1万円から始める統率者デッキ 〜青銅血のパーフォロス編〜
イントロダクション
みなさんはマジックザギャザリング(以下、MtG)を楽しんでおられるだろうか?
数多あるカードの中から自分だけのデッキを組み、好きなフォーマットで対戦することは大変に面白い。また、好きなアーティストやテーマのカードをコレクションするのも蒐集癖を刺激されて大変よろしい。
私も楽しみながらこのゲームに触れている。日常の精神的な安定を保てているのはMtGのおかげと言っても過言ではない。
本記事はそんなMtGの中でも極めて人気の高いフォーマットであるEDH(統率者戦)において私が使っている、あるいは使っていたデッキをご紹介したい。
フォーカスするのはデッキの動かし方とカスタマイズの楽しみ方についてである。そのためデッキのスタート地点を予算1万円とした。実際、私が最初にこのデッキを組んだ際のものに近い構成としている。
なお、本記事は既にMtGをご存知の方を対象とし、EDHに興味があるプレイヤーに向けたものとなっているのでご注意いただきたい。あまり肩肘張った攻略法でもないのでどうか気楽に読んでほしい。
また、公式サイトに示されているデッキパワーレベルでは3〜4を目指した構築であり、無限コンボを取り入れていないこともイントロダクションに付け加えさせていただく。
※パーフォロス顕現+ジェスカ3倍効果の統率者ダメージで勝つ即死コンボが搭載されているが実現性が低いため上記のデッキパワーレベルとさせていただいた。
目次
渋沢栄一とトレードできるデッキリスト
コンセプトと運用方法
ストレージの安カードを叩きつけろ!
赤単ゆえの弱点、だがそれがいい
デッキをカスタマイズしてみよう
終わりに
1.渋沢栄一とトレードできるデッキリスト
大手のカードゲームショップである晴れる屋さんのデッキ構築機能を使用させてもらった。同サービスは日本語対応でユーザー投稿の様々なデッキを見ることができ、プレイヤーにとって大変有用なものとなっている。
一斉にカートに入れることも可能でデッキの総額もすぐに分かるのがポイントだろう。
なお、このデッキは記事作成時点且つ最安値カードを使って約1万円ということでご了承願いたい。シングルカードの価格は需要と供給によって日々変化しており、高騰することも暴落することもあるのだ……
2.コンセプトと運用方法
EDHでは統率者として1枚の伝説のカード(場合によっては2枚)を選び、それを核にデッキを構築する。基本土地など例外はあるが同名のカードは100枚のデッキに1枚しか入れることができないルールだ。この制限こそが魅力的なデッキビルドを可能にしていると考えている。
私が統率者として選んだのは彼だ。
なぜ《青銅血のパーフォロス》なのか? 理由はシンプルだ。
必然的に単色デッキとなるため土地カードが安価で済む
極めて高い破壊耐性により場持ちが良い
コスト踏み倒し能力が豪快且つ小回りが効く
資産的にもゲーム的にもマナベースという「土地問題から解放されたい!」という切なる願いから生まれた部分が大きい。土地の配分を考えるのが非常に苦手なので私としては助かる。
その運用方法は細かいテクニックを除けば単純明快で「神の力でデカブツを叩きつけろ」だ。ただし、パーフォロスの能力で場に出したクリーチャーはエンドステップの開始時にさようならをしなければならない。
速攻付与という恩恵を踏まえて、場に出た時や退場した時に何らかの効果を持つクリーチャーを採用しよう。
なお、パーフォロスの能力で場に出せるのは赤いクリーチャーかアーティファクト・クリーチャーのみである。ウラモグやコジレックのような無色クリーチャーは適用外なので注意されたし。
一粒で二度おいしいクリーチャー
