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演劇と音楽と

自分は演劇を、観る側の人間である。
作り手側に回りたいと思ったこともあるが、作る側に回った時、己の娯楽はどこにあるのかわからなくなりそうで怖かったのかもしれない。

脚本、演出、舞台装置、衣装小道具、演者やスタッフのチームワーク
どれひとつ欠けても名作はできない
作り手の温度は見る側にも伝わるもの、と思っている

音楽は真っ直ぐだ。
動画で見て、曲を聴いて、「あ、いいかも」と感じた音楽は、LIVEで生で聴いてみたいと思うし、演奏する側の人間がどんな人で、どんなMCをするのかとか、そういう部分も気になる。
好きな曲を生で聴いて「う〜ん」と思うこともあれば、生で聴いた音楽はとても良かったのにMVで見たら「う〜ん」と思う時もある。
(良いMVももちろんあるよ、それはそう。)

だけど音楽はどんな時でも楽しい。
そしてわたしはライブハウスの空気が好きだ。小さくても、大きくても。
音を楽しみたい人たちが集まっていて、文字通り音楽がそこにあるから。
でもLIVEの空気って映像には残せなくて、同じ曲を同じアーティストが演奏したとしても同じものは二度と生まれないから、演劇みたいに「演目好きだったからDVD買う→見る→思い出してまた感動する」みたいなスパイラルに入るのは難しい気がする。その場その瞬間をわたしはフロアの皆と楽しみたい。

ここにダンスとパフォーマンスが加わって「アイドル」となってくるとまた話は別になってくる訳だが、今回においてはそこは割愛しよう。

ここから先は、恐らく否定的な話である。
引き返していただいても構わない。
ただ、わたしは演劇も音楽も大好きだ。
それだけはお間違いのないよう。


舞台、演劇は難しい。
好きなジャンルといわれると、基本的にわたしは骨太なファンタジーが好きだ。
無骨で滑稽で、人間の欲望や葛藤を正面から叩きつけ、そこから一筋の光を見出す様な。皮を剥いで中身を抉り握りつぶし作り変えるくらいの温度を感じられる作品が好きだ。ただしフィクションに限る。なのでファンタジー、とジャンル分けさせていただいた。重くて息苦しい空気の中で一筋の光を見つけて感動したいのだ。

脚本が良くても他が苦手なら最終完成系は自分にハマらないし、役者が好きで見に行っても何かが欠けていたらわたしの中で名作にはならない。年齢を重ね、さまざまな作品を見て、わたしが感じ取るもの、見えるものが変わってきてしまったのかもしれないけれど。
音楽に比べて、「これだ!!!」と思える演劇作品に出会うことがなかなかに難しいと最近特に思う。少なくとも、わたしにとっては、の話だが。

知ってる役者が出てるから。
なんか面白そうだから。
と、浅い理由で軽率に客席に飛び込んで、恐ろしいほど面白くて号泣した舞台など数少ない。
出会えたことに感謝したいから、映像もなく、ほぼ何も残っていないけれど、わたしの心の中に残っている『これだ!!!という名作』たちを記録しておく。2024年夏版。

***

「Re-」作・奥村直義(2013年5月 シアターサンモール)
恐らくわたしにとっての「小劇場演劇」の原点。主演の相馬圭祐さんを見に行った。結局通った。毎度必ず号泣した。カバンの中に入っていた最後の演出の紙吹雪の欠片でさえ、見つけたら涙が出るほど大好き。再演見ても大体泣いてる。心のデトックスにもってこい。冒頭と最後のセリフ大体言える。マジで震える程大好きな演目。

「二代目はクリスチャン」作・つかこうへい(2013年9月 シアターサンモール)
上記Re-で出会った高畠麻奈さん主演。つかこうへいの中で一番好きな演目と思う(そんなにたくさん見てないけど)でもつか作品は主演女優が誰か、演出が誰の手によるものかにかかっている気がする。裏と表は表裏一体、良いも悪いも紙一重。再演されても大好きな作品と言えるかはわからない。わたしは麻奈ちゃんではない今日子を見るのが恐ろしいのできっと見ないだろう。

「Birth」BQMAP(2014年4月 笹塚ファクトリー)
安心安定のBQMAP。和風SFファンタジーを繰り広げる、数少ない劇団と思う。Re-を見てから「直義さんってすげえよ…」と大ファンになり出会った作品。演劇ならではの突飛な発想を見事に組み立てて現実に産み落とし、人の温度を忘れず、優しさに溢れた最高の劇団。一生好き。どの作品も間違いなく全部面白いが、わたしが好きなのはこれとRe-。

「キルミーアゲイン」劇団鹿殺し(2016年1月 本多劇場)
恐ろしく強い。初めて鹿殺しを見た時の感想。攻撃的でパワフルで、見ているこちらがエネルギーを持って挑まないと持っていかれる。どの作品も好きだが、中でもこれが一番好き。唐突にマイクを持って歌い上げるチョビさんの世界は現代版つかこうへいっぽくて大好き。色々書くとネタバレになってしまいそうなので控えておくが、再演されたりする人気演目なので機会があったら皆見て欲しい。なので書かないでおく!

「八十年目の二・二六事件『英霊の聲―正気―』 」オフィス再生 (2016年2月 APOCシアター)
もう一度見たい衝撃作品ナンバーワン。まじで。小さな箱の中に凝縮された息の詰まる世界だった。一生出会えないであろう革命的で天才的な作品。
雪、飛び散る血、青年将校、狂気、炎、美しく儚い命。炎と糸の演出が酷く印象的で、驚異的な舞台装置が組まれていた思い出。客席通路でバタバタと死んでいく青年将校達のそばを、火を消したあの独特な匂いの中で終演後に歩いて跨いで超えていかないと劇場の外に出られないという前衛的なラストも最高だった。

「こもれび」作・演出:大竹匠・劇団おおたけ産業(2018年3月 新宿スターフィールド)
松並俊介くんが出ているから軽率に応援に行った。そしてボロボロと号泣しリピチケした。何の前情報もなく「あっ!」と思って慌てて会期後半に飛び込んで、良すぎてもう一度見ないと後悔すると思い2枚目のチケットを即買った。樋口みどりこさんの演じていた役が素晴らしく、たまらなく好きだった。LGBT的なテーマを2018年にやっていたと思うとそれはそれですごいな。と今更思う。
松並くんに会う時大体泣いてる、どんだけ涙脆いんだよ自分。

Re-、Birth、キルミーアゲインは劇団でDVDを売っているのでぜひ見て欲しい。本当に。
「こもれび」は今の時代にまた演じて欲しい作品テーマでもある気がするので誰かやってくれないかなぁ。これはもう一度、主演が誰であっても再演されるなら見に行きたい。

***

さて、話を戻そう。

ご覧になっていただいた上記の作品は全て2010年代の作品である。2020年といえばコロナ禍真っ只中で演劇を見に行くことすら少なくなってしまったわたしだから仕方がないといえば仕方がないのだが(自分は気管支が弱いので罹患したら一発KOの可能性があるからだ)。
そんな時代でもBQMAPの無観客配信「プリオシンの竜骨」は素晴らしかった。やっぱBQMAPだな(それな〜)

最近、気になっていた演劇を見ても、SNSで評判が良さそうな演目を見ても、「う〜〜〜〜ん?」と思うことが増えた。
素直に「最高!!!スタオベ!!!」になれない自分がもどかしい。波に乗れていない自分が悔しい。皆と同じ世界が見えていないのだろうか、と。
わたしはもっと感動したいのである。う〜ん、難しい、そして悲しい。

脚本が良くても何かが欠けているように感じたり、演出や舞台装置が良くても脚本があと一歩だなと感じることがあったり。役者目当てで見に行く舞台に対しての博打感が最近怖いと感じる様になった(笑)
手放しで100点!!!満点!!!最高!!!と言えるものに出会うには、やはり老舗かつ安心安定の劇団に行くしかなく、結局BQMAPくらいしか見る舞台無くない?あとは劇団5454とスタジオライフを信じてる。なんてね。
コロナ禍を乗り越えて長く続けてくれている劇団さんには感謝しなくてはいけないね、と思ったり。



それでもわたしは自分の心を震わせる演劇に出会いたい。
まだまだ諦めたくない。新しい作品に出会いたい。

これを読んでいるそこの演劇関係のあなた、対戦よろしくお願いします。


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