劇に多いパターンですけど、そういう建設現場で「とび」をやってたりっていう人たちがいるので。そこでのノウハウを。
【三浦】じゃあもうお手の物で?
【梅山】はい。
【山下】足場組むノウハウがあるからね。
【梅山】はい。やろうっていうようなところでその一つのユニークな建造物が生まれたっていう。
【三浦】赤テントとかとは違いますね。全然ね。
【梅山】テントはもうすぐ建てられちゃうので。
【山下】全然違っていたのでびっくりしました。
【三浦】赤テントの話しでちょっと脱線しますけど、すごい60年代有名な話しが、やっぱり、上級劇場に公演をさせないようにしようという官憲の動きがあったらしくて。
【山下】あったらしいですね、だって新宿西口公園は、ゲリラでやったとか。
【三浦】そうそう、それで要は陽動作戦を。
【山下】陽動作戦って何ですか?
【三浦】大久保鷹が。
【梅山】目くらましをして。
【山下】目くらましをして?
【三浦】大久保鷹がリアカーを引いて客は。
【山下】始まったと思いますよね。
【三浦】客は公園に集まってどっかで上演するらしいよっていう。
【山下】それって何かの情報はどうやって?
【三浦】それは拡散しているんですよ。やっぱりポスターなり何なりで。
【山下】やっぱりチラシか何かであったのかな。新宿西口でこういうのやるからって。
【梅山】花園ですかね。あれは。
【三浦】多分ね花園、戸山の公園かな。
【梅山】戸山の中央公園かな。
【山下】新宿区の戸山の。
【梅山】こっちだよって。
【三浦】警察は絶対やらせないようにしようと、警察張ってるんだけど、大久保鷹が登場した瞬間に警察も止めに行く、客も入りに行く。そしたら全然違う方向に赤テントが建って。
【山下】そうか。
【梅山】そうそう、テントを建てて。
【山下】すごい、映画みたいだね。
【三浦】聞くだけでゾクゾクするような。
【山下】それはすごいな。それって実際に体験された人とか?
【梅山】おられます。
【山下】話し聞いたことあります?
【梅山】はい。扇田さんもそこにいたので。
【山下】どんな感じだった?
【梅山】外から機動隊の怒声がやめろやめろって聞きながら、で、こっちはもう見てる方は頑張れ頑張れって舞台のほうを、もうすごい緊迫感の中で見守ったって。
【山下】なるほど。
【三浦】そんな体験してたらやっぱりさっきのお話し、言うかもしんないですよね。
【山下】共犯関係の強さが、強すぎるみたいな。
【梅山】そこまでの過激さはないんですけど、警察とかそういうところとの、ちょっとフリクションみたいなの、水族館はまだまだあったんですよね。
【三浦】ありそうですよね。それは。
【梅山】はい。それで喜ぶべきことじゃないんですけど、ただ、そういうスリリングさみたいなのも2000年代の野外劇の中では唯一。
【三浦】引っ張ってきてるっている空気感としては。水族館劇場って曲馬館とか旅団とは何の関係もないんですか?
【梅山】あります。
【三浦】やっぱりありますよね。今のポニーのお話しを伺ってて。
【山下】曲馬館ってどういうやつなんですか?
【梅山】翠羅臼さんっていう劇作家演出家の方が結成をして、72とか、ちょっと間違えてたらあれですけど、70年代初頭で、旗揚げ、ルナパークミラージュが多分、馬を使ってると思うんですね。
【三浦】私は、曲馬館は見てないんです。その後の風の旅団をちょっと。
【梅山】はい。桜井大造さんっていう方が。
【三浦】桜井大造、旅団を見たときにやっぱり豚を使っていて、子豚が舞台の上にたくさん出てきてて、だから、旅団もちょっとやっぱり体制批判とか、天皇制批判を割と主題として打ち出して演劇をやるので、ちょっとびっくりしたのは子豚って抱えるとすごい声で鳴くんですよね。
【梅山】鳴くんですよね。
【山下】子豚はそうなんだ。鳴くんだ。
【梅山】子豚はね、抑えようとしてこうやると。何で知ってるかっていうと、水族館でも使ったから。すごい声出すの。
【三浦】その音が雅楽の音に聞こえるんです。
【山下】*雅楽の演技。
【三浦】逆批判使ってんなって、雅に対して。
【梅山】なるほど。
【山下】あ、そういうことですか。
【三浦】客観的に思って、すげえこと考えるなって。
【山下】そこまで。そうか。
【三浦】深読みかもしれないですけど。
【梅山】でもね、やってる芝居がそういう内容ですからね。
【三浦】もう内容がそうなんで。そこに結びつくんですね。
【山下】なるほどね。それも野外劇なんですか?