《業火のタイタン》や《バロール》は無理にパーフォロスの能力を使わずともハードキャストし易い。神がいれば彼らに速攻が付与されるため脅威度はなかなかのもの。
。
速攻付与を活かせるクリーチャー
攻撃誘発を持つクリーチャーはパーフォロスと極めて相性が良い。《原初の嵐、エターリ》は可能性に満ちている。隙のある対戦相手に捩じ込みたい。《猪の祟神、イルハグ》も大ダメージを期待できる存在だ。素のキャストで使うことも念頭に置いておこう。
退場時に強いクリーチャー
パーフォロスの能力は、彼の能力で出したクリーチャーを次の終了ステップで生贄に捧げるというもの。必然的な死が待ち構えているが、それを効果的に利用できるクリーチャーもいる。
《天を支える者》はその筆頭だ。死亡した際にすべてのパーマネントを破壊してしまう。パーフォロス以外にも《ダークスティールの鋳塊》《ダークスティールの城塞》など破壊不能を持つパーマネントを自分の場に確保しておきたい。
可能であれば自分のひとつ前の手番プレイヤーの戦闘後メインフェイズに、インスタントタイミングで出してやろう。
《三重合身のタイタン》や《ファイレクシアの三重体》もパワー・タフネスが共に9という優秀なスタッツを持ちながら、退場時には同じ分だけ打点を残してくれるのでオススメだ。
インスタントタイミングでの登場が強いクリーチャー
パーフォロスの能力はインスタントタイミングでも使える。相手ターンに動くことで意表を突くことも可能だ。
初収録時に「瞬速でなく先制攻撃?」と首を捻ってしまった《凶兆艦隊の向こう見ず》も、神の能力でインスタントタイミングで場に出せる。マナこそ多少余計にかかるが、対戦相手が唱え終わった《吸血の教示者》を奪ったり、《対抗呪文》を狙ってカウンターを仕掛けたり、器用に立ち回れる。
自分の墓地限定にはなるが《ゴブリンの闇住まい》も似たことができる。
《隕石ゴーレム》はインスタントタイミングの万能除去のように振る舞う。闇雲に出すのではなく、パーフォロスの速攻付与が無駄になってしまう《領事府の権限》のような「クリーチャーがタップ状態で場に出る」パーマネントを狙っていきたい。デッキ内には同様の役割を果たす《混沌のねじれ》も入っているので大事に使い分けていこう。
息切れを回避するための補給船クリーチャー
ドローに乏しいため、どうしても息切れする場面が出てくる。それを補うべく《ドラゴン魔道士》《遺跡掘削機》《砂岩の予言者》を取り入れた。パーフォロスで懸念すべきは悲しいかな「弾切れ」である。デッキトップにお祈りし続けるのはなかなか辛い。相手にドローさせてしまうのを躊躇わずにゲームを楽しもう。
統治者になってでもドローしたい
強力なドローメカニズムとして「統治者」があり、多人数戦を盛り上げてくれる。息切れ回避のためにこれも採用した。速攻や飛行を持つクリーチャーを多用しているため、奪われても取り返しやすい。
罪を許してくれるカードたち
神の能力で場に出したクリーチャーは終了ステップ開始時に生贄となってしまうが、《無限の日時計》があれば自分のターンを終了できる。終了ステップを踏まないからクリーチャーが自壊せずに場に残るのだ。
場にクロックとして残ってくれるとありがたい《三重合身のタイタン》はこれで救いたい。だいたいどのクリーチャーを救出しても強いため、是が非でも採用したいアーティファクトだ。
コストは重いが《妖術師の衣装部屋》でも同様の動きができる。こちらはETB能力の使い回しが可能で、《隕石ゴーレム》が出入りすると対戦相手からのヘイトが一気に向かってくる。
また、救済措置ではなく死にゆくものの単なる開き直りだが《鏡の行進》は設置できるとお祭りが開催される。運次第でコピーされていくトークンの姿は壮観だ。
3.ストレージの安カードを叩きつけろ!
