トンボ釣り-少年の夢
トンボ釣り-少年の夢
昭和30年代頃の一風変わった子供達の遊びの話です。ハゼ、アジ、ベラとか魚釣りは当時の海辺の子供達には遊びの定番だったと思いますが、“トンボ釣り”はあまり聞いた事がありません。
青空に筋雲が出て秋の風が吹き出すと、どこからともなく赤いトンボの群れがやってきます。それを見つけた子供達は、母の裁縫箱から糸を持ち出し、そこら辺にある小竹の竿の先にくくり付け、小さなハエを捕まえて、
(当時はハエがいっぱいいました。唐いもをスライスして穴を開け、わらひもに通して茹でて乾燥させた保存食を、再加熱して練り潰した間食用の“コッパ”をザルに入れサラシ布を掛けて涼しいところに吊していましたが、サラシの上にたくさんのハエが停まっていました。)
糸の先端に結び付けます。それを持ってトンボのいる広場に走って行き、ハエの餌を風に載せてトンボの前に流します。ほどなくトンボがハエに食いつきます。
そのまんま、竿から糸をたぐり寄せても、ハエに食いついたまんまで、手づかみでトンボを捕獲出来ます。
捕ったトンボはすぐ逃がしますが、この捕獲方法が面白くて楽しかったのです。
藤沢周平氏の小説に「必死剣、鳥刺し」に出てきますが、江戸時代、職業として“鳥刺し”がありました。鳥にそおっと近寄り、鳥刺し棒(たぶん竹)で突き刺し、捕獲する仕事です。現代では信じられないような原始的な狩猟法ですね。
(鳥刺舞――長崎県雲仙市に伝わる。顔に頬かむりをし、裸で九
尺褌を巻き、竿を持ち、鳥を刺す様子を再現した踊りがあります。)
もしかしたら、トンボ釣りの方法で大空を飛んでいる鳥も捕獲出来るかもしれませんね。少年の夢でした。
終わり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?