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東北新社グループで最も落語に詳しい三浦さんに初めて落語を見た大野さんが聞いてみた!シリーズです!全4話(その3)
東北新社グループで最も落語に詳しい三浦さんに初めて落語を見た大野さんが聞いてみた!シリーズです!全4話(その3)
【タイトル】TFC LAB presents集まれ!伝統芸能部!!
【山下】続きまして、大野さんから三浦さんに、さっきいろいろ噺家さんの話してもらいましたけど、三浦さんへ次の質問をお願いします。
【大野】さっき噺家さん、どなたがお好きかってことでしたが、次は演目ですね。
【三浦】なるほど、演目ですね。
【大野】お好きな演目教えていただきたいんですけれども。
【三浦】そうですね。演目、落語ってどれぐらいあるのかわからないですけど、数百はありますよね。私ももちろん、全部聞いているわけじゃないですが、それぞれの話で楽しさとか魅力を持っていますよね。今に残っている話だから。前座噺の『子ほめ』とか。『子ほめ』もやり手によってはすごく面白くもなるし、開口一番、前座さんが一生懸命やるのもいいですよね。とっても初々しくて。すごく生まれたばかりの子供をほめるんだけど。結局、それってなんでほめるかっていうと、なんでほめるかわかります? そもそもの魂胆っていうか。
【山下】意図があってほめるんです。
【三浦】なぜほめるか。
【山下】『牛ほめ』もそうですよね。
【三浦】そうです。そうです。
【山下】ほめるっていうのはだいたいそういう感じですよね。
【三浦】そう。人ほめたら、タダ酒が飲めると思ってるんです。
【山下】インセンティブが働くわけですよ。
【大野】インセンティブ欲しさ。
【三浦】そう。例えば、八っつぁんが最初からそう思ってるわけじゃなくて、八っつぁんがまずご隠居のところ行くんですよ。八っつぁんは熊さんから「ご隠居のところにタダの酒があるから」って聞いて、ご隠居のところに八っつぁんが行って「ご隠居ご隠居、タダの酒飲ませろ」って、「なに? タダの酒そんなもんねえよ。灘の酒だろ」ってところから始まるわけですよ。
【大野】いいですね。
【山下】ストレートすぎますよね。
【三浦】おかしいですよね。それで、「お前、少しはお世辞の一言でも言えば、飲むかって言えるけど、のべつまくなしにタダの酒飲ませろって誰が飲ますんだ、そんなこと」っていうところから始まって。
【大野】なるほど。
【三浦】世辞を言えと、人をほめろというところから始まるんですよ。それで、そういえば、友達のだれそれのところに子供産まれたなって子供ほめにいくっていうね。ろくなほめ方しないっていうね。
【山下】ギャップが面白いんですよ。
【三浦】「お前の子供でかいな。顔とかシワ寄ってるぞ」って言ったら、「それはうちのじじいだよ」って。
【山下】しょうがないですね。ほんとに。
【三浦】そういう『子ほめ』も前座噺としては面白いですし。今1番、あーっと思うのは、落語会行くとわかるんですけど、ネタ出ししてる人としてない人がいて。
【山下】根多出しってなんですか? 初めてやること?
【三浦】根多出しは……。紀伊国屋ホールってわかります?
【山下】紀伊国屋書店の4階。
【三浦】紀伊国屋寄席って顔付けとネタ出してるんですよ、全部。なにをやるか。
【山下】なにをやるかを決めてからやるのを根多出しって言うんですね。
【三浦】そうですそうです。
【山下】わかりました。
【三浦】でも普通の落語会は根多絶対出てないんで。
【山下】当日まで決まってないですもんね。
【三浦】ぎりぎりまで本人たち何やるか決めないってのもありますし、寄席はもう絶対なにやるかわかんないですもんね。
【大野】そうですね。
【山下】独演会とかホール落語行くと、終わってから紙で演目が書かれたのが貼ってある……。あれは昔から?