デッキのカスタマイズの一端ではあるが私はパーフォロスを統率者にして以来、カードショップのストレージを覗くのが非常に楽しくなった。
赤か茶色のクリーチャーであれば何でも発射できるのだ。マナコストのでかいクリーチャーはそれに見合った能力がなければ需要がなくて値段が安いというケースが殆ど。攻撃誘発やダメージが通ったときなど「使いにくい条件」が付与されていれば、なおストレージで眠っている。
安いカードは気軽に買えるため、実戦を経て使用感を確認できる点がとても良い。まるで武器の評価試験のようだ。
同時に他のカードにも目がいくので「このカード、別のデッキで使えるのでは?」とか「こんなかっこいい絵のカードがあったのか!」とか感動することもしばしばあった(単に私のMtG歴が浅いというのも要因だが)
そんな中で見つけたお気に入りのカードは《小走り破滅エンジン》である。
このカードもまたパーフォロスと相性が良く、速攻付与から小粒なブロッカーを乗り越えて6点を叩き込み、その後に自壊してさらに6点のダメージを飛ばす。神の能力の3マナ+1枚のカードで、状況が許せば12点も飛ぶのだ。
シングル価格の関係から今回のリストには載せていないカードだがダメージを3倍にする《焦熱の解放》と組み合わせて36点を放ったこともある我がデッキのエース・クリーチャーでもある。
もしもこの記事を読んで《青銅血のパーフォロス》を統率者にしてみようという方がいたなら私が「こんな楽しみ方をしているよ」という参考までに。
4.赤単ゆえの弱点、だがそれがいい
さて、楽しそうにデッキ解説を進めてきたのだが現実はそう甘くない。楽しむことがEDHだと頭で理解していても、超え難い壁もある。
MtGは色によって役割が決まっている。クリーチャーへの対処が得意な色、ドローが得意な色、スタッツが優秀な色……
EDHを遊んだ上で、赤単を使う上での難点だと感じたことは以下の通り。
エンチャント破壊がない
ダメージ除去なので高タフネスやプロテクションが辛い
相手からの除去を回避する手段が少ない
素直に別の統率者を選んで色を足すか、そうしなくても1万円という枷を外せばある程度は解消できる問題だ。
あくまでコストという枠とデッキパワーレベルという枠の話だと、私は捉えている。このデッキ構築に強い不満や負け続けることにストレスを抱えるようになったら、楽しく遊ぶためのEDHで在り続けるため他のデッキを求めるのが正しい(ただし、自分だけの楽しさになってはいけないとも思う)
その反面、単色には単色の魅力があるとも考える。決して合理的ではない理由だが、デッキを組んでカードを眺めたとき、自分の場にカードが並んだとき、赤一色というのは美しいものだ。それにアーティファクトが差し色となれば尚更である。
5.デッキをカスタマイズしてみよう
パワーカードを突っ込め。以上。
……ではあまりに味気ない。よくEDHで「強い」と言われるカードたちは《波止場の恐喝者》に《魔力の墓所》が挙げられる。ジッサイツヨイ。
冒頭で「デッキパワーレベルを3〜4を目指した」と書いたので、ここではパーフォロスと相性が良く、ひとつ上の「5〜6」を考えていきたい。
なお、私はデッキパワーレベルなる言葉にかなり悩まされているクチではあるが(レベル1〜4の大会に出てバンチューからデモコンタッサされて負けた)、公式サイトの「明確な勝利を目指し始めたデッキがこのあたり」という文言を解釈して話を進めさせてもらう。
これから紹介するカードを購入すると当然のように1万円という予算枠を大きく超えるため、払った金額に対して得られたパワーに酔わないように自制したい。チューニングはいつの時代も怖いものである。
無慈悲なワンパンマン、《荒廃鋼の巨像》
