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第4話「本当の旅立ち」
時はアグライア歴 1865年
7月2日(月)
●(過去)
ハル 10歳
トレス 24歳
トレス「さぁ、今日も修行するぞ」
ハル「うん♪」
トレス「まずはいつも通り、木の剣で上から下にまっすぐ素振り100回」
ハル「はいっ」
ハル「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・・・98・99・100うぅ」
トレス「よくがんばったな」
ハル「ハァハァ、うんうん♪次は?」
トレス「同じく、木の剣で上から下にまっすぐ素振り100回」
ハル「えっ!」
トレス「黙ってやる」
ハル「はいっ」
ハル「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・・・98・99・100うぅ」
ハル「ハァハァハァ、次は?」
トレス「同じく、木の剣で上から下にまっすぐ素振り100回」
ハル「えっ!!」
トレス「黙ってやる」
ハル「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・・・98・99・100うぅ」うぅぅぅ」
ハル「ハァハァハァハァハァハァ、終わりました」
トレス「同じく、木の剣で上から下にまっすぐ素振り100回」
ハル「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・・・98・99・100うぅぅぅぅ」
・・・
ハル「ハァハァハァハハァハァハァハァハァハァハァ」
ハル「ハァハァ、トレス・・・、ハァハァ、もう1000回はやったよ」
トレス「同じく、木の剣で上から下にまっすぐ素振り100回」
ハル「1・・・2・・・3・・・4・・・5・・・6・・・」
バタッ
ハルは地面に座り込んだ
トレス「誰が終わりと言った?」
ハル「ひっ・・・ひどいよ・・・トレス・・・ハァハァハァ・・・これじゃ・・・いじめだよ・・・ハァハァハァ」
ハル「もう、木の剣も・・・持ち上がらないよ、限界だよ・・・」
トレス「怪我しそうなのか?意識なくなりそうなのか?分かれ道の扉に行きそうなのか?それなら危ないからすぐにやめろ!それを怒ったりはしないからそこは安心しろ。無理して怪我したら修行の意味なんかないからな」
ハル「そうじゃないよ・・・ただ・・・もう・・・木の剣が上がらないんだよ」
トレス「誰がそう言った?」
ハル「ハァハァ・・・なに言ってるんだよトレス・・・今日のトレス・・・おかしいよ・・・ハァハァハァ」
トレス「だから、誰が限界って言ったんだ。オレか?」
ハル「ボクが言ってるんだよ・・・」
トレス「そうだな、ハルが言ってるんだ、自分で限界って決めたんだ」
ハル「そうだよぉぉぉ、もう限界なんだよぉぉぉ」
トレス「わかった、もう限界なんだな?じゃあと1回がんばって剣を振ったら、今日の修行は終わろう」
ハル「ハァハァハァ・・わかったぁぁ・・・」
ハルはフラフラしながらも力を振り絞りながら立ち上がり、木の剣をどうにか持ち上げ、力いっぱい最後の1回を振り抜いた
ブンッ
トレス「限界じゃなかったのか?できるんじゃねぇか!」
トレスは怒った表情に変わり大きな声で
トレス「そんな力強くできるじゃねぇかっ!!」
ハル「最後って言うから・・・」
トレスは強い口調で
トレス「ハルッ!さっき限界って言ったよな?なのにあと1回できたよな」
ハル「うん・・・」
トレス「限界って決めつけたのは誰だよ」
ハル「ボク・・・」
トレス「限界を今、超えたやつは誰だよ!」
ハル「ボク・・・」
トレスはさらに強い口調で
トレス「限界です!なんて気持ちはな自分が決めちまうもんなんだよ。あきらめたらそこが本当の自分の限界なんだよ!!」