【三浦】旅団はテント建ってましたね。
【山下】でも、一応屋外でテントと。
【三浦】屋外で。
【梅山】今も継続して活動を。
【山下】やってらっしゃるんですか?
【三浦】なかなかあそこもやらせてもらえないですよね。きっとね。
【梅山】そうですね。私が見たとき2010年代とか、井の頭公園で張ってやってて、最近はちょっとお休みされているみたいですけど、台湾とものすごく交流やったり。桜井さんがやっておられて。
【山下】台湾のね。
【梅山】台湾行ったら見られたりするんですか?
【梅山】そうなんですよ。台湾の大学の先生で、すごい熱心な先生がおられて、協力者みたいです。
【山下】やっぱり個の力が強いですね。やっぱりそれ大事だな。やっぱり一人の個人って。
【梅山】そうなんですよ。
【三浦】大学も結構当時。
【梅山】回って。
【三浦】呼んだりしてましたよね。
【梅山】はい。
【三浦】法政大学でやった時も。あったかな。
【梅山】そうです。
【山下】それは学園祭に呼ぶとかっていうやつ。
【梅山】法政は結構やってますよね。梁山泊もやってますし。
【山下】法政大学に呼ぶんですか?
【三浦】学園祭とかじゃなくて。場所を貸す。
【山下】場所提供。
【梅山】赤テントもですけど、当時は大学のほうにオルグっていう言い方をしてて、オルグの売り込みをして、それで、場所を使ってやっていくっていうのが、結構精力的にやってるんですよ。
【山下】なるほど。今はそういうのは大学側があんまりやらない? どうですか?今大学の教員されてますけど。
【梅山】まず、学生は野外に対してあんまり思考がないところはありますけど、ただ、今また特殊なコロナの状況の中で、新しいそういう場所のことも含めて考えるいいきっかけかなって思ってるので、ぜひ学生に、室内で密がだめなら外に行こうよみたいに呼びかけたいなと思いますけどね。
【山下】それはありですよね。
【三浦】テントね、別にこうふさがないで開けてやれば。
【山下】そうそう換気むちゃくちゃいいですもんね。そういう意味で屋外はね。
【三浦】唐組はたまに明治の敷地でやってますよね。お茶の水の。
【山下】そっか、唐さんはOBですもんね。
【三浦】OBですね。水族館劇場に旅団との。
【山下】繋がりがあったんですね。
【梅山】ですから、曲馬館から旅団が生まれて、あと、夢一族が生まれてそれがまた別の団体として水族館劇場っていうのができているので、主演女優の千代次さんは、曲馬館のメンバーなんですよ。でも、その曲馬が終わっちゃうっていうときに今の座長の桃山さん、水族館劇場の座長の桃山さんも入られて、若手として、終わっちゃったのでそこの何人かで水族館劇場を旗揚げするっていうそういう流れなんですよね。
【三浦】旅団を見たときに桜井大造が何の脈絡もなくこんなでかい生の鯖を頭からかじっているのを見て気持ち悪くなりましたね。結構嫌がることしますよね。
【梅山】一時期そういう方向に行ったアングラの一つの歴史がありますね。あまりに愚直に過激さを求めすぎたが故に、脱げばいいのかとか生ならいいのかみたいな、そういう突っ込みを入れたくなるような時代も経て今になるかな。
【三浦】旅団も火を使っていたような記憶があるんですけど。水族館劇場は水を使うんですか?