パーフォロスと最高の相性を誇るアーティファクト・クリーチャーが《荒廃鋼の巨像》だ。11というパワーに「感染」持ちのため、一撃で対戦相手ひとりを屠ることができる。ただし、ひとりというのがミソ。対戦相手は三人いるのだ。
また、あくまで攻撃が通った場合に限られるためブロッカーがいたり、インスタントタイミングで追放除去を喰らうこともある。
《冒涜の行動》のような全体火力で場を掃除したり、《変わり身の狂戦士》や《稲妻曲げ》などで守ってあげたい。ちなみに伝説ではないため《トラブルメーカー、ジャックス》でコピーしてやると対戦相手が一気に二人死ぬこともある。
大きくリードできるかもしれない土地破壊カード
明確に勝ちを意識するなら「赤単であること」を活かしたい。
そこで候補に上がるのが《血染めの月》や《月の大魔術師》のような基本土地でない土地をすべて山にしてしまうカードと、《破滅》や《灰からの再興》のような基本土地以外を破壊するカードだ。これらの影響を自分は殆ど受けず、対戦相手は単色でもない限りそれなりに足止めを喰らうだろう。
同時にアーティファクト破壊カードも採用しておけば相手のマナファクトも壊せるが…… 高専ロボコンで相手のゴールを塞ぐタイプのロボットみたいな戦い方になる。
勿論、対戦相手も全力で抵抗してくるだろう。侮りすぎてもよくない。
だからこそ私は土地破壊カードを使うにあたって、デッキパワーレベルをよく考えてからにしている。何もできないまま終わる無為なゲームは楽しくないからだ。
これだけ大袈裟に書いてはいるものの、引けなければ意味がないし使えば必ず勝てる保証もない。それがまた面白いところでもある。
ハードパンチャーであれ、ダメージ倍化カード
単純なダメージで対戦相手のライフを0にしようとしたら、多人数戦且つ初期ライフ40(3人分で120点)というEDHではかなり苦労することだろう。《稲妻》に換算すると40発分だ。
ならばダメージを倍化させればいい。赤ならばそれができる。《ラースの灼熱洞》なら2倍、《焦熱の解放》ならば3倍だ。前者は自分も被害を被るが、後者は自分だけが恩恵を受ける。どちらもエンチャント破壊の的になりやすいため過信は禁物だが、類似効果を持つカードも多くあるので「楽しく殴り勝つ方法」のひとつとして覚えておいてほしい。
赤単でもできる!無限コンボ
無限にトークンを出したり、無限にダメージを飛ばすコンボは赤単でも実現可能だ。しかしサーチカードが全色中もっとも貧弱であるため、狙って決めるのはなかなか難しいとも感じている。《ギャンブル》や《帝国の徴募兵》などあるとコンボが捗る。
これは詳細は省くが結論だけ言うと お前は死ぬ。
《鏡割りのキキジキ》+《士気溢れる徴収兵》・・・無限速攻トークン
《欠片の双子》+《士気溢れる徴収兵》・・・無限速攻トークン
《鏡割りのキキジキ》+《戦闘の祝賀者》・・・無限戦闘&無限トークン
《鏡割りのキキジキ》+《稲妻造り士》・・・無限ダメージ
キキジキが出てきたらやばい、と覚えておけばいい。
自分でデッキに組む場合はちゃんとコンボの構造を覚えよう。
6.終わりに
《青銅血のパーフォロス》デッキを組むに当たり、参考にした統率者がいる。その名は《鉤爪のジィーリィーラン》だ。
多くのプレイヤーに愛され、とてもよく研究されているカードである。それらをまとめたコンテンツを読んだおかげで多くの知見を得られた。
パーフォロスと同じく赤単構成のデッキで個人的にはよく似ていると思う。だが当然のように差異もあり、ジィーリィーランはライブラリーからドラゴンを呼ぶ。そこから繰り出されるコンボやシナジーは美しいものばかりだと感じた。
先人たちの研究に感謝しながら、次はジィーリィーランでデッキパワーレベル7〜8を構築してみたい。