ハル「うん・・・」
トレス「ハルは今日、限界を1回だが超えたんだよ。そんな力がハルの心には秘められてるんだよ!」
ハル「うん」
トレスの顔が穏やかな顔になり
トレス「ハルってヤツはな・・・・そんな凄えヤツなんだよ!!わかったかっ!!!」
ハルは笑顔になり
ハル「うん♪」
トレス「今日の修行は終わり!100点だ」
ハル「やったぁぁぁぁ♪」
トレスはハルの頭をグッチャグチャに撫でた
ハル「えへへっ♪」
トレス「ただなハル、さっきも言ったが限界を超えて怪我や意識失ったり倒れてしまうならそれは限界を超えてはならないものなんだ!そこちゃんとわかるか?」
ハル「そうだね、さすがにそれはわかってる!あくまでも体に問題ないあと1回。気持ちに負けないあと1回ね」
トレス「その通りだ!えらいぞ♪」
トレス「よし、メシだぞ、手を洗ってこい」
ハル「待って!」
ハル「8・・・9・・・10・・・11・・・12・・・」
トレス「・・・」
ハル「13・・・14・・・100うぅぅぅぅぅぅぅぅ♪ハァハァハァハァハァハァ♪」
バタッ
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
トレス「倒れるほどやるなと言ったはずだ!」
エスタ「体は大丈夫、そこはちゃんとする!今やったのは気持ちで負けてた分なんだ!それにこのハァハァハァは疲れたあとの気持ちいいハァハァハァだから♪w」
トレス「・・・・ハル・・・・オマエってヤツは・・・・まったく・・・」
トレスは・・・・振り返り腕で涙をぬぐった
ハル「そっか。限界は自分で決めてるもの、あと1回できるかもね」
●(現在)
そして・・・
7月3日(月)
(午前0時)
ハルは叫んだ
ハル「あと1回できるんだぁぁぁぁ!」
ハルは叫びながら、ガバッと目を見開いてベルガスヘルに挑もうと上半身を起こそうとした
トレスはハルの体を押さえて
トレス「動くな・・・ハル」
マリスはハルに回復魔法をかけている
マリス「動いちゃダメですよ、ハル」
リトラバード 「無理しやがって・・・」
ピピン「逃げろ隊長が、がんばっちゃった!」
ハル「みんながいる・・・。これは分かれ道の扉に行く前の夢?神様からの最後のプレゼント?」
ハル「なんでもいいや・・・」
ハル「最後にみんなに会えてよかった・・・」
ハル「みんながどれだけ大切な存在だったか改めてよくわかったんだ・・・」
ハル「みんな、今まで本当にありがとう」
ハル「みんなが大好きなんだ・・・」
ハル「メディアスを抜けてからちゃんと挨拶もできなかった・・・でも、それが今できた、よかった・・・」
ハル「心配しないで、やられた痛みはまったくないよ、気持ちいいくらいなんだ・・・安心してな」
ハル「みんな・・・大好き・・・」
ハルは静かに地面に身をまかせ、そしてゆっくり・・・・・瞳を閉じた
ハルは一筋の涙を流し
ハル「本当に・・・ありが・・・とう」
トレスは大きな声で
トレス「なっ!?ハルッ!!」
マリス「・・・」
リトラバード「えっ!?」
ピピン「嘘でしょっ・・・」
トレスは涙を流しながら
トレス「おぃ!ハル!!分かれ道の扉に行くんじゃねぇ〜ハルッ!なんでだマリス!大丈夫って言ったよな!!!」
リトラバードも涙を流しながら
リトラバード「ハル、オレも大好きなんだぜ、だからがんばれ〜」
ピピンは大泣きをしながら
ピピン「嘘でしょ、ハル〜〜〜ハルーーーーーー!」
そして悲しみの静寂な時間が過ぎた・・・
マリス「ハル・・・」
マリスは回復魔法をやめ、マリスの涙がハルの頬に落ちた・・・
それを見て、トレス、リトラバード、ピピンは、すべてを悟り・・・力なく地面に腰を落とした・・・
そして・・・
マルスの穏やかな顔が別人のような恐ろしい顔になり、みんなをにらみつけ
いきなり大きな声で
マリス「そんな!わけないでしょ!!!」
トレス、リトラバード、ピピン「!?」
