🚃岳南鉄道にゴトゴト揺られて

ken-endo

2022年5月22日 22:50

　🚉JR東海道線吉原駅で乗り換えるため、高架橋を渡って、岳南鉄道に乗車です。

　ご覧の通り、おおよそ一時間に2本程度の運行で、単線電化路線です。
　自動改札機に慣れてしまった私にとって、昔ながら改札を通っての乗車はどこか懐かしく、昭和の頃の🚉駅の風景はこうだったなぁ、と思い起こさせてくれます。

　丸善書店の鉄男&鉄子コーナーに面白い📗本があったので、ついっ、うっかり手に取ってしまいました🤣

【『うっかり鉄道』能町みね子著】
幻冬舎文庫の初版本です。
文筆家&漫画家の能町みね子さんのエッセイです。

　この本にも、🚃江ノ電と岳南鉄道が紹介されています。挿絵のイラストもご本人が描かれたのでしょうか🤔
　肩肘張らずにスラスラと、読めます。
　よく見れば、ちゃんと表紙にも岳南鉄道の風景が散りばめられています。

【🎫岳南鉄道一日乗り放題切符】
エッセイ集には400円とありましたが、9年前のこと。

　例によって、🎫一日乗り放題切符「全線1日フリー乗車券」を岳南 🚉吉原駅で購入、現在は720円でした。
切符売り場にも自動券売機ではなく、窓口での現金授受で、切符は昔ながらの厚紙で入鉄式❣️
　昭和の頃は皆、このスタイルでした。

　岳南鉄道の各駅には🗻富士山ビューポイントがあり、岳南吉原駅からの🗻富士山、☀️晴れているとホームのビューポイント。

　それぞれの駅のイラストは別々の方がビューポイントをコンセプトに描かれているようです。

【⑩番目 🚉終点岳南江尾駅のビューポイント】
それぞれの駅のビューポイントのイラストが違います。

　各駅のビューポイントを確かめるのも、アリですね👍🏻
　🚉各駅のホームに必ず👣マークがあり、そこに立てば、このように写せます。

　岳南鉄道は岳南吉原駅から岳南江尾駅間10駅9.2kmを結ぶ単線の私鉄です。最近では工場夜景ツアーがブームとなっていますが、未だ未だ道半ば。みんなで盛り上げて存続路線として確実な歩みが必要です。
　岳南鉄道路線を少しでも紹介していきながら、たくさんの方々に岳南鉄道の魅力をアピールしていくお手伝いができれば、と思います。

　最初のジャトコ前駅の次が吉原本町駅です。

線路は大きく緩やかに弧を描くようにゆっくりと東に向かいます。
　ジャトコは、日産自動車系の計器を納入している部品メーカーです。
　ジャトコ前・吉原本町駅も無人駅なので切符は運転士が回収します。
　吉原本町駅改札を出て前を通る道を右に向かいます。
　一本道ですから👣迷うことはありません。歩いて25分、変形四叉路の上に架橋されています。左手に🗻富士山が見えるその場所に、🪦石碑と今、幟があります。

【「平家越」の碑】
鎌倉時代の昔、富士川はこの辺りを流れていた暴れ川上で、大雨などで幾重にも川筋を変えていました。

　この碑のことを「平家越」と言われています。
　平安時代末期、源頼朝率いる源氏軍と平家の大軍が対峙した源平合戦の緒戦「富士川合戦」があった場所です。

　大河ドラマや📖『吾妻鏡』では治承四年10月24日癸卯(新暦1180年11月13日木曜日)の早暁、富士川の川辺に巣食う水鳥の羽ばたく羽音に驚き、平家軍は戦わずして逃げ去ったことになっています。
　ですが、📖『平家物語』ではもう少し違う角度で富士川合戦を記しています。

　総大将・平小松権亮少将惟盛(23歳)率いる平家軍は3万騎で先陣が富士川・蒲原に着陣。後陣は、今の駿河区手越・宇津ノ谷辺りに着陣し、旧暦10月23日に源平両軍が明日、富士川にて「矢合わせ」をすると定めた、と。