【梅山】そうですね。火も*コンビ(00:24:19)も使いますけど、見せ場は水落としって言って。
【山下】上からものすごいんですよ。ブワアって落ちて本当に。
【三浦】観客濡れちゃいます? それ。
【梅山】濡れちゃいます。濡れたいんですねみんな。
【山下】ビニールみたいなのは一応あるけど。すごいですよ、本当量が。
【梅山】制作をやっていたので、整理券番号順に入ってくるわけですよね。番号早いのは早く受付して取りたい、それで1列目取りたい。
【山下】一番前のね、水が近いところね。
【三浦】舞台に水が降ってくるから。
【梅山】舞台上にボンって来るんですけども、3列目ぐらいまで濡れるんですよ。ビニール貼ったりするのも制作の仕事でしたけど、濡れたいんです。あの方たちは。
【山下】僕は後ろのほうで見たい。
【三浦】唐組もビニール配りますもんね。水使うときは。
【山下】そう最近はそうですね。
【三浦】梁山泊もそうだったしね。
【梅山】濡れたいのです。ですね。
【山下】夏だったらいいけどね。いや、それも面白い体験ですよね、本当に。
水族館劇場ってだいたい何年ぐらいにできたんですか?
【梅山】87年なので、ですから、もう30年の歴史がありまして。
【山下】なるほど。もう30年経つのか。
【三浦】っていうことは、座長の方もう60代とかですか?
【梅山】そうですね。60ちょっとぐらいですけどね。ただ、若い人たちも少し入ってきたりだとか、毎回の公演で純粋な劇団員じゃなくても手伝いだとかで割と若い、20代30代の人たちも巻き込みながら、やってますね。
【山下】まあね、いいよね、世代が繋がって行くっていうのは。
【三浦】また1個思い出したんですけど、数年前の正月明けぐらいに旅団なのかそのメンバーの残党たちが上野の。
【梅山】水族館ですね。
【三浦】水族館ですか。
【梅山】はい。
【三浦】投げ銭公演みたいな。
【梅山】そうです。
【三浦】浮浪者に混じって。
【梅山】さすらい姉妹っていうユニットがいて、水族館劇場でテント芝居、巨大な仮設劇場を建てるのを年一回と、それとは別に年末年始の炊き出しに合わせて山谷上野いまは、やれていませんけど渋谷、新宿あとは、横浜の寿町で、路上芝居を、だから、見せるお客さんは、そういう普段のお客さんじゃくなくて、炊き出しをもらいに来たおっちゃんたちに見せるっていうそういう趣旨の。
【三浦】そこに混じって僕らとか行くわけですよ。別に席とかないので、路上に腰をかけて。不思議な感じありましたよね。
【梅山】私はまたあれが大好きなんですね。さすらいのこと知ったときも衝撃で。
【三浦】衝撃と言えば衝撃でしたもんね。
【梅山】その翠さんたち曲馬館っていうのは、ある意味黒テント佐藤信さんたちの運動の演劇っていうに対する強烈なアンチテーゼの中で、活動を始めてるんですね。最初の頃話してましたけど、信さんたちの時代は何だかんだ言ってカウンターカルチャーって言いながらも大学だったり養成所でしっかり勉強しながら演劇を始めてる、それに対して、でも、翠さんも外語大出身だったりするんですけど、ただ、そういう生温いんじゃなくて、体制批判っていうのはもっと現場でやるべきだというすごくまじめなストイックな考えから自ら山谷に入って行こうと実際にはそこまでコミットしなかったという説もありますけど、そこの山谷で、起きてる山谷の争議団とかが、元気だった。
【三浦】山谷争議団。
【山下】何ですか? 山谷争議団って?