そして・・・マリスはハルの胸ぐらをつかみ、往復ピンタをしをしている
ピピン「マリスやめて!いくらなんでもそれは可愛そすぎる、もうやめてぇぇぇぇぇぇぇぇえ、気持ちはわかるけど・・・今だけはそっとしてあげて・・・お願い・・・マリス!!」
マリスの手が止まった・・・
マリスはピピンを険しい表情でにらみつけ
マリス「生きてるのに??」
トレス、リトラバード、ピピン「えっ!!」
マリスはまたハルの胸ぐらをつかみ、往復ピンタをしている
マリス「わたしの回復魔法を甘く見ないでよね!!それにね、今から死にますって人があんな長くしゃべるわけないでしょ、しかもなにが、心配しないで、やられた痛みはまったくないよ、気持ちいいくらいなんだ・・・安心してな、よ」
マリス「ただの、わたしの回復魔法のおかげよ!」
ピピン「えっw」
マリス「それにハルの『あと1回できるんだぁぁぁぁ!』の気持ちがあったら分かれ道の扉に行かないでしょよ!逆になんでもないのに勘違いして気を失うほうが危ないくらいよ」
トレス「それでビンタをw」
マリス「そうよ!」
ハル「いだい、いだい、いだいです」
トレス、リトラバード「!!」
ピピンは涙を流しながら
ピピン「ハルッ!ハルッ!・・・ハルが・・・生きてる・・・本当によかった」
ピピン「でも・・・マリス・・・ある意味凄いけど、ひどいし、凄いし、もうなにがなんだかわけがわからくなってきた」
マリスは穏やかな表情でハルを強く抱きしめた
マリスは涙を流し
マリス「生きててよかった・・・ハル♪」
ハル「はゔぃ、生ぎで・・まず」
ハルのほっぺが腫れているw
みんなの悲しい表情は喜びの表情へと、悲し涙は嬉し涙へと変わった
トレス「そうか〜生きてやがったか、よかったよかった」
リトラバード「ハルが生きてた・・・よかったぁぁぁぁぁあ」
ピピン「マリス、次に回復したら、わたしに叩かせて!」
マリスはたくらんだような表情で親指を立てピピンに返事をした
腫れたほっぺで
ハル「ぞれだげば、がんべんじでぐだざい・・・」
マリスはとても穏やかな表情で
マリス「もう少し、そのままにしててね」
ハルは腫れたほっぺで
ハル「もう、いみが・・・わがりまぜん・・・」
マリスはハルの左横で両ヒザをついて
左手はハルの脇腹の右後ろに当て
右手はハルの左頬に当て
回復魔法の呪文を唱えている
「†§♭〻∈∧∽†」
ハル「もう・・・だだがないでぐざじゃいね、ぢんじゃいまずがら」
みんな一斉に笑った
嬉しくて嬉しくてみんな笑った
【マリス 26歳 女 僧侶】
メディアスのメンバー。美しく穏やかな顔立ちと性格は、冒険者の間でも人気。だがメディアスのメンバーは知っている・・・実は怒るととても怖い2面性を持つメディアスのお母さん的存在。数多くの回復魔法を習得し、様々な援護魔法も使いこなす
それから少し時が経ち・・・
マリス「もう大丈夫よ。ハル」
ハルは上半身を起こし
ハル「マリス、トレス、リトラバード、ピピン」
マリス、トレス、リトラバード、ピピン「ハル♪」
ハル「助けにきてくれたんだね。本当にありがとう」
ハル「ごめん、トレス・・・無理だけはすんなよって言ってくれてたのに・・・オレは・・・」
トレス「それはいいさ、生きてりゃいい・・・生きてればいいんだ」
トレス「ミスしたり、負けたり、傷ついたりしてもいいんだよ。それを次に活かせたら、その時にすべてが本当の勝ちになる。活かせないなら本当の負けだ」
ハル「本当にそうだね」
マリス「無理は許しませんよ!」
ハル「はい♪ありがとう」
マリス「ちゃんとわかったならいいわ♪」
ハル「うん。でもなんでここがわかったの?」
リトラバード「北の門番のレベットさんだよ。レベットさんが日が暮れてもハルが帰ってこないから、おかしいって各門にまわってハルが帰ってきてるかを調べてくれて、やっぱり街に帰ってないからって、トレスに教えに来てくれたんだ。それでメディアスのみんなで集まりすぐに探すことに決めたんだ」