　「矢合わせ」⁉️

　平安時代の合戦には古式ゆかしい「しきたり」、いわゆる作法のようなものがありました。その一つが「矢合わせ」がありました。

　鏑矢と言う特別な矢があります。
　合戦を始めるにあたって、一方の総大将が鏑矢の付いた🏹矢を放ち、相手方の総大将がこれを受けて返答の🏹矢を放って合戦の合図としていました。
　そのため明日、富士川で合戦があると、源平両軍の兵士はもちろん民・百姓までその合図で合戦が始まることが解りました。
　合戦行うのも、〝事前申請〟がエチケットだったのですね。
　なので、義経が鬼神の働きで平家をことごとく討ち破って壇ノ浦合戦では舟の漕ぎ手まで射抜いて源氏方に勝利をもたらすのですが、奇襲や夜襲のゲリラ戦法に慣れていない平家が惨敗するのは、致し方ないことで壇ノ浦合戦後、源氏方は都では失笑を買います。
　源氏の棟梁たる頼朝がとても不快に思ってしまったのも頷けます🥲

【現在の富士川河川敷に咲く彼岸花】
最初はこの辺りで、富士川合戦の遺構や碑を探していましたが見つかるわけが有りません😅

　富士川の河川敷での「矢合わせ」を見て怯えたのは、源氏方地域の富士川東岸の民・百姓でした。
　なぜなら、平家3万に対して源氏は2万。当時の合戦は火縄銃など飛び道具は🏹弓矢ぐらいなものでしたから、人海戦術なのでほとんどが兵の動員数で勝敗が決します。
　源氏方地域の東岸の民・百姓は源氏方の劣勢を憂い山に隠れたり、小舟を出して沖合に出て難を逃れようとします。

【📖『平家物語』巻第五富士川】
岩波文庫刊
『十月廿三日にもなりぬ。あすは源平富士河にて矢合と定めたりけるに、夜に入ッて平家の方より、源氏の陣を見わたせば、伊豆・駿河、人民・百姓がいくさにおそれて、或は野にいり山にかくれ、或は舟にとり乗ッて海河にうかび、いとなみの火の見えけるを平家の兵ども
「あなおびただしの源氏の陣のとほ火のおほさよ。げにもまことに野も山も、海も河もみなかたきでありけり。いかがせん」とぞあわてける。‥‥』

　📖『平家物語』が記す源平・富士川合戦の様子。

　その様子を平家軍は見誤り、源氏軍の動勢と勘違いし、予想以上に源氏軍が大軍であると錯覚した平家軍が浮き足立ちしてしまいます。
　ドローンや双眼鏡が無い時代の戦では、👀肉眼で見えるもので心理的影響が出てしまうのでしょう。
　それにここからは私の推論ですが、🗓昔の暦・旧暦は、太陰太陽暦で🌒月の満ち欠けの周期で一カ月とします。
　朔・一日は必ず🌑新月です。治承四年の10月の晦・末日は小の月ですから、29日。
　旧暦10月24日の早朝は下弦の月で月齢6.3〜7.4辺り。満月に比べて1/4ほどの明るさしかなく、日の出は冬至に向かって毎日2〜3分遅くなっていたことでしょう。
　旧暦10月24日は今の新暦で言うと11月13日。この辺りの日の出はAM06:18分前後です。晩秋の早朝は午前4時頃から薄っすらと🌌夜空が明けて来ます。
　下弦の月の方が上弦の月の方よりやや暗く、深夜に🌒月が上り明け方に天空に差し掛かるため、薄暗い中民・百姓の灯す🔥火を源氏軍と錯覚してしまいます。
　その伏線があって、水鳥の羽ばたく羽音に、平家軍は混乱して逃げ帰ってしまうという頼朝にとっては🤞超ラッキーな戦となってしまったようです。

　　脚本家・三谷幸喜さんが📖『吾妻鏡』に忠実に描くと言うだけあって、細かいところまで描かれているように思います。
　📺大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれていましたね。厭戦ムード漂う平家軍は対岸に陣取っていた源氏軍に怯えたのではなく、明け方一斉に飛び立つ水鳥の羽音に驚き、対戦しないまま、京都に逃げ帰り、平清盛に叱責されてしまいます🥲

