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あの日、あの街で、彼女は。〜羽田空港駅~
人生の旅路に、未来の彼女から伝言を。
京急線の場合、国内線の正式名称は「羽田空港第1・第2ターミナル駅」だ。何回乗っても「第1・第2ターミナル駅」と「第3ターミナル駅」のどっちが国内線かわからなくなる。「羽田空港 国内線 どっち」とGoogleに疑問をぶつける。
仕事で羽田空港に行くことになるなんて、まったく想像していなかった。普段訪問している本社は都心部にあるビル群の一画だが、取材を目的にしたこの日だけは特別だった。
新卒時代に終わりを告げる期末は、年度末より1ヵ月前倒しでやってくる。低い位置から照らす太陽と冷えた鼻先が、冬から春へ移り変わるのはもう少し先だと教えてくれる。
月曜日の朝、会社に出社するときよりも30分遅い電車に乗って、羽田空港に直行する。外で吸い込んだ冷たい空気と、電車内に充満した生暖かい空気が、マフラーにうずめた口元付近でちょうど合わさる。
毎日同じことの繰り返しで、無機質に運ばれるだけの満員電車の日常が、非日常に変わる。無表情のサラリーマンに入り混じる外国人、並べられたカラフルなスーツケース、イヤホンを突き抜ける子どものはしゃぐ声。品川駅で京急線ホームに向かい、行き先が「羽田空港」であることを確認して乗り込んだ。
ふと「なんで仕事してるんだろう?」という気持ちがむくむくと膨らむ。
当時の彼女に伝えたい。「これから続く5年間の営業人生の走馬灯に選びたくなるくらい、新卒下期の業績は好調だったし、先輩にあだ名で可愛がってもらって、同期とは退職後も仲が続いているよ。残業して飲むだけの日常が恋しくなる日が来るよ。いまの悩みがちっぽけに思える、想像のつかなかった未来を歩んでいるよ」と。
旅に行く人、旅から帰る人、単なる移動手段でしかないのに、空を飛ぶ「飛行機」だけはなぜかファンタジーの世界に迷い込んだ気分になる。
羽田空港での取材と撮影が終わり、また京急線に乗り込む。普段見ることのできない裏側を知ることができて、キッザニアのお仕事体験はこんな感じなのかと勝手に想像していた。
「このまま旅に出たい、現実逃避したい」とストーリーに嘆いた彼女を思い出す。
あの日、あの街で、彼女は。
*プロローグ
*マガジン
※基本的には経験上のノンフィクションですが、お客さん情報の身バレを防ぐために一部フィクションにしています。