トレス「そしてレベットが、カフカの森で時間をくっちゃまずいからって、ナガラ山のふもとまで、門番仲間を1人連れて馬車で送ってくれたんだ」
ハル「そうだったんだ・・・。いっぱい迷惑かけちゃったなぁ。ちゃんとお礼を言わなきゃだね・・・」
トレス「そうだな」
トレス「それでハルがうちらと以前、よくベルガスを見かけた方向を中心に探してたんだが、この暗闇じゃなかなか見つからなくてな」
マリスは微笑みながら
マリス「そしたらね、誰も気づかなかったのに、ピピンが山の先で一瞬の光を見たって言うのよ」
マリス「さすが、ピピンよね♪」
ピピン「えへへ♪」
ハル「ベルガスの集団にビビった時か・・・」
ピピン「そうだったんだwハルらしい」
ハル「ピピン、ありがとうな」
ピピン「今回は生きてたから、特別にタダよ、本当に命が危なかったんだからね、わかってるよねっ!!」
ハル「それは反省してます・・・」
ピピン「あっそれと、なんだか必死な避難カプセルwみたいな穴から、荷物も持ってきといたから」
ハル「あっ・・・ありがとう」
マリス「今でもやんちゃなハルは、みんなに愛されてるわね」
ハルは照れて頭をかいた
トレス「さて、ハルが動けるなら、もうちょっとキレイな場所に移動して野営しようぜ」
ピピン「さすがにこれじゃねぇ〜呪われるわ・・・」
ハルがあたりを見渡すと、40匹以上のベルガスと1体のベルガスヘルが倒れていた
ハル「みんな・・・さすがすぎる・・・」
トレス「さぁいくぞ!」
ハルは立ち上がり
ハル「はい」
マリス、リトラバード、ピピン「はい♪」
メディアスのトレス、マリス、リトラバード、ピピンとブレスバリィのハルは焚き火に使えそうな枝を拾いながら、野営できそうな場所を探しながら山道を移動した
ピピン「ハル。それにしても、よくこんなとこまで1人できたわね。敵に遭遇してなかったら帰りはちゃんと帰れたのかしら?」
ハル「以前ピピンに教わったのを思い出しながらちゃんとマッピングしたからな」
ピピン「あら、えらいじゃない!見せてっ」
ハルはマッピングの紙をピピンに見せて
ハル「ほらっ」
ピピン「え・・・えぇ・・・(笑)」
トレス・マリス・リトラバードも覗き込む
そして、みんなが笑いをこらえている・・・
ピピン「なっなによこれ(笑)小さい子供が書いた山の絵じゃない!しかも、自分デカッ(笑)なんで自分も書くのよ(笑)」
ハル「いる場所だよ!」
トレス「みっみっ・・・みんな笑うな(笑)ぶははははっ」
リトラバード「トットッ・・アハハハ・トレスも笑・・うな」
マリス「ハッハル・・・に・・・あははは・失礼よ」
ピピン「ギャハハハハハハ」
ハル「皆さんとても失礼ですからね・・・」
ハル「自分でわかれば、立派なマッピングだからな!」
そんな会話をしながらみんなで歩き
リトラバード「おっ!ちょっとした平地になってて、ここがいいんじゃない?」
トレス「そうだな、左右後ろが岩で囲まれて頑丈そうだ、見張りも楽だな、ここにしよう」
その中心に、ここに来るまでにみんなが山道で拾った枝を集め、ピピンが器用に焚き木を作り、あまりの枝はハルが焚き木から少しだけ離して集めて置いた
ピピン「リトラバードお願い♪」
リトラバード「はいよ」
リトラバードはレミーの杖を握り
火の魔法の呪文を唱えた
「∞£∫▼⊇§∞」
リトラバードは杖の先から炎を出し焚き木に火をつけ、焚き火となり、とても心地よい暖かさと灯りになった
ピピン「それ、ホント便利ね・・・」
リトラバード「このためだけに修行してきたからな・・・って、おい!」
ハル「いつものメディアスだ・・・」
リトラバード「ハルはクビになってるけどなw」
ピピン「ねっw」
リトラバードとピピンの2人はクスクス笑っていた
リトラバードは『レミーの杖』を手に入れていた!