　もちろん、〝日本一の👺大天狗〟後白河法皇や丹後局に嘲笑されます。
　📖『平家物語』に、富士川合戦が描かれています。

　鎌倉時代の富士川は、現在の富士川よりだいぶ東を流れていました。今は治水工事や上流の砂防堰などで鳴りを潜めた富士川ですが、当時は☔️大雨などで幾重にも川筋が変わっていました。

　富士川もご多聞に漏れず、〝暴れ川〟だったことを忘れていました🧐
　現在の富士川より「平家越」は、東に3km内陸に入っています。

　頼朝は平家方の大庭景親軍に石橋山合戦で大敗しています。8月23日のことですから、未だ半年どころか二ヶ月前の頼朝は命からがら小舟で持って安房国に落ち延びていました😱
　もっといえば、この石橋山合戦の最中に岩屋の洞窟で梶原平三景時にみつかってしまいますが景時が捉えて大庭景親に差し出していれば、首チョンパでした。

【JR東海道線根府川〜早川間にある「石橋山合戦」の碑】
数あるトンネルの一つ、下を東海道線が走っています。

　頼朝は再起を測る四禽石として、この富士川合戦に掛けていました。それだけに富士川合戦における想いは並々ならぬものがあり、この付近の⛩八幡宮には至る所で戦勝祈願をしています🙏🏻

　岳南沿線沿いではありませんがJR東海道線富士駅から👣徒歩で15分のところにある横割八幡宮を始めとして、岳南沿線沿いの⛩神社に戦勝祈願をしていました。

　吉原本町駅に戻って、再び乗車して比奈駅を目指します。
　比奈駅に向かったのは、『うっかり鉄道』の🚃岳南鉄道の章で、特徴ある☕️喫茶店のことがあり、私も寄ってみたくなったからです。
　「比奈カフェ」、楽しみにします😄
　喉も渇いたし、🧊アイスコーヒーにしようか？やはりブレンドか🤔楽しみにしながら向かいましたが‥‥。

　希望に満ちて、岳鉄を下車。
　　
　見つかりません❗️

　気を取り直して、何か無いかと駅のホームに戻ったら、👍🏻

　あれっ⁉️
👸かぐや姫って、実在していたっけ🤔という話しは横に置いておいて、その「竹採公園」を先ずは実分です。

　比奈駅から真っ直ぐ延びる道を北進して、🪧看板によると、900mとあります。

　高血圧症&高脂肪予備軍の認定を受けそうな私に、🥼ドクターは、一日10000歩は歩きなさいとの助言を思い出し、🦴身体にムチ打って、歩く🚶🏻ことにしました🤣
　緩やかな坂道を歩いていくと、⛩神社の鳥居が見えて来ます。せっかくだから、通り沿いですし参詣です🙏🏻

　御崎神社《みさきじんじゃ》と、読むそうです。どんな言われがあるのか、浄財を進上し神社の📄ビラを入手。

　富士市比奈1066-3
この農耕集落は、古墳時代には多数の墳墓群があり、「東坂古墳」と、呼ばれているそうな🧐
　八世紀には漢字で「好字」で表現されるようになり、岬が「御崎」となり、東西を貫く街道はこの坂道を「御崎坂」と、いつしか呼ぶようになった、と。

　⛩御崎神社の創建は古く安元三年(1177年)で、ご祭神は食物を司る宇迦之御魂神《うかのみたまのかみ》を崇められました🙏🏻
　治承四年(1180年)十月、頼朝が富士川を挟んで平家軍と対峙した富士川合戦の際に、頼朝はここに陣を敷き兵糧を置き、頼朝はここでも戦勝祈願に幣を奉納したそうです。　

　『吾妻鏡』、『平家物語』、九条兼実がかいた日記『玉葉』、百人一首の選者・藤原定家の日記『明月記』にも御崎神社のことは記されていません。兵糧をこの辺りに積んだなんてことは今日、ここへ来て初めて知りました。
　恩師・故石丸煕教授がご教示いただいた歴史は現場を訪ねてみなさいとのご助言を改めて実感いたしました。

　⛩御崎神社を後にし緩やかな上り坂をまた、北上します。道のどん詰まり、T字路に中学校がありその左隣にも⛩神社があります。せっかく来たのでここにも参詣です。
　
　⛩瀧川神社です。