【三浦】山谷のだから労働者を守るために活動している。
【山下】そういう団体があるんだ。
【梅山】そこで激しく機動隊とぶつかったりという。
【三浦】キリスト系とは別の団体ですもんね。
【梅山】はい。
【三浦】炊き出しとかをキリスト系の団体がそこを主催して、食べ物をみんなに配ることの権利をやっぱり主張するための活動。
【梅山】やっぱりそこで寝泊りしている人たちが、やっぱり日雇いで、まだ元気でほとんど仕事をしているような時代70年代だったので、そこが、山谷がすごく元気だったときにそこに入って行って、芝居を通じて運動を起こして行くっていうことをやる。だから、かなり過激な天皇制批判っていうこともやっていたんでしょうね。その流れを汲むのがさすらい姉妹で、もはや今って山谷だとかドヤ街っていうのは高齢化が進んで、労働者の町から福祉の町に変わっているっていう言い方もするなかで、むしろそこに残されたというか、集まっている普段忘れられているような人たちに芝居で、むしろ優しく寄り添って行くっていうような。
【三浦】逆に見てもらうっていうようなことも含めて。
【梅山】さすらい姉妹の芝居自体もある種の直接的な批判というよりは、笑ってみんなで横並びで、一緒に肩寄せ合ってじゃないですけど、小一時間過ごそうよっていうような。
【三浦】癒しの時間を作るっていうことかな。
【山下】なるほどね。
【梅山】集まったその場の出来上がり方っていうのは、すごく独特なんですけど、私もすごく好きで。
【三浦】例えば、私みたいな人間が行くと若干の違和感を感じるのってそういうところにあるんですかね?
【梅山】ただですね、私なんかも最初の頃おっかなびっくり、大晦日が山谷から始まるんですね。山谷なんかに行って私みたいなのが行ったりすると目立つわけですよね。
【三浦】目立ちますよね。
【梅山】中央公園の炊き出しだとか上野でもそうですけど、ふと女性一人で行ったりすると明らかに違う、外から来たっていう風になりますけど、全然そこ排除むしろしないんですよ。一緒におねえちゃんも食べて行きなよって言って。
【三浦】別に排外的にはしないですよね。確かにね。
【梅山】だから、私も争議団の大晦日の集会みたいなのに少しだけのぞかせてもらったりしましたけど、そこで、その場にいる人たちで、連帯していこうっていうものがすごくいいなって。
【山下】そういうのを作ってるんだね。
【三浦】私CMずっと作っていて、プロデューサーやってたんですけど、撮影するとお弁当とか頼むんですよ。で、余るんですよ、たくさん。そういうの、もう捨てるのいやだから。
【山下】もったいないですよね。
【三浦】山谷の山友会っていうのがあって、山の友の会。そこに余った弁当を届けるっていう活動を2年間ぐらいやってたことがありますね。タクシー乗って行ったりとか、手で持って行ったりとか、すごく喜んでくれて、そうすると、みんなそこに集ってる人たちが楽しそうに話してて、別にそこで一緒になって酒飲んだりするってことはしなかったですけど。空気感、とても和むっていうのかな。
【梅山】やっぱり見る側はそうやってふと一時的に入れてもらえますけど、水族館のメンバーたちが。
【三浦】ずっと常時ですもんね。
【梅山】山谷に入って行って、そこである種の連帯みたいなのを作ってくっていうのは、やっぱり大変でそこである種キーパーソンになったのが今もう亡くなられた山谷の玉三郎っていう名役者が。
【山下】名役者がいたんだ。
【梅山】山下さんもご覧になっているかもしれないですけど、2000年代の頃まだ元気で、幕間狂言的な玉ちゃんコーナーが必ずあって、ちょっと踊りを見せるっていう。
【三浦】その方は実際山谷の労働者の方?
【梅山】山谷でずっといて、で。
【山下】実際、山谷にいらっしゃって。
【梅山】全然水族館のことも知らない。けど、芝居やりたいっていってきている人たちがいるっていって、声をかけて来てって、それからの付き合いだっていう。
【三浦】そこで仲間に入ってくれと。
【山下】いいですね。フラットで。
【三浦】水族館劇場って今でも年一回やってるんですか?