トレス「見張りと焚き火の管理は、反省としてハルな!」
ハルな苦笑いをしながら
ハル「もちろんです・・・」
トレス「マリスの回復で元気だろ、夜明けまで4時間半くらいか、頼むわ」
ハル「うん、みんなは寝てね」
焚き火を中心にそれぞれが寝袋で体を包み横になった
数時間経ち・・・
ハル「ついこの前まで、これが普通だった。でも今はとても懐かしいく感じる」
・・・
トレス「ハル」
ハル「トレス!寝ないと・・・」
トレス「大丈夫だ、ちゃんと寝かせてもらった」
ハル「うん」
トレス「あと1回できるんだぁぁぁぁ!ってあの時の修行か?」
ハル「そう、1100回の限界を超えた時の修行」
トレス「そうか♪」
ハル「本当に、ごめんなさい」
トレス「もうやあやまるな、今生きてるだろ。それでいいんだ」
ハル「うん」
トレス「まぁ、クビにした次の日に、ハルに分かれ道の扉なんかに行かれたら、オレはみんなに一生恨まれるがな(笑)」
ハル「あはは」
トレス「PTって凄いだろ」
ハル「本当に凄いよ・・・」
トレス「ハルもいつか、そんなブレスバリィにしてみろ」
ハル「できるかなぁ・・・いや、作ってみせるよ」
トレス「そうさ、ハルならそれができると思ったからPTをすすめたんだしな」
ハル「ありがとう、トレス」
トレス「あぁ♪」
トレス「なぁ、ハル」
ハル「ん?」
トレス「オレが1番戦いたくないヤツだれだかわかるか?勝てないかもしれないヤツだ」
ハル「オレの知ってる人?」
トレス「知ってるなぁ」
ハル「誰だろ・・・・わからないなぁ・・・・あっ北門のレベットさん?」
トレス「違うよ」
ハル「じゃ誰?」
トレス「ハルだよ」
ハル「えっオレ?」
トレス「そうさ」
トレス「ハルには、様々なことを修行で教えてきた」
ハル「うん」
トレス「その1つ1つの気持ちが、オレがハルくらいの時より、大きかった」
ハル「・・・」
トレス「オレはそれを感じるたびに、抜かれた感じで嬉しかったんだよ」
ハル「抜かれて嬉しいの?」
トレス「まぁぁぁ、それはハルもいつかわかるさ」
ハル「・・・うん」
トレス「1つ1つの気持ちが凄いハルだからこそ、嬉しさも人より何倍も感じるし、悲しみや苦しみも何倍にも感じる」
ハル「・・・うん」
トレス「だからハルは誰よりもグチグチする、だから誰よりも前に進む、そして人の気持ちも誰よりも感じる」
トレス「リーダーってのは、ずっと成長し続けなきゃ良いリーダーにはなれないとオレは思ってる。それが出来そうなのが、様々な感性を持つハルなんだよ」
ハル「成長・・・感性かぁ」
トレス「しかもな、その感性に加えて、さっきのベルガスヘルだ」
ハル「ベルガスヘル?」
トレスは苦笑いしながら
トレス「ベルガスヘルの傷を見て、ゾッとしたよ・・・(笑)」
ハル「なんで?」
トレス「あの左足のモモの細かい無数の傷、さらに右足のモモの深い一撃」
ハル「あぁ、あれかぁ。自然と・・そうなって」
トレス「ベルガスヘルを相手に、落ち着いて踊るような攻撃、さらには駆け引きをまるで楽しむような攻撃、しかも・・・自然に」
ハル「アハハ」
トレス「アドレナリンですぎだろ(笑)」
《アドレナリン》
高い興奮状態になると分泌されるホルモン。体の運動能力を上昇させたり・脳を活性化させ集中力を大幅に上げ頭の回転をも早くする。痛みなどを麻痺させる効果もある
ハル「恥ずかしい・・・」
トレス「ハルの戦闘はずっとそうだ。しかもピンチになるほど楽しみやがる」
ハル「あるかも・・・(笑)」
トレス「なにをされるかわからない戦闘なんて・・・ハルとだけはやりたくねぇ」
ハル「どうせ戦っても、寝ションベンしたこと言ったりするんでしょ。力が入らないよ(笑)」
トレス「アハハハハ、あったなぁ、アハハハハ」
ハル「アハハハハ」
トレス「まぁ真面目な話し、そんなハルがPTを作ったらどうなんだろうなんて楽しみもあるんだ」
ハル「ありがとう、オレらしくがんばるよ」
トレス「ハルらしく!それが大切だな!」
ハル「うん!」
トレス「そうだ!ハル」
ハル「?」