　この瀧川神社にも頼朝は富士川合戦の戦勝祈願🙏🏻に参詣し、合戦の兵糧も御崎神社と共に分散して、積みます。御崎神社より高台にあり、富士川の濁流によって川筋が変わり、兵糧が流れてしまわないよう分散配置したのでしょうね。

　この⛩瀧川神社は御崎神社より創建が古く、第7代・孝霊天皇の御代、🗻富士山が大噴火したために、「浅間大神」を奉り山霊を鎮めたいために創建した、とあります

　孝霊天皇は-289年辛未 1月12日に即位なされた7代天皇です。孝安天皇102年正月に崩御され、12月4日丙寅に都を移し、翌年正月12日癸卯に即位。
📖『日本書紀』には、
『大日本根子彦太瓊天皇《おほやまとねこひこふとにのすめらみこと》　孝霊天皇《こうれいてんのう》は、日本足彦国押人天皇《やまとたらしひこくにくにおしのすめらみこと》　孝安天皇の太子《ひつぎのみこ》なり。』と。

　初代・神武天皇から8代・孝元天皇までは「欠史八代」と言って実在したかは怪しいのですが、『日本書紀』によれば、その偉業を記すことで遣隋使や遣唐使の際の外交に少なからず影響が出るため、急ぎ編纂したのでしょうね。

　そんな歴史と伝統のある⛩瀧川神社から東へ300m、遂に🌕『🎋竹取物語』伝承の公園に着きました。

【竹採公園入口】
駐車場や公衆便所も完備され、整備が行き届いています。
木曜日が休園日です。

　見事な孟宗竹です。
　無料で入園出来るとは、驚きです😱
アプローチも素晴らしく、ゴミ一つ落ちていません。本当に見目麗しい👸〝かぐや姫〟が居たのではないかと、見紛うばかりです。

【『竹取物語』】
翁夫婦が光り輝く竹から生まれた娘を大切に育てる日本最古の物語。作者は不明。
現存する絵はメトロポリタン美術館所属

　平安時代の代表する物語であることは周知の事実ですね。
　この公園を散策すると、物語が実話であって欲しいとも願いたくなります。

【竹採公園内】
富士市が整備なさっておられるようで、伺った日も整備になさっておらました。

　公園内を散策すると、しばし古典の物語の世界に浸れます。翁夫婦の宅も探してみたくなります。

　順路が無かったので、半時計周りに散策してもう終わりに近づいた場所に墓があります。
　こんな所に誰の墓だろうか🤔
　孟宗竹の中にある🪧を観て、驚き🫢
何と❗️
　白隠禅師の🪦お墓ではありませんか。

　白隠禅師、禅宗・臨済宗の中興の祖と言われている高僧です。

　宗教や臨済宗に興味がない方でも、🍶日本酒・地酒に興味がある方なら、もしかして🤨
　そうです、沼津市原で有名な🍶地酒『白隠正宗』のあの白隠禅師です👍🏻

　キリっとした中にも米の甘みもあり奥深い味わいが楽しめる🍶地酒です😋
　その白隠禅師の🪦お墓は沼津の松陰寺にあるはずでは🤔

　🪧によると沼津市原の松陰寺と分骨しているようです。
　松陰寺は禅宗の古刹で、鎌倉時代の弘安年間に建立されました。
　白隠禅師の教えに感銘を受け、自身が作曲して大ヒットとなったジョン・レノンの🎵『Imagine《イマジン》』の歌詞にある一節

♪Imajine there's no Heaven
（想像してごらん　天国なんて無いんだと）

　この一節は、白隠禅師の書「南無地獄大菩薩」
（地獄も極楽も人の心に映ったものに他ならない）
との教えに影響を受けたと、🗣彼自身が語っています。
　でもなぜ、ここに⁉️
の疑問にも🪧看板に記されていました。
　白隠禅師の著作『荊叢毒蘂』《けいそうどくずい》の中で🎋『竹取物語』を紹介し、この地がかぐや姫誕生の聖地であると断言しているとか。

　なるほど❣️
それでここにも白隠禅師の🪦お墓があるのですね。意外な発見をして、得した気分のまま岳南比奈駅に戻り、終点を目指します。
　🚉岳南富士岡駅まで来て、途中下車。
線路脇に、岳南鉄道で活躍した車両が無料で屋外展示されているからです👍🏻