あの日、あの街で、彼女は。〜錦糸町駅〜
「東京タワー派?スカイツリー派?」
定期的に耳にする。いわゆるエモさの象徴は東京タワーなのかな。デートスポットに選ぶなら、スカイツリーより東京タワーなのかな。
彼女は、スカイツリーにもエモさを覚える人だ。特に夏の。スカイツリーそのものではなく、情景や心境を込みにして。
スカイツリーの最寄駅は、とうきょうスカイツリー駅と押上駅らしい。そこからまっすぐ南下すると、錦糸町駅がある。
錦糸町駅を訪れるとき、なぜか夏が多かった。真夏ではなく初夏、空の青さと木々の緑が鮮やかで、風が吹けば汗がスッと消えるような。
iPhoneのアルバムを見返したら、6月と7月に同じような構図の写真を撮っていた。引きか寄りかの違いなだけで、彼女の美的感覚は1年経っても変わらない。平成と令和の境目。
雲ひとつない青一色の空よりも、白いふわふわ雲がちょっとだけ浮かんでる空のほうが好み。真夏の入道雲ほどはもくもくしてなくて、薄っすらベールがかったような。
2年連続で夏頃に訪問してたのは、繁忙期だったからだと思う。正確な理由はもう覚えていない。契約に至ったのは1回のみ。その後、コンプライアンス的にいろんなことがあって"男性"の後輩に引き継いだこと、それは事実だ。錦糸町駅はそれっきりになってしまった。
警備員が常駐してるオフィスビルの一角にあるタリーズで涼んだこと、ふと見つけたラーメン屋さんでつけ麺を食べたこと。
夏の澄み切った青空の延長線上に、スカイツリーの麓にいた彼女を思い出す。
あの日、あの街で、彼女は。
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