トレス「実はな、今度合わせたい人がいるんだ」
ハル「どんな人?」
トレス「それは内緒だ。会ってからのお楽しみだ♪」
ハル「ずるぅぅい(笑)」
トレス「ではもう少し寝かせてもらおうかな」
ハル「うん。トレス、いつもいろいろありがとう」
トレス「おう♪おやすみ」
ハル「おやすみなさい」
トレスは寝袋に入り、ハルは見張を続けた・・・
●(過去)
トレス「ミスしたり、負けたり、傷ついたりしてもいいんだよ。それを次に活かせたら、その時にすべてが本当の勝ちになる。活かせないなら本当の負けだ」
●(現在)
ハル「本当にそうだね・・・うん、勝ってみせるね!」
時間は経ち・・・
(午前4時30分)
ハルは焚き火が消えないように枝を足しながら、見張りを続けていた
そして空がだんだん明るくなってきた
ハル「朝ってこんな嬉しいものだったっけ・・・」
空が明るさを取り戻し、ハルの目の前には広大な空と大地が広がっていた
ハル「暗いと自分のまわりしか見えない。明るいとずっと遠くまで見える」
ハル「まるで自分の心みたいだ・・・」
ハル「ならば、オレはその先も見つめる」
広大な大地の先には、さらに広大な地平線がみえる
そして太陽が昇りはじめ、ハルは心に暖かい光を浴びた
ハルは立ち上がり鉄の剣を抜き、天高くかざし
ハルは大声で
ハル「おはようございます!!」
ハル「オレの心の故郷メディアス。最高の仲間がいる場所。最高の思い出がある場所」
ハル「今まで本当にありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします」
ハル「ブレスバリィは、いつか必ず輝いてみせます!!」
リトラバード「なっ!なんなんだよ!ビックリしたぁぁぁ、おっおはよう・・・」
ピピン「こんなおかしな起こし方するのハルしかいないでしょ・・・・」
マリス「うふふふふふ」
寝たふりをするトレスの瞳に一筋の涙が流れた
トレス「・・・」
マリス「ハル、おはよう。それ以上はやめてあげて、誰かさん起きれなくなっちゃうから」
リトラバードとピピンがクスクス笑っている
トレスは隠れて涙を拭き
トレス「おっおはよう諸君!」
小さな声で
リトラバード「聞いたかピピン、諸君だって(笑)」
ピピン「はじめて聞いたわ諸君なんて(笑)」
トレスは拳を口に当て
トレス「ん、んん♪」
トレス「ハル。改めてブレスバリィおめでとう」
ピピン「おめでとうねっ!」
リトラバード「おめでとうな!」
マリス「おめでとう!」
ハル「ありがとう♪トレス、マリス、リトラバード、ピピン♪」
トレス「困った時はいつでも力貸すぜ♪ただし・・・・ゆっくりやれ!」
リトラバード「ホントそれだよな!(笑)」
ピピン「ホント(笑)」
マリス「うふふ」
ハルは頭をかいて照れながら
ハル「うん、さすがにもうねっ」
トレス「では、メディアスとブレスバリィ、一緒にセイラの街に向かうぞ!」
トレス「オォーーー!」
ピピン「おぅ〜♪」
リトラバード「おーーぅ!」
マリス「おぉーう♪」
ハル「おうぅぅぅぅぅぅぅう!」
ピピン「リトラバード、焚き火の火をお願いね♪」
リトラバード「はいよ」
リトラバードはレミーの杖を握り
水の魔法の呪文を唱えた
「∪∋〻⊆£∨∪」
リトラバードは杖の先から水を出し焚き火の火を消した
ピピン「それ、ホント便利ね・・・」
リトラバード「このためだけに修行してきたからな・・・って、おい!」
リトラバードとピピンの2人はクスクス笑っている
焚き木の火が消え、その煙がまるで昇り龍のように舞い上がった・・・新たな出発がはじまったかのように・・・
トレス「ハル、しんがり頼むわ」
ハル「りょうかい!」
《しんがり》
1番後ろのこと
ハル、トレス、マリス、リトラバード、ピピンの5人は、ナガラ山を降り、カフカの森を難なく抜け、セイラ川の橋を渡り、セイラの街の北門に着いた
[第5話へ続く・・・]
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