【梅山】やっていまして、これも宣伝なんですけど、5月に。
【山下】5月に、それも別役実の、展示会と同じ5月。
【梅山】展示が17で、水族館が5月14日から30日までなんですけど、東京都の青梅線の羽村駅っていうところ。
【山下】青梅線、羽村駅しぶいですね。羽村行ってみたいから行ってみようこの機会に。
【梅山】すごく離れたところで、羽村の駅から徒歩10分ぐらいのお寺、ちょっと名前忘れましたけど、お寺で。初めての場所なんですが、ご住職がすごい熱心な方で、水族館の活動を知ってうちでやってみませんかという声がかかって。
【山下】無償提供して場所。楽しみだね。
【梅山】新しい場所なのですごい楽しみ。
【山下】三浦さん一緒に行きましょうよ。ぜひ。羽村行ってみたいですよね。青梅線の。
【梅山】なかなか羽村よさそうで。
【山下】ね、面白そうだね。
【梅山】はい。私もこのお正月にさすらいをそこでもやって。
【山下】そこでもさすらいをやったんですか?
【梅山】初めて私もそのお寺に行ってきたんですけど。
【三浦】さすらいも、じゃあ毎年年末年始やってらっしゃるんですね。
【梅山】そうですね。テントの方はちょっと場所の関係で一回できなかった年も実は数年前あったんですけど、ここ数年は花園神社で、4月にやって、赤テントより前に、やってたのを去年は結局その緊急事態宣言ともろ被り。
【山下】ちょうどね、4月はもろだったからね。
【梅山】結局は、お客さんを招いてっていうことはできなかったんですよね。だから、1年ちょっと空いた分、今年はちょっと様子を見ながらっていう。
【山下】5月だったらね大丈夫そうなね、感じがしますけどね。
【梅山】ただ、どういうふうにお客さんに来てもらうかっていうのは今劇団のほうでも模索して通常の予約で来てもらうってのと違うチケットの売り方もするようなことも言ってるので、ホームページ随時見ていただけるといいかなと思うんですけど。
【三浦】水族館劇場だったんだ、あのさすらい姉妹の上野で見たのは。
【山下】だから、体験されているわけですね、三浦さんもね。
【三浦】人から聞いて、この時間の上野公園行くと多分やってるよって言われて。
【山下】それ口コミなんだ。
【梅山】それ何年ぐらいでしたっけ。私実は6年7年もっと前かもしれないですけど、永山則夫の芝居を、その永山さんが書いて演出させてもらったことがあるんです。
【三浦】永山則夫、連続射殺魔の?
【梅山】はい。
【三浦】いや、それではなかったですね。ちょっと内容を忘れてしまったんですけど、1月確か2日か3日の。
【梅山】そうですね。上野はその辺りで。
【三浦】昼下がりで。2時とか。そんな時間に。
【梅山】はい。お餅つきやって、でやるんです。
【三浦】もちろん炊き出しもやっていて。
【山下】それも年末っていうか31日とかなんですか?
【三浦】それは正月明けです。
【山下】明け。
【梅山】31やって、1日寿やって、2日に渋谷とか新宿3日上野とかそういう感じでだいたい回って。
【山下】何ていうんですか? さすらい?
【梅山】さすらい姉妹。
【山下】姉妹。阿佐ヶ谷姉妹ではない。
【梅山】はい。
【山下】なるほど。ですね。
【三浦】ボロボロの感じで出てきて。
【山下】面白そう。見に行きたいと思いました。
文字起こしを担当いたしました石田大輝です。この度はご依頼いただきありがとうございました。アングラ演劇という初めて耳にする単語から、ほんと多くの歴史や文化を学ぶことができました。いろいろ調べながら起こしたもので、私も一度見に行きたいと感じ入った次第です。公演場所が近隣のときはぜひ行ってみたいと思います。これからも応援しております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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