【三浦】どうでしょうね。私が行くようになってからはずっとそうでした。みんな一生懸命写真撮ってました。
【山下】僕も写真パシャっと撮って、忘れちゃうから。
【三浦】そうそう。基本的には根多出ししないんですけど、たまに「なになにやるから」って、気合入れて「これやるから」って。例えば、圓朝の『真景累ヶ淵』とか『牡丹灯籠』とかやるときは、「これ、やる」って。やっぱりそういう話聞きたくない人もいますよね。
【大野】陰惨で怖い話だしね。
【三浦】長いし。そういうのは聞きたいって人と聞きたくないって人がいるから、基本的にはあまり根多出ししないのが普通ですけども、するときもあると。ホール落語も行って、「あ、この話」ってだいたい枕でわかったりするんですけど。
【山下】深いね。枕でわかるのいいね。
【三浦】結構好きなのは『居残り佐平次』っていう。
【山下】『居残り佐平次』『品川心中』の話。
【三浦】『居残り佐平次』は誰がやっても面白いですね。みんなそれぞれやり方が違うので。
【山下】あれが映画に……。
【三浦】『幕末太陽傳』ですか。
【山下】川島雄三監督のね。
【三浦】川島雄三の。フランキー堺が主演してて。
【山下】それが原作というか、元にしたんですよね。
【三浦】居残りとか、品川心中も入ってるんですかね。
【山下】そう。
【三浦】すみません。不勉強で、『幕末太陽傳』持ってはいるんですけど、いつか見ようと思って。DVD持ってるんですけど、見てないっていうね。
【山下】あれはフランキー堺がいいです。フランキー堺じゃなかったら、あんまおもろくなかったかも。川島雄三、ちょっと変わってるもんね。独特な感じだからね。
【三浦】『居残り佐平次』どういう話かっていうと、たまたま飲み屋で知り合った4人組がいて、その4人組と佐平次が一緒に廓に行くんですよ。遊郭にね。いっつも吉原行ってるから、品川でも行こうじゃないかって知らないとこ行くんですよね。
【山下】品川にもあったんですよね。
【三浦】品川の遊郭、四宿って言って、新宿とか品川とか。
【山下】新宿は内藤新宿ね。あと、北千住。
【三浦】もう1個はどこだったか。
【山下】板橋です。
【三浦】板橋か。その四宿に必ず女郎屋があって、そこに4人+佐平次の5人で行くんですけど、金もないのにどんちゃん騒ぎして、もう事前に話してるんですよね、4人とは。「もう1円でいいから」って1円もらって、「その1円を俺の母親のところに持って行ってくれ」と、そうすると1か月なりなんか暮らせるから、要は居残りっていう金を払わずにそこに籠城するのを決め込んでるんです。
【山下】だから、終わってから払うものなんですよね。先払いじゃないんですよね。
【三浦】そうです。先払いじゃない。一夜明けたところで勘定取りに来るんです。若衆さんっていうね。若い衆って書いて若衆っていうんですけど、若衆さんが「勘定を」っていうと、佐平治は「おっとっとっと」って言ってごまかして。
【山下】ごまかされるほうも大変ですよね。
【三浦】ちょっと風呂に入るからとか、飲み直しだから、「それは裏をお返しになるわけで」って言ったら、「そうだよそうだよ」って言って、どんどん引き伸ばすんですよね。そのうち、朝帰った「よったり」、4人を「よったり」って言うんですけど、「よったり」が「来るよー。あの籠に乗って」って。そこでまたここでどんちゃん騒ぎするよ」って、引っ張っといて来ないわけですよね。
【山下】将来のお客さんが来るかもしれないと思ったら。
【三浦】そうやって若衆をだましながら。最終的には金がないんだよねっていうことがわかり、部屋からたたき出され、布団部屋に籠城するんですけど、佐平次は人柄もいいって言ったら、語弊がありますけど、面白いやつなんで、要は女郎屋が混んでくると、若衆もお客さんの相手できないし、女郎も来ないわけですよ。いろんな客のとこ、まわんなきゃいけないからね。そのときに佐平次が行って、相手するわけですよ。
【山下】ほぼ、たいこもちじゃないですか。
【三浦】そうそう、たいこもちみたいなもん。かっつぁんのとこ行って、勝五郎って人のところ行って、「よっ! かっつぁん、色男だね」とか言いながら、うちかっつぁん、うちかっつぁんってのべつまくなし言ってますよって。まあ1杯みたいな。酒も飲まされ、そこに遊女がやってきて、この人誰みたいになるんですけど。
それで、ずーっと居続けてなんと人気者になるんですね。
【山下】いいじゃないですか、スター。
【大野】インフルエンサーですね。
【三浦】面白くないのがほかの若衆。あいつがご祝儀全部持っていっちゃってさ、面白くねえよなって、旦那に言ってあいつたたき出してもらおうぜって言ったら、旦那が佐平次を呼んで、「こっから出してもらうのはありがたいんですけど、私はここ1歩出ると、お縄になる凶状持ちなんです」と。要は出たら犯罪者です。嘘なんですけど。そんなやつをここに置いとくわけにはいかねえって、何十両かの路銀も渡し、いい着物も渡して、「どうぞ、お引き取りください」って。それが仕事なんですよ、そいつの。居残ってて最後に金をせしめて、着物までもらって履物までもらって出てくと。
【大野】すごいね、押しかけ強盗みたいな感じですね。柔らかい強盗。
【三浦】強盗じゃないですよ、無理やり盗ってないから。
【大野】相手も気持ちいいんかな。もしかしたら。
【三浦】いや、気持ちよくないですよ。こんな犯罪者、自分の商売にさせてやれないじゃないですか。犯罪者おいといたら。
【大野】あ、そうか、そういうことか。
【三浦】とにかく出てどっかすぐ行ってくれと。嘘なんですけど。そうすると、出ていきますよね、鼻歌かなんか歌いながら、フラフラしてると、その若衆がやってきて、「お前、こんなとこでのんびりしていいのか」って、「あんたんとこの旦那はいい人だね、俺は別に凶状持ちでもなんでもねえんだよ」って、「知っときな、居残りで有名な佐平次っていうのは俺のことだ」って言う。旦那のところにその若衆が戻って、そっからがサゲなんですけど、これがいくつかのパターンがあって、1番おおもとにあるのが、昔の江戸の言い方でだますっていうのを「おこわにかける」って言うんですよね。
【大野】おこわにかける。
【三浦】「あの野郎、おこわにかけやがったな」って言うと、若衆が「あなたの頭はごま塩ですから」っていう。これがなんだかよくわかんないサゲだなっていうんで、みんな変えたりするんですよね。
【山下】赤飯のおこわをいってるのか。ごま塩をかけたいうことでね。
【三浦】そうですそうです。「あなたの頭はごま塩ですから」っていうのがいわゆる原点なんですよね。
【山下】それ、最近はやらないんですか。みんな。
【三浦】あんまやらないですね。
【大野】わかりにくいから。
【三浦】誰もそんなこと言われてもわかんないし。
【大野】おちがわからないとね。
【三浦】この間、白酒がやってたサゲは、「いただいた金で蕎麦屋でもやろうかってやつは言ってますぜ」って言ったら、「一杯食わされた」
【山下】ああ、なるほどね。わかりやすいですね。
【三浦】あとね、もう1個あった。志らくがやっていたのはどうだったっけな。あ、そうだ、「あの野郎、裏口から連れ戻しましょうか?」って言ったら、旦那が「あんなやつ、裏返されたらたまんね」って。よく裏返すって言うじゃないですか。初会と裏を返すっていう。要はお店も女郎屋も料理屋とかも1番最初に行くのを一見って言って、一見で行ってすぐ2回目行くのを裏返すって言うんです。
【山下】あ、そうなんですね。知らんかったわ。
【三浦】2回目すぐ行くのを裏返すって言うんです。3回目からなじみ。
【山下】ああ、そうなんですね。知らなかった。
【三浦】初めて品川の遊郭に佐平次が来たから、「あの野郎とっ捕まえて裏口から連れ戻しましょうか?」って言ったら、旦那は「ああ、もうやめとけやめとけ。あんなやつに裏返されたら、たまんね」って。これ割とストンときますよね。
【山下】なるほどね。
【大野】すっきり。
【三浦】割とそのサゲは志らくも談春もそれだったかな。
【山下】洒落てますね。裏を返すって言葉がわからなかったから、今度聞いたらわかりますね。
【三浦】これ、なかなかいいサゲで。まあ、談春の居残りは長いですね。70分くらいやってます。
【大野】長いですね。
【山下】70分ってすごい体力だよね。70分できるって一人でね。
【三浦】白酒は30分くらいで。流れが一緒なのに、なんで30分、40分差が出るんだろうって。
【山下】それはなんか話がはしょってあるんですか?
【三浦】話ははしょってないんですけど、1つのエピソードを長くするのが談春なんです。
【山下】それができるってことですよね。
【三浦】できるんですね。
【山下】すごいね。それは創作能力だね。やっぱり。
【三浦】あと語り口を少しずつ変えていったり。居残りは根多出ししてないと、居残りに出会うことって結構ないですけど、出会ったときは「あ、居残りだ」と。枕でだいたいわかるんで。これ、いいなって思いますね。
【山下】いろいろな言葉を教えていただいて、ネタ出し……。
【三浦】あとそうですね。好きな話。暗い話ですけど、悲惨な話ですけど、『ねずみ穴』。
【大野】『ねずみ穴』
【三浦】『ねずみ穴』ってあるんですけど、ちゃんと説明できるかな。元々田舎に住んでた兄弟がいるわけですね。お兄ちゃんと弟が。お兄ちゃんと弟で遺産分けをして、お兄ちゃんは江戸に出てきて、地道に商売をして結構大きな御店(おたな)、御店って、お店をやってるんですけど、弟は地元に残って財産食いつぶしちゃってなくなっちゃうんですね。口調は全部田舎者の口調でやるんですよ、2人とも。「なんでごぜえます」だとかそういうね。で、弟がお兄ちゃんとこで、「ここで雇ってくれよ」って来るんだけども、「ここでは働かせらんねえ、その代わり、商売のネタやるから、それで商売を起こせ」って言って、あげる、帰すんですね。それで、兄ちゃんいくらくれたのかなって見ると、三文、もう300円みたいなもんですよね。30円とかね。それで、無性に腹が立って、こんなもんって投げつけようとするんだけど、待てよ、ちょっと頑張ってみようかって、その三文を元に地道に商売をしていって、弟もそれなりの店持つんですね。そこまでいいですよね。いいんだけど、ちゃんと商売がうまくいって、弟は三文のこと、恨みに思ってて、兄ちゃんのところに三文返しに行くんですけどね。そこで、お兄ちゃんは「あのとき、お前に何両とか渡したらその金すぐ使っちまうだろう、だから三文にしてお前が心入れ替えて、ちゃんと商売やるのを兄ちゃんは待ってたんだ」と。「今日は酒でも飲もう」と2人で酒飲み始めたんですけど、その兄ちゃんとこ行く前に、冬で北風が結構吹いていて、江戸って火事が多いから、風向きによっては隣町の火事も全部もらい火して、焼けちゃったりするから。
【山下】追い風になっちゃうとね。
【三浦】蔵がいくつかあるんですね。弟のところに財産しまっとく蔵が。商売によっては質屋だったら人のもの預かってたりするし、蔵があるのに。店の者にねずみ穴ってちっちゃいねずみが出入りするような穴、あそこをちゃんとふさいどけと。そっから火が入ると大変なことになるから。ふさいどけって言うんだけど、それを手下の者がふさいでないんですよ。それで飲んでるうちに火が出るんです。弟の街のほうで。「おらんちのほうだ」ってね。
【山下】カンカンカンカン、火事だ、火事だってね。
【三浦】酒飲んでるときは、「火事でおめんとこが火事で焼けちゃったら、俺の財産くれてやるからよ」みたいな調子のいいこと兄貴が言うんだけども。
【山下】飲んでるから。
【三浦】飲んでるから。半鐘がすげえ鳴って、「おらんちのほうだ」って行くけど、焼けちゃうんですよね。焼けちゃうんですよ!
【山下】大変じゃないですか。
【三浦】大変なんですよ。
【山下】努力したのに弟は。
【三浦】それで金を借りに行くんだけども。
【山下】兄貴のとこに?
【三浦】そうそうそう。任せるって言ったじゃねえかって。
これ、出てました?
【山下】出てなかったんですよ。そうなんですよ。
(つづく)
文字起しブラインドライター担当:高橋
ご依頼ありがとうございました。
落語の面白さ、奥深さを知ることができました。特に、昔は使われていた言葉でのサゲが今は使えない(聞き手に面白がってもらえない)ために落語家さんそれぞれでサゲを変えているというのはとても面白いと感じました。演出の仕方もそうですが、サゲの作り方などでも落語家さんによる違いがあり、その好みでいわゆる「推し」が決まってくるのかなと思いました。落語はちゃんと聞いたことがなかったので、聞いてみたいと思います。
ありがとうございました。
テキスト起こし@ブラインドライターズ
(http://blindwriters.co.jp/)
以下(つづき)
【山下】で、どうなったんですか? 火事が出て。
【三浦】「火事が出てお前の店が燃えたら、今度は全財産をくれてやる」と言って……言ったんだけども、その真夜中にけたたましい半鐘の音と。それで、実際家に戻ってみると蔵も焼け落ちてて。番頭に「鼠穴を塞いでおくように」って言ったのを番頭が忘れて燃えてしまうと。で、そこからどん底の生活になるわけですよ。
【山下】弟の家が。
【三浦】あ、弟。で、まあ前段は言わなかったですけど、奥さんも病気になり、娘を連れてまた借りに行くんですよね。
【山下】兄貴のところにね。
【三浦】兄貴のところに。そしたら。
【山下】そしたら?
【三浦】「全財産をくれてやると言ったのは、酒の席の冗談に決まってるだろ」というふうに追い返されると。門前払い。それで、そしたらその娘が「私が廓に身を売ります」と。吉原に。
【山下】なるほど。五十両と。
【三浦】ええ。で、二十両の……。
【山下】二十両なんですか?
【三浦】……金を作るという。二十両、これはたぶん何両っていうのは別にあんまり決めごとはなくて。
【山下】ああ、そうなんですね。なんかいつも五十両っていうのがよく出てきますが。
【三浦】それで、その娘を売った金を元手に商売をしようと思うんだけれども、その金を懐に入れて帰る途中に……どうなると思います?
【山下】あ、そのお金が無くなる。
【三浦】掏られるんです。
【山下】なるほど。
【大野】さんざんだな。
【三浦】掏られて、絶望した弟が首を括ろうとして、木に帯を引っ掛けて、乗っていた石をポーンと蹴ると、「おい、おい、お前どうしたの? 起きろ、起きろ」って兄貴の声が聞こえる。
【山下】まさかの。
【大野】おおー。
【山下】まさかのあれですか?
【三浦】夢だったという。
【大野】出たー。
【山下】まさかの夢落ちですね。そうか、夢落ちも結構あるんですね。
【三浦】夢落ち、あるんですよ。
【大野】初めて聞きました。
【山下】でも、なんかそれでも救われますね、少し。
【三浦】みんな知っているから救われるんだけれども、これ知らないで聞いたら本当嫌な話ですよね。
【山下】嫌な話ですよね。本当に。
【三浦】で「ここどこだ?」って言ったら俺の家だ、「火事は、火事はどうなった?」って、「火事はお前なんのことだ?」って。「お前、夢見てたな?」って。で、「夢か、ああよかった。俺あんまり鼠穴を気にしてたから」っていうところはサゲがまた難しくて、「夢は土蔵の疲れ」だって。「夢はね、五臓の疲れ」だって。
【山下】ああ、五臓六腑のことね。
【三浦】五臓。五臓が疲れてると夢見るって。「夢は土蔵の疲れ」だっていうのがサゲなんです。
【山下】なるほどね。駄洒落ですよね。
【三浦】駄洒落です。
【山下】なるほど。
【三浦】ある種サゲが、これはどうでもいいっちゃいいんだけど、こういう夢だったという。嫌な話なんですけどね、『鼠穴』。
【山下】でもまあ、兄貴の言うことも分かるけどね。
【三浦】兄貴はでも本当は、夢以外、夢の内容以外ではいい人。
【山下】ね、いい人ですよね。
【三浦】三文しか渡さないとかね。
【山下】商売の基本かもしれないですね。
【三浦】そうですね。
【大野】そういうことなんですね。
【山下】「お前自分でやってみ」っていう。割と経営論に繋がるんじゃないかっていうね。でも今日は「どんな話が好きですか?」っていって『居残り佐平次』と『鼠穴』という割と珍しい話を。
【三浦】ああ。ちなみに、これ両方ともやっぱり立川談志がとても得意にしていた話ですね。
【山下】そうなんですね。すごいですね。
【三浦】やっぱりもしかしたら、今はそんなに立川流聞いてないですけど、落語にはまるきっかけを作ってくれたのは談志師匠なんで、談志をこう、やっぱり十数年前からずっと聞いてきて、それがなんかどっか身について、染みついてるのかもしれないですね。
【山下】そうですね。
【三浦】談志がやっていた話……『居残り~』もそうだし、『鼠穴』もそうだし、それが好きなのかもしれないです。
【山下】そしたら来月、和田さんに来てもらって談志のお話とかも楽しみですね。
【三浦】ああ、そうですね。和田さんは晩年の談志にすごく近くにいた人なんで。
【山下】ですよね。
【三浦】その話してもらうだけで、とても贅沢な時間が。
【山下】ラジオ番組も作られてたし。
【三浦】面白いと思います。
テキスト起こし@ブラインドライターズ
(http://blindwriters.co.jp/)
担当:木村晴美
いつもご依頼いただきありがとうございます。
今回もみなさんのお話の中に出て来た「鼠穴」談志さんで聞かせていただきました。
これまで聞いていた落語とは一味ちがい、夢の中、の出来事に、談志さんの話に引き込まれ、笑いもほとんどないくらいでした。途中途中にちょこっと入る談志さんの毒舌気味なお話にくすっとしながら、でした。夢から覚めたやり取りがおかしくて、いつの間にか聞くことに力が入っていたのが、ふっと抜けた感じでした。みなさんが話されているので話がどんなふうに流れるか分かっていたのですが、実際に談志さんが話されているのを聞いて「鼠穴」の世界観に引き込まれ、ひたらせていただきました。
今回も、楽しませていただき、ありがとうございました。