稲妻、風雲急を告げる (下)
台風一過 稲妻、風雲急を告げる 小説 (上)からの続きです。
虚士達が天体ショーに見とれていた間、虚士の父は自慢のポンポン船のアンカーを沖の方へ沈め直し、左右は他の船とぶつかっても良いようにタイヤをぶら下げたり、横の石垣をアンカー代わりにして固定していました、自宅も母屋、小屋の戸板を釘付け、瓦が飛ばないように網かけ固定しました。
虚士の家族は、早めの食事をとり、有線ラジオで台風情報を聞きながら眠りにつきました。夜中に固定したはずの戸板が「ガタガタ」と鳴り出し、それとともに「ビユウー、ビユウー」と風の怒り狂う音が聞こえました。それでも疲れていた虚士は眠っていました。
朝5時ごろ目覚めました、昨夜とは一転静かな朝です。すぐに虚士は活動を始めました。自家の畑がある” どのうえ(自宅から最短の地)”まで狭い坂道を駆け登りました。梨の木、桃の木があります、梨も桃も大量に落ちていました。親の悲しみも知らず、虚士にとっては何よりのごちそうでした。
”平瀬”につながれた船は縦横に暴れまくっていました。石垣も所々壊れ台風の爪痕が生々しく残っていました。
“板の浦”の避難船も三々五々に帰って行きます。「もうしまいか(終わりか)」虚士は名残惜く「またけぇー(来い)よー」と言い、台風劇場が終了したのを理解しました。
台風が去った数日後”平瀬”周辺に、ちぎれた藻屑、くたびれクラゲ、廃木材、などが流れ着きました。それらの下に隠れて、竜の落とし子、飛び魚、石鯛、カワハギなどの稚魚が付いてきます。かわいい生き物です。泳いで手ですくったり、網で獲ったりして透明な小瓶などにいれて楽しみました。この頃の虚士はただただ遊びに夢中で何の不安もありませんでした。
完--稲妻、風雲急を告げる (上)もあります。
(この話は実話に基づいていますが、細部の記憶が怪しいので”小説”